営業の本質【第68回】

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営業握手営業論

さて、営業関連の投稿については過去にもいろいろな切り口で解説をしてきました。BtoB系製造業が事業を展開している市場は、ほとんどが成熟市場での戦いになっています。プロダクトライフサイクルでいえば成熟期から衰退期を迎える段階にいるわけです。そんな環境下で今までと同じことをしていたら、ますます販売不振に陥ることは火を見るよりも明らかです。
そこで、ブログの開設時点から、ソリューション営業やらアカウントマネジメント、更にデジタルマーケティング(DRM)やROI提案の重要性、CRMSFAの積極活用などについて一つずつ、断片的に説明をしてきました。ところが最近、私の会社の動きをみて、自分で進めてきた営業改革ですが、何か本質がズレてきている感じがしたので、再度自分自身の再認識も兼ねて、営業の本質を考えてみたいと思います。

営業は製品を販売する仕事

違和感が。。。

厳しい時代の中で営業の仕事はますます大変になっています。それこそ、製品が売れた時代、つまり需要が供給を上回っていた成長市場では、設計が製品を開発し、工場が製品を製造すれば、あとは手当たり次第に営業がお客様にアタックすることで、ある程度の売上と収益をあげることができました。
更に競合よりも少しでも性能の良い製品を市場に投入していくことでマーケットシェアを高め、より事業を拡大していくことができました。

しかし現在のように市場が冷え込んでいる、以前の投稿でも書きましたが『お客様が買いたくない』と思っている市場では、ソリューションビジネス(営業)が重要だと説明してきました。
ソリューションビジネスとは『顧客課題が起点』のビジネスでしたね。製品の価値を可能な限り経済性に置き換えて、顧客課題が必ず先にある製品提案がソリューションビジネスです。

ソリューションビジネスは価値の取引【第2回】
さて、前回は自己紹介がてら私の職歴とBtoB系製造業のソリューションビジネスの理解について書かせてもらいました。ソリューションビジネスについて、少しは興味を持って頂けましたでしょうか?さて、今回から2回ぐらいで、まずはソリューションビジネ...

顧客課題を洞察するためには情報をたくさん集めなくてはなりません。そこでアカウントマネジメント活動を通して、担当するアカウントのさまざまなキーマンに面接触することで、情報を集めていきます。その情報をCRMツールでデータベース化して共有し、またSFAツールで商談進捗の見える化していくのと同時に、経済性をしっかりと表現できるようにROI(投資対効果)提案を進めていきます。

アカウントマネージャーとは【第8回】
ソリューションビジネスを展開していく上で、最近アカウントマネージャーという役割を良く聞くようになっています。ではこのアカウントマネージャーとはどんな役割を果たすのでしょうか?これもいろいろと解釈があるかとは思いますが、いつもの通りBtoB...

さて、上記の手順は、成熟市場で営業を展開していく中では、欠かすことができない重要な手順ですが、最近、私の会社の営業マンたちを見てると違和感がいっぱいです。

違和感①情報を集めることが仕事になっている
違和感②情報を集めても共有していない
違和感③コロナ禍を理由に情報が集まらない(お客様のアポがとれない)
違和感④どのユーザーにも同じ手順で戦っている(マニュアル化)

営業の行動に手順を決めて、プロセス通りに進めていくことは、決して間違いではないと思います。実際にSFAの入力はみな確実に入力しており、上司によるフィードバックもできています。また商談の精度も的確に決められ、見える化されています。
手順通り、お客様の情報収集に精を出し、営業技術系メンバーとも相談しながらROI提案わかりやすい資料(動画)なども作成し、お客様にムダの無い接し方をしています。
しかし、どうしても違和感が取れませんし、営業の成果もイマイチな状況なのです。
その違和感の元は『営業(販売)の本質』が見えてないことです。『営業(販売)の本質』『製品を売る』ことです。
プロセスはしっかりと踏んでルール通り、進めているのですが、一番大事な『製品を売る』といったマインドが営業活動から、今一つ見えてこと、これが違和感を感じさせているのだと気がつきました。
つまり管理者にとって状況が良く見えるようになっただけで、逆にお客様への対応は薄く広くなっている感じです。
では、それぞれの違和感をどのように解決していけば良いのでしょうか?これは営業マンのマインドチェンジお客様とのリレーション強化に注力することしかありません。

営業マンのマインドチェンジ

従来のものから新しいものに変革していく時は、やらなければけないことが集中します。ゴルフなどでもスイングの悪い点を何か所も矯正されて、それぞれを意識しながら打つと、本来、ボールを遠くまでまっすぐに飛ばすという目的よりも、それぞれのチェック項目ができているかの方が目的になっていってしまいます。初心者であれば特にそうなってしまいますよね。こんなゴルフをやっていたら本人もつまらなくなってしまいそうです。
上記の違和感営業は、このゴルフの話と一緒です。まさに手段と目的がズレてしまっている状況です。

今までの投稿で説明してきたことと、やや矛盾するかもしれませんが、販売(営業)『自社の製品を売る』ことが目的でなければなりません。そこに繋がらない情報収集ROI提案なのであれば、むしろ従来の営業のようにゴルフ、ディナー、プレゼントで攻略する方が目的を果たしていることになりませんか?もちろん従来の営業スタイルを推奨しているわけではありませんが、せっかくの情報提案受注活動のに繋がっていないのであればもったいないですね。

そこで、マインドチェンジして欲しいのは下記1点です。

『受注への最短ルートを探せ!』

情報収集も、ROI提案も全てこのために行っている営業活動です。このマインドを持っている営業マンは多少市況が悪くても成績が落ちません。またこれを達成するために情報収集をしたりROI提案を仕掛けています。これが正しい順番です。
調査会社ではないのですから、クロージングに関係の無い情報をとっても意味がありません。特に商談が具体化している時にのんびりと情報収集をしていては、その間に競合につけ入る隙を与え、敗戦や激烈な価格競争をしてしまうこともあります。
また、SFAのプロセス通りに進めることも否定はしませんが、必ず受注への最短ルートになっているかを意識して進めるようにマインドチェンジができていればSFAも効果的に活用できると思います。

CRMとSFA【第33回】
顧客情報(リスト)無しで販売活動をするということは地図を持たずに知らない土地を旅するようなものです。私が入社したころは、まだPC(オフコンと呼んでいましたが)もフロアに1~2台しかなく、ユーザー管理も納品台帳からドットプリンタで印字したも...
従来の営業とソリューション営業

また、時々ビックリさせられるのは、20年にも渡って構築してきたCRM(顧客データベース)があるにも関わらず、事前情報をそこから取らない営業マンが意外と多くいることです。
例えば同行した時、『ここはどんな機械を持ってるの?』と聞くと『まだ1回しか訪問したことがないのでわかりません』と言われたことがあります。CRMはクラウドなので、出先からでも事前情報を入手することができます、つまり受付待ち1分で情報が入手できるのです。にもかかわらず丸腰で訪問しているというのは、どうにも理解に苦しみます。
また、ある営業マンは、私が担当時代にリストから外したようなユーザーへ訪問して帰って来ました。そのユーザーの過去の日報を確認しても、どの担当も『もう訪問する必要はない』旨コメントがあります。つまり、これも全く事前情報を見ないで訪問活動を立てているということです。
このデジタルの時代に、営業を支援するツール(CRMやSFA)が複雑で営業マンがついてこれていないということはありえないので、これは部門内での教育不足ですね。便利なツールも上司の管理だけに使われていては意味がありません。
これで違和感①違和感②は解消です。

本当の顧客リレーション

さて、今も昔も一番大事なことは顧客リレーションです。時代の流れとともにBtoC系の製品や、BtoBでも比較的差別化要素の少ない製品はWEBなどを活用したダイレクトレスポンスマーケティングなどによる販売が拡大していますが、やはり生産財など大型の機械を販売しているようなBtoB系製造業『人対人』の顧客リレーション商売の基礎になります。

ダイレクトレスポンスマーケティング【第36回】
お客様の総数が比較的限られているBtoB系製造メーカーではDRM(ダイレクトレスポンスマーケティング)をマーケティングに活用することは稀でした。もちろん、定期的に販促冊子を送付したり、展示会前に案内状をDMで送付したりしていましたが、告知...

昨今、コロナ禍からの緊急事態宣言などで『お客様のアポイントが断られる』との話もよく聞きますが、本当に会いたい人のアポイントは断らないのではとも思っています。先ほどの営業マンマインドの時と同様、どれだけ貴重な情報を入手しても、どんなに素晴らしいROI提案書を作成しても購買責任者(概ね経営者)とのリレーション(信頼関係)がなければ成立しません。
『営業マンは製品を売るのではなく、まず自分自身を売れ』というように、このリレーションを構築するのは非常に時間と知恵が必要です。
またこのリレーション無しでは情報収集ROI提案もありません。まず担当を持ったら、商談が発生する前に、このリレーションを構築するために全ての努力をすべきです。
では、先ほど同様、真の顧客リレーションの判断ポイントは1点です。

『食事を誘えるリレーションを作れ!』

当初、私は『直接携帯にかけられるリレーション』と言っていたのですが、最近は携帯電話のやり取りは当たり前になってきていますので、少しファインチューニングしています。
また、ここで重要なのは『誘える』という点です。『誘われる』のではダメです。人はおごってもらうとしても一般的に『嫌いな人とは食事をしたくない』ものです。これがビジネスシーンであればなおさらです。こちらから誘うことができ、食事に行ける人間関係は、かなりリレーションが深いと考えて良いと思います。

営業職の適正【第35回】
BtoB系製造メーカーにおいて、以前は新卒で文系採用されると大部分の人は営業部に配属され、また営業職希望者も非常に多かったです。販売推進部や商品企画部などは、どちらかというと営業適正がない、とみられた人が回される部門で、営業部は開発部と並...

本日の本の紹介ですが営業論は売れる営業マンひとりひとり持論があり、私もこの手の本はあえて読まないようにしていましたが、マインドの入門書として下記の本を紹介しておきます。今はYoutubeでも同様のテーマで説明をしているYoutuberもたくさんいますので、悩んでいる方は、いろいろと参考にしてみたらと思います。(『99%の人に断られた商品を7年間で14億円売った逆転の営業術 2016年 井上保氏著)

さて、今回は私の会社の状況から『営業の本質』について過去の投稿も参考にしながら、『受注への最短ルート』『真のリレーション構築』を説明させて頂きました。一部の製品販売において営業マンは確かに減っていくことは避けられません。しかしBtoB系製造業、つまり法人営業の世界は、逆に営業マンの質の高さが更に重要になると考えます。最新の営業支援ツールや、ソリューションビジネスの手法をフルに活用して本当の意味でのできる営業マンを目指してください。
では、今回はこれまでです。ごきげんよう!

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