B to Cビジネスに学ぶBtoBデジタルマーケティング【第106回】

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パソコンマーケティング

昨今、マーケティングを実践するために使われるデジタルツールも多岐に渡り、ありとあらゆるところから個人情報が吸い上げられ、マーケティングのためリスト化されています。電子決済サービスは個人の購買行動が赤裸々にデータ化され、位置情報系のゲームアプリや健康系のアプリなどは莫大な移動履歴健康指数の情報を吸い上げられています。もちろん検索サイトや動画視聴データなども、何かしらの形で個人の嗜好が集計され、何かの分析や商品開発に利用されていることでしょう。
つまりネットに接続されているツールを持っている以上、利便性と引き換えに、常にだれかに情報が取られているわけで、冷静に考えるとちょっと怖くなってきます。
そんなデジタル社会の中、BtoCビジネスの世界ではマーケティング活動がデジタルツールへ大きくシフトしているのですが、BtoB系製造業、とりわけ法人営業の世界ではまだまだ対面営業が主流です。今回はBtoB系製造業が、どのレベルまでデジタルマーケティングを取り入れていけば良いのかについてダイレクトレスポンスマーケティングの観点を軸に説明していきたいと思います。

デジタルマーケティング概要

ダイレクトレスポンスマーケティング(DRM)との親和性

デジタル技術を活用したマーケティングもベースは従来のマーケティング手法の応用です。通常、BtoB製造業のマーケティングはプッシュ型と呼ばれる販売者側が購入者側に対し、積極的に売り込みを仕掛けるものが主流なので、営業マンによる対面型営業となるわけです。
デジタルマーケティングの基本は、販売者側は購入者を特定せず、なるべく広く広告・宣伝をばらまきます。それに反応した購入者が製品の問い合わせをしてくるマーケティング手法で、前述のプッシュ型に対してプル型と呼ばれます。
このプル型の手法は決してデジタルツールが普及してからできたものではなく、みなさんがご存じの通り道路看板や新聞広告などは、広告黎明期である100年以上前から存在しています。購買者側が直接反応することからダイレクトレスポンスマーケティング(以下DRM)とも呼ばれます。
このプル型のマーケティングはいかに広く情報を広げることができるかが大きな目的であり、メールマガジンや、SNSなどのデジタルツールDRMとの親和性が非常に良いわけですね。そのため、デジタルマーケティング=DRMと説明している資料も多いです。短時間にコストをかけずに行えるデジタルツールは、不特定多数の対象者に広く情報発信したいBtoCビジネスではマーケティングの主流になってきているわけです。
またデジタルツールの特徴として、データ分析が容易にできることも特徴の1つです。デジタル以前のDRMは、問合わせのあった購買者しか追いかけられませんでしたが、デジタルツールを使うことで購買者の反応を細かく分析することができるので、MAツールなどを使えば広告の効果を検証したり、購買者の購入意欲をスコアリングしたりすることが容易に可能となります。
この章の最後に、それぞれの言葉の定義をWikipediaとブランディングアカデミー様のサイト(http://branding-academy.jp/)の説明文を用いて整理しておきます。

デジタルマーケティング は、インターネットと、デスクトップコンピュータ、携帯電話、その他のデジタルメディアやプラットフォームなどのデジタルテクノロジーを利用して製品やサービスを広告し、また直接販売へ導くマーケティングの手法である。(Wikipediaより引用)

ダイレクトレスポンスマーケティングとは、広告やWebサイトなどから発信された情報に反応する形で、返答(問い合わせなどの返事)があった相手に対して、直接的に商品やサービスを販売するマーケティング手法のことをいいます。(ブランディングアカデミー様サイトより引用)

DRM(デジタルレスポンスマーケティング)の歴史とデジタルマーケティング

10年ぐらい前までBtoB系製造業デジタルマーケティングを活用することは稀でした。集客活動は主に営業マンによる訪問がメインであり、もちろん、定期的に販促冊子を発行したり、展示会の案内状などをDMで送付したりしていた会社もあるかと思いますが、告知や情報提供が目的で集客、特に新規顧客に対する集客新規リードの確保)に活用した事例は極めて少なかったです。
しかし、ここ数年はBtoB系製造業でもデジタルマーケティングを活用したマーケティング活動が活発になってきています。前述した通り、一般的にBtoBビジネスにおいて製品販売する時は、その会社の営業マンがお客様を訪問し、対面販売をします。つまり売り手が主導なので買いたいお客様に出会える時もあれば、全く買う気のないお客様に出会う時もあります。この『買う気』の判断が売れる営業マンと売れない営業マンの分かれ目です。

製品がたくさん売れている時は、ほとんどのお客様が『買いたい』というスタンスで待っているので、この方法でも問題はありませんでした。また、お客様の課題も『忙しい状況を何とかしたい』ということが多いので機械のスピードや効率などの向上させる製品であれば、細かな課題を見つけなくても製品の販売は拡大していきました。
ところが、製品が売れない時代にになるとモノが余り出し、各社の製品に差が無くなってきます。こういったコンディションの中で『買いたくない』というスタンスのお客様に製品を売るためには、お客様の課題を細かく観察し、お客様ごとの提案をすることで『買いたくない』お客様の気持ちを『買いたい』に変える作業が必要です。
これを対面営業で行うと、既存のお客様にしか情報発信ができないため、発信量も極めて限定的になります。デジタルマーケティングを活用すると、企業側がある課題解決のための情報を不特定多数に広く発信をして、その発信に問合せをしてきたお客様に対してダイレクトに商品販売をするマーケティングです。まさにお客様が顧客課題を抱えて問い合わせをしてくるわけなので、典型的なソリューションビジネスとなるわけですね。
問合せをしたお客様は少なからず、情報発信された製品やサービスに興味を持った人であり、『買いたい』お客様を自動的に集めることができるので極めて効率が良いマーケティング手法です。その性格上、『下手な鉄砲、数撃ちゃ当たる』的な戦略なので、情報発信は1つだけではなく、複数の情報発信が成功のポイントとなります。

BtoBビジネスでも立て看板や新聞広告、今でも根強い人気のある通販番組やTVCF、DMなど、ダイレクトレスポンスマーケティング(以降DRM)はかなり古くからおこなわれているマーケティング手法で、国土が広く対面マーケティングが難しいアメリカが発祥と言われています。最近ではやはりメールマガジンやSNS系広告など、デジタルツールを活用した形態が増えており、個人事業主BtoCビジネスでは安価に、迅速に、大量に集客ができるため、今日では非常に効果的なマーケティング手法となっています。

では、ここからはBtoB系製造業を意識しながらDRMについて見ていきましょう。
DRMには3つのプロセスがあります。

DRM(ダイレクトレスポンスマーケティング)の3つのプロセス

DRM(ダイレクトレスポンスマーケティング)の3つのプロセス

集客

集客はある課題に対して情報を発信するフェイズで、目的はその課題に対して興味があるお客様を見つけることです。広告やチラシなどの有料広告を使って情報を発信する方法もありますし、SNS、つまりTwitterやFacebookなどを活用して無料で情報を拡散する方法もあります。
もちろん集客はオンラインだけではありません。極端なことを言えば、ある課題に対する情報を持ってアポイントを取り、直接対面で情報を発信するのも集客です。とはいえ、このやり方は効率が悪いですよね。対面ではせいぜい1日5件~10件に情報を発信するのが限界です。オンラインを使うことによって短時間で大量の情報を発信できるので、今日(こんにち)集客と言えばオンラインを活用した集客方法と考えてもいいでしょう。

BtoB系製造メーカー集客先はある程度絞られています。集客とは『今後自社の製品を購入してくれるお客様【見込み客】』を探すことです。自社商品の認知度が既に高く、ほとんどのお客様は接触済みである場合は無理にDRMを展開する必要はありません。
BtoB系製造メーカーDRMを実行する時は下記のような時が有効です。

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1)新しいカテゴリーの製品を販売する時
2)新しい市場に進出する時
3)低額製品を取り扱う時

集客見込み客を見つける活動ですから、今までとは違う製品を扱う時に極めて有効な手段になります。情報発信から集めた見込み客は、製品軸市場軸に合わせてリスト化し、それが今後の製品販売の分母になっていきます。

教育

教育集客で集めた見込み客とのリレーションを築き、購買意欲を育てていく工程です。従来の営業であれば日々の営業活動ということになりますが、DRMにおける教育は、ひたすら無償の提供です。メールマガジンでお客様の課題解決や興味を増進する情報を提供し続けることで、お客様との信頼関係を高め、同時に購買意欲を高めていきます。
対面と違いDRMでの活動は表情の見えないコミュニケーションです。見えないコミュニケーションの中ではどれだけ短時間にお客様の不信感を振り払うことができるか?がポイントになります。
そのためには対面販売とは全く違うアプローチが必要です。

1)ライティング
2)無料相談(質問返答)
3)無料セミナー
4)有益コンテンツ(ホワイトペーパー、無料雑誌、動画など)
5)無料サンプル、体験

DRM教育のプロセスでアプローチになるのがメールマガジンですが、このメールマガジンライティング(見出し記事)で結果が大いに左右されます。メールマガジン広告で、興味を惹いて(クリックして)、メインのコンテンツに導いてこれなければ教育のプロセスは失敗です。まずはメールマガジン広告簡潔なライティング力を高めることが必要です。
またコンテンツまで導いたお客様の信頼度と購買意欲をそれだけ高めていくためには、徹底的な献身の姿勢が必要です。無償の提供ですね。
お客様の課題を解決するための無料相談、無償の書籍やホワイトペーパーの提供、無料のセミナーの案内など、お得情報を提供することでお客様の不信感を取り除き、お客様の方から製品に対してアプローチしてくる関係を構築することが教育プロセスのポイントです。
最近は、この教育のためのコンテンツの主流はYoutubeなどの動画コンテンツです。BtoB系製造メーカーでもだいぶ活用されるようになってきたと思います。
『メラビアンの法則』の通り、動画コンテンツは文字音声映像の全ての情報を発信することが可能であり、最もコミュニケーションが伝わるコンテンツです。

販売

さて、いよいよ販売です。教育で購買意欲が高まっているお客様に対して製品の販売をするプロセスです。BtoB系製造メーカーの場合は、ここから対面販売(営業マン)に切り替えても良いのかと思いますが、コンバージョン(受注)するまでDRMで行くのであれば、ここからは最後の一押しをすることになります。

1)特典(おまけや下取り)
2)特別価格
3)保証

DRMの販売はこれで終わりではありません。むしろここからが重要です。強いリレーションで結ばれたお客様から永続的に販売を続けていかなければなりません。これはソリューションビジネスの基本であり、DRMだからというわけではありませんが、特にDRMでは、この継続的な販売を確保できるように既存のお客様との接触を常に怠らないことが大事なこととなります。

BtoC系ビジネスでは教育の段階で安価の製品(赤字)を販売し、販売の段階で大きく収益を稼いでいくといったビジネススタイルですが、BtoB系製造メーカーではリストの件数も少なく、フロントエンドで収益がないとバックエンドで取り返せない可能性も大いにありますので注意が必要です。

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さて、今回はDRM(ダイレクトレスポンスマーケティング)の基礎部分について説明させて頂きました。現在は購買の6割は対面前に決まってしまうと言われています。また、コモディ商品については、ほとんどクリック1回で翌日には届く時代です。BtoB系製造メーカーもデジタルツールをうまく使いこなし、DRMを展開して、営業マンがクロージングに注力できるような状態を作り上げていけるようにしたいものです。
では、今回はここまでです。また次回、ごきげんよう!


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