営業DXの是非~本当に必要なこと【第107回】

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営業論

デジタルツールが目覚ましく発展し、営業のやり方もかなり変わりました。それこそ、私がバリバリの担当営業をしていたころは携帯電話はおろか、パソコンですらオフィスに数台といった感じでしたので、今の営業マンの環境と比較すると隔世の思いです。
私はこのブログを通して常に『営業は誇り高い職種』であることを言い続けています。それは唯一、お客様と対等な立場で交渉ができ、会社に利益をもたらすことができる職種だからです。
特にこのブログのメインの読者であるBtoBビジネス環境において営業マンは絶対に不要にはならず、むしろこれからの時代はより会社の中で重要な役割を果たすようになると考えます。
とはいえ、営業の効率を高めるためにはデジタルの活用も避けて通るわけにはいきません。そこで今回はこの営業DXをどのようにうまく活用していけば良いのか、私の実体験も含めて説明していきたいと思います。

営業DX(デジタルフォーメーション)とは

営業DX(デジタルフォーメーション)の基本的な考え方

まず、営業DX、または販売DXについて整理をしておきましょう。ビジネスには基本的に3つのコンポーネントがあって、それはお客様営業マン生産者になります。もう少し、詳しく説明すると『製品を買ってくれる人』『製品を売る人』そして『製品をつくる人』ということになります。
『製品を買ってくれる人』は別として、会社の中で大事なコンポーネントは『製品を売る人』『製品をつくる人』です。この2つのコンポーネントはこれからの時代、DX化は必要不可欠なのですが、それぞれのDX推進は全く反対の進め方になります。
『製品を作る人』、つまり製造部門のDXD⇒Xになります。まず、D(デジタル化)を推進してから組織がX(トランスフォーム・変革)していく進め方になります。IoTなどデジタルツールにより、工程の見える化を行い、工程や工程間のボトルネックを見つけ出し、徹底的な自動化や効率化を行うことで製造の変革を達成します。
製造DXについては過去に『製造DX~ロボティクスによる製造変革【第100回】』に詳しく書いていますので興味があったらこちらもご覧ください。

製造のDX~ロボティクスによる製造変革【第100回】
さて、記念すべき100回記念です。ブログはまず100投稿ということで、この数字を目指して書き続けてきました。当初はもう少し早く100個まで行くと思っていましたが、日常業務の忙しさ、また1投稿当たりの文字数が膨らんでいったこともあり、202...

それに対して『製品を売る人』、つまり販売部門のDXX⇒Dになります。まず、組織や個人が変革の準備をします。今までのやり方や慣習を一度、全て棚卸をして販売部門の本文である『お客様と折衝する業務』に注力するためにはどうすれば良いのかを考えます。細かく見るといろいろな切り口があるのですが、概ね下記の3つに絞られます。
①活動量最大化策(量の確保)
②属人化からの脱却策(質の均一化)
③情報の共有策(質の向上)

この3つの達成をテーマにして、どんなデジタルツールを検討していくと効果があるのかを検討していくのが営業(販売)のDXとなります。

営業DXのアイテムとデジタルツール

営業DXの分類と取り組み方法

上記の表に、それぞれの営業DXアイテムに対応するデジタルツールをまとめてみました。
活動量の最大化策
活動量の最大化営業マンの活動の中で、最も重要なテーマです。以前、私の会社で営業マンの行動を分析した時、移動/待機時間が約40%事務処理作業が約25%と本来の営業活動をはるかに上回る時間が営業活動外に使われています。交通費の清算や見積書・提案書の作成といった事務作業を短時間に、また場所を選ばずできるようにする環境を準備することで、スキマ時間をなくし、営業の効率を飛躍的に高めることができます。
またRPA(Robotics Process Automation)を活用することで、毎月定期的にやっているデータの集計作業なども無人化することができます。これを導入することで営業アシスタントの事務作業を減らすことができ、その工数を営業支援(販売資料の作成など)に回していくことも可能となります。また最近ではTeamsやZoomといったリモートツールを使った営業も活動量を増やすことにおいて、非常に有効です。時間や距離を気にすることなく、効率的な販売活動を可能とします。またリモートツールだとお客様も心理的にアポイントを受けつけやすくなる傾向があります。

②属人化からの脱却策
属人化からの脱却営業DXための大きな取り組みテーマです。このテーマはどの会社も結構、考えている内容だと思いますが、なかなか実行ベースに移していくことは難しいですね。『属人化の脱却=営業マンの標準化』ですが、標準化のお手本にするモデルケースの人物が、この属人化脱却に反対しているからです。
これに対しては、ロールモデルになる人物たちを標準化のリーダーにして、各個人が持っている貴重な経験値情報をマニュアル化データベース化し、更にそれらのデータベースを全員が活用できるようにするしくみ(システム)を作ることです。
複数のロールモデルたちから商談のプロセス、つまり新規で顧客を訪問するところから交渉、受注、納品、御礼まで、どんな活動をしているのかをプロセスに沿って、どんなことをしているのか、注意点は何なのかを思いのまま書きだし、それをまとめてマニュアル化しておくことで、データベース化する時に大いに役立ちます。

③情報の共有策
さて、情報をただ集めていくだけでは役に立ちません。営業が持っている情報はいろいろとあります。顧客情報、業界情報、製品情報、競合情報、商談情報などです。このようなものは会社の財産です。営業マンが辞めると同時に消失してしまうのでは意味がありません。
データ化(デジタル化)して、誰もが共有更新できるようにしなければなりません。これを担うのがデジタルツールの代表格であるCRM(Customer Relationship Management)やSFA(Sales force Automation)ですね。またこれらの情報は前述した通り『会社の財産』です。共有更新に関してはしっかりとした権限を決め、またセキュリティの対策が必要不可欠です。これらのデジタルツールはクラウド型で構築されており、情報の共有、更新保護は導入すればお任せできます。

以上の通り、営業のDXはまず、変革の準備(X:Transformation)が先になります。社内で『お客様と折衝する業務』に注力できるように課題を棚卸ししながら、どのデジタルツール(D:Digital)を使えば、この課題を解決できるかを考えながら採用していくと、失敗のないデジタル投資ができるのではないかと思います。

法人営業の営業DX

法人営業(BtoB)をサポートするデジタルツール(DX)

法人営業BtoB系企業)における販売活動は、ほとんどの場合、販売するターゲットが明確になっており、既にお取引のあるお客様も大きな比率を占めています。そのため、販売活動の大半を営業マンが担うことが多く、見た目的には営業マン一人一人が個人経営者のようなものになりがちです。
すると営業マンがアポイントをとって面会し、徐々にリレーションを構築し、商談を発生させ、製品仕様の説明や購入の提案をして、最後に価格交渉の上、クロージングをすることになります。このスタイルの弊害が前述の営業マンの属人化だったり、顧客情報の個人独占に繋がっているのです。
これらの販売活動をサポートするデジタルツールとして代表的なものがCRM(Customer Relationship Management)、SFA(Sales Force Automation)、MA(Marketing Automation)ですが、まずは、これらのデジタルツールと営業マンとの関係を説明していきましょう。

CRMとSFA/MAの関係

上記にCRMSFAMA各ツールの役割と連携について図解してみました。簡単なダイアグラムなので全てを正しくは表現されていませんが、イメージは伝わるのではないでしょうか?これらは良くBI(Business Intelligence)ツールと呼ばれます。
①CRM(Customer Relationship management)
CRM顧客情報のデータベースです。顧客の基本情報(住所や電話番号)だけでなく、顧客の中のアカウント(人物)情報、設備情報や購入情報などを蓄積していくBIツールです。最近では名刺を読み取ってデジタル化し、その情報を顧客データベースと連携させるBIツールも多数出ています。この辺はTVのCMなどでもおなじみですね。特に人物情報にe-Mailアドレスが紐づいていると、この後で紹介するMAツールなどを活用する時に非常に活用できるようになります。

②SFA(Sales Force Automation)
営業マンがお客様と販売活動を進める時に活用するBIツールSFAです。主にお客様と取引が始まった時から受注をする(商取引が終わる)ところまでを管理するのが、このツールの活用範囲です。
名前の通り、商談案件管理が一番の機能です。顧客情報、提案製品、受注見込みや受注金額などを一元で管理できます。従来のようにEXCELで管理をしていると、担当と課長で受注の時期が違ったり、会議の直前で商談状況が変わった時など、修正できず、口頭で修正したりすることがありますが、SFAを使うと、データはワンソースなため、人によってブレることもなく、また変更があった場合も、すぐに更新することができます。私の会社でも、営業の会議中に発表の寸前まで修正しているマネージャーがいましたね。
また日々の商談でどのようなことをしたのかといった営業マンの行動の報告、それに対してコーチングやアドバイスをフィードバックできる日報機能、次にやるべきことをアラートするToDo機能、提案資料が検索できるナレッジ機能、また、会議資料などを出力するレポート機能など、営業の販売活動をサポートしていく機能があります。
最近ではSFAツールの機能が拡大しており、名刺入力ソフトと連携し、CRMツールの機能を果たすものや、地図アプリと連携して訪問の効率を高める機能、スケジューラーと連携してアポイントや会議などの予定を見える化する機能など年々、多機能になってきています。

③MA(Marketing Automation)
MAツール
営業マンというよりは販売推進営業企画部門が、メールマガジンSNSといったデジタルコンテンツを活用して販売活動を支援する時に活用されるBIツールです。従来は①顧客を見つけ②育てて③実をつける(受注する)ところまでを営業マン対面式で担っていました。
デジタルコンテンツをうまく使うことで『①顧客を見つけて』または『①顧客を見つけて+②育てて』までを非対面式で完結させることができ、その結果、営業マンの負荷を最後のクロージングだけに注力させることが目的となります。
これをデジタルコンテンツマーケティングと呼ばれますが、お客様とのやり取りが非対面式なため、案件の確度が算出できません。それをサポートするのがMAツールです。顧客のアクセスポイントやアクセス数などをスコアリングし、自動的にホットリード(購買意欲の高い顧客)を見つけ出すことができるようになります。
またSFAMAは連携しており、MAツールが発見し、育てた顧客(リードナーチャリング)情報をSFA側と共有することで営業マン(リアル)側も商談進捗状況を把握することができ、商談の育成状況(スコアリング)に合わせて対面販売に切り替えていくことも可能となります。
さきほど説明した通り、営業マンは一番苦労する『商談を探す、育てる』といった活動が短絡されるので、クロージング活動に専念でき、うまく機能すれば非常に効率の良い販売活動ができるようになります。これらのBIツールについては、ちょっと古い投稿ですが『CRMとSFA【第33回】』でも触れていますので併せてご確認頂けたらと思います。

CRMとSFA【第33回】
顧客情報(リスト)無しで販売活動をするということは地図を持たずに知らない土地を旅するようなものです。私が入社したころは、まだPC(オフコンと呼んでいましたが)もフロアに1~2台しかなく、ユーザー管理も納品台帳からドットプリンタで印字したも...

法人営業(BtoB企業)のBIツールの導入

さて、ここまで営業DXをテーマに、その取り組み方法解決するBIツールについて説明してきました。しかしこれらのBIツール導入は慎重に検討する必要があります。導入のポイントは『営業活動最大化』です。そのBIツールを活用することで営業マンの『案件対応時間の最大化』といった命題に繋がるようなものにならなければ導入は控えるべきです。
IT化、DXなどと言う言葉に踊らされて、この命題を忘れ、システム導入が目的になってしまうことの無いように気をつけるべきです。最後にBIツール導入の際の注意点をいくつか列記しておきます。

①管理する顧客(案件)数
これは鉄則です。100までは人間の脳で十分管理できます。また1,000以下であればEXCEL(自社システム)で十分です。もちろん、セキュリティワンソースマルチユースの観点からBIツールによる管理は一定の効果があると思いますが、必要最低限の機能に絞り込み、ツールそのものをカスタマイズせずに導入するべきだと思います。特にデータベース系のBIツールは非常に便利な分、コストは永遠になります。BtoB企業の顧客データベースは比較的量が少なく、しかも長期間に渡って活用するものです。データベースそのものを自社サーバーに設置することも含めて検討が必要です。

②営業マンファースト
このようなBIツール営業マンのために使われるものでなければいけないのですが、しばしば管理者のためのものになりがちです。SFAは本来、営業マンが自分の案件を常に確認し、KPIToDoリストを用いて抜け漏れのない販売活動をするためのBIツールなのですが、営業マンは日々の日報入力と案件の確度修正だけに注力して自身の販売活動にはほとんど使われないケースが多いのです。
管理者が自部門の数字を捉えることが目的になり、SFAの本来の目的である案件の受注が疎かになってしまっている事例です。もちろんSFAはマネージャーの管理機能も重要な要素の一つですが、こちらが目的にならないようにツールの運用方法を最初にきっちりと決めていくことが必要です。

③1ツール1ファンクション
とにかく昨今のBIツールは機能が多機能化しています。顧客データベースから案件管理、更に営業活動を離れて生産システムや会計システムに連携しているものもあります。もちろん1つのシステムで全てができることは素晴らしいことです。私の会社でも多くのレガシーシステムで、無駄な作業が解決できないことも散見しています。
ただ営業DXBIツールは『案件対応時間の最大化』さらに言えば『いかに受注数を増やすのか』のためのツールです。自社のビジネスが100万件も案件があるようなものでないのであれば、この目的だけを考えたシステムに留めるべきです。またMAツール瞬間的なレスポンスを確認するツールです。特にBtoB企業の顧客(アカウント)規模であればなおさらです。他のツールとの連携性よりは、使いやすさや月額料金を判断基準において選択しても全く問題ないと思います。

さて、今回は営業DX、特に法人営業(BtoB企業)BIツールを導入する際のポイントについてアウトラインを説明させて頂きました。このようなツールは日進月歩で便利な機能が追加され、また1つのアプリケーションでも本当に多機能化しています。それだけにあまりにも機能を欲張ると、非常に大きなランニングコストを背負うことになり、最後は足が抜けなくなる可能性があります。
法人営業(BtoB企業)営業のDXは、まず『営業活動最大化』を置いて、そのためには何がネックになっているのかを見極めたうえで必要最低限のシステムから導入していくことをお勧めしたいと思います。今回はこれまでです。また次回、ごきげんよう!