市場認識の重要性~鮮度と精度の顧客リスト【第110回】

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虫眼鏡ソリューションビジネス

みなさん、こんにちは。前回は1年ぶりの投稿ということで、一番得意な販売系の投稿をさせて頂きました。販売のワークフローを7つの販売プロセスとしてまとめ、自分自身のおさらいも兼ねて記事を書かせて頂きました。私は生粋の法人営業なので、BtoB製造業向けにまとめたのですが、前回の投稿でも述べた通り、販売プロセスで最も大事なものが市場認識です。特に、これから新しい市場に打ち出すような時、いったいどうやって顧客を創っていけば良いのかは純粋な疑問です。今回は特にまっさらな市場に乗り出すときの参考になるようにより広く、一般的に書いてみましたので、こんなことに悩まれている方の参考になればと思います。前回の投稿についても復習のためリンクをつけさせて頂きます。こちらから読んでいただけるとより理解力が高まるのではないかと思います。(BtoB製造業の販売プロセス【第109回】)宜しくお願い致します。

BtoB製造業の販売プロセス【第109回】
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市場認識プロセス

『市場認識』が最も重要

当然ながら販売活動の第1段階は製品を購入してもらえる先がを見つけることです。BtoC ビジネスは膨大な消費者データ(マーケット)から、性別・年齢・居住地や年収などの切り口からターゲットリストを作り出していきます。(セグメンテーション)最近ではデジタルマーケティングをフルに活用することで顧客を自動でセグメントし、販売見込先へのタッチポイントを増やしていく手法がとられます。

BtoB ビジネスセグメンテーションは重要な行為ですが、そもそもセグメンテーションするための元のデータがなかなか入手できません。つまり最初に自社製品を購入してくれる市場(マーケット)を探し出さなければならないのです。これがBtoB ビジネスにおける最初のプロセス『市場認識』なのですが、日本や北米などでは業界別のデータベースが比較的手に入れやすい環境があると言えるでしょう。しかし国によってはなかなか自分の戦う市場情報が手に入らないことがあります。また特殊な製品を販売している製造業ではデータベースそのものがないことも非常に多いのです。
そのためBtoBビジネスの場合、これを獲得するには長い時間と労力が必要となります。特に狭い市場にフォーカスした製品を扱っていたり、私が今やっているような新しい国に製品を販売し始めるという時には、どのような手順で始めたら良いのか全くわからなくなります。
しかしBtoBビジネスの場合、この『市場認識』を見誤ると、販売リソースの配置が非効率的になり、予期した成果が全く上がらなという事態を招くことがあります。そのためBtoB製造業がまずやらなければならないのが『市場認識』なのです。

市場の認識手法

また『市場認識』は、更に『顧客の発見』と『顧客の洞察』に分けられます。『顧客の発見』は文字通り、製品の購入の可能性があるお客様を見つけることであり、顧客の洞察は前述のセグメンテーションになります。そのお客様の情報を収集し、深堀することで購入の可能性を見極めたり、どんな製品が販売できるかを探ることになります。この洞察により、ターゲットリストが作られるわけです。
ちなみに、この『顧客の発見』と『顧客の洞察』は、その情報が自社のデータベースに登録されて初めて意味を持ちます。最近ではクラウド型の顧客データベースが多数販売されていますので、300社以上の顧客を管理するのであれば絶対必要になると思います。

1)顧客の発見方法

①既存の顧客リスト
起業したての会社には当然ないでしょうが、ほとんどの会社は既存の取引先がありますので、このリストは全てのベースメントになります。まずこの既存顧客をしっかりとデータベースに登録することからスタートです。
②(有料)情報提供会社からの購入

業界によっては企業情報提供会社から入手することも可能です。日本だと帝国データバンク東京商工リサーチなどといった信用調査会社やユーソナーSPEEDAなどといった企業情報共有サイト運営会社が有名です。
③公共情報(組合名簿・WEB・電話帳

ターゲットとする業界団体の組合員名簿を入手する方法もあります。また業界向けの雑誌等が出版されていれば出版会社にアクセスするもの良いでしょう。業界団体などは賛助会員で入会すれば名簿だけではなく関連の会合パーティにも参加でき、より顧客情報が入手することができます。
ちなみに私が若かったころは電話ボックスから電話帳を拝借してコピーし、あ行から順番に回ったりしたことがありますね。当時はWEBサイトなんて持っていない企業も多かったので、実際に行ってみないとどんな会社かわからないという玉手箱的な効率の悪い営業活動でしたが、生きた営業の勉強にもなったので、良い思い出です。(毎年新入社員にやってもらうものいいのかもしれませんね)
④銀行、関連同業会社からの紹介
ここからは、足で稼ぐ草の根作戦です。とにかく手間リレーションをフルに活用して顧客情報を収集するやり方です。銀行やその業界に関係する材料や付属機器を販売している会社は利害関係が少ないので顧客情報を頂きやすいですし、こういった第三者に紹介してもらうことで、スムーズに新規顧客との面談が進むこともあります。特に銀行はその会社の財務状況も把握していますので与信面の確認においても効果がありますね。
⑤既存顧客からの紹介

こちらも④同様、昔からある手法です。特に入り込みづらい競合製品を使用している新規顧客(アウトサイダー)に対して比較的、効率的に入り込みやすい方法で私は営業時代、結構活用していました。
⑥展示会、セミナー

最後は名刺をかき集める作戦ですね。展示会に製品を出展したり、関連業界向けのセミナーを行うことで不特定多数の顧客データを入手する方法です。ちょっとした景品と引き換えに名刺やアンケートを記載してもらい、顧客情報を入手していきます。

2)顧客の洞察

①基本企業情報(住所、事業所、社員数、売上高、取引先など)
②人物情報(メールアドレス、生年月日、趣味、正確など)
③ファイナンス情報(過去3年のPL推移、信用調査会社評点)
④設備情報(自社製品だけでなく他社製品や関連製品も含めて)
⑤業態情報(どんな仕事をしているのか?)
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⑥セグメンテーション(どんな商品が販売対象になるのか?⇒ターゲットリストの基礎データ)

さて『顧客発見』のフェイズの後は、その『顧客の洞察』のフェイズとなります。その顧客をあらゆる角度から調査し、顧客情報をデータベースに追加していきます。訪問した時のヒアリングだけでなく、WEBや他の会社からのインプット情報など、細かなこともデータベースに入力していきます。
上記に主だった顧客情報例を記載しました。このようなデータベースを日々更新していくことで、営業担当が変更になった時も簡単に引継ぎすることができ、また何よりも ⑥セグメンテーションをすることが容易に可能となります。セグメンテーションについてはこの後の章で詳しく述べますが、これこそがターゲットリストをつくることなのです。
私は『ターゲットリスト無き営業活動はありえない』という考えを持っています。ターゲットリストがあれば訪問の効率を高めことができ、また営業マンが営業活動だけに注力することが可能となります。
いずれにしても『顧客発見』『顧客洞察』は新しい市場に進出するには欠かせない活動です。ある市場の責任者になったら、何をおいてもこの作業に取り掛かることが重要です。
また、海外の場合、いろいろなデータ保護(EU地域のGDPR法)の法律がありますので、これらの管理する顧客情報管理には国に合わせた法規制への対応も必要です。

CRM(Customer Relation Management)

セグメンテーション~ABCD顧客分類

さて、顧客情報が整ってきたらその情報をベースにして顧客をセグメンテーションし、ターゲットリストに落とし込んでいく必要があります。このセグメンテーションで比較的多くの会社が採用しているものにABCD顧客分類というものがあります。

上記はABCD分類の模式図ですが、顧客を4つの層に分けて管理する非常に基本的な分類方法です。横軸は自社とのリレーション、つまり親密度ですね。縦軸は顧客の規模、つまり大きい会社なのか、小さい会社なのかということです。ただ、最近はここを購買意欲に置き換えているところもあります。いずれにしても商談のチャンスが多いか少ないかを判断したい軸です。
顧客をそれぞれのゾーンにプロットするときに重要なのは、全社同じ尺度で入力することです。なるべく個人の裁量で分類するのではなく、会社として基準を決めて分類するようにしなければなりません。例えば売上高とか自社の年間販売量など数値で分類すると、基準が同じになりやすいです。
またABCDの比率ですが、これも自社の市場でのシェアでも変わってきますが、A・Bで30%C・Dで70%といった配分が良いと思います。

A顧客(インハウスユーザー)

Aの顧客『親密度が高く購買意欲も高い』顧客です。会社にとっては最も重要な顧客層で、優良アカウントとか重要顧客、ハウスユーザーなどとも呼ばれます。
この層には当然ながら頻繁に足を運び、長い時間の滞在『中頻度の訪問、長時間の滞在』が必要です。どのユーザーよりも優先してサービスを提供し、絶対に放してはいけない顧客層です。この層のユーザーが多ければ多いほど安定した売上を確保することができます。

B顧客(アウトサイダー)

Bの顧客『親密度が低くいが購買意欲は高い』顧客です。営業戦略で言えば、最も攻めなければいけない顧客層で、この層を切り崩すことでシェアが拡大していきます。ターゲットユーザーとか、アウトサイドユーザーなどと呼ばれます。
営業的にはこの層は『高頻度の訪問、中時間の滞在』を心がけるべきです。頻繁に訪問することで顧客とのリレーションを築き、感情的な繋がりから商談に近づけていく必要があります。訪問頻度は、状況によってはA顧客よりも頻繁に行く必要があります。
とはいえ、闇雲に訪問すれば良いわけではありません。まったく自社に興味のない会社なわけですから、最初は販売目的より情報提供に終始しなければなりません。またこれらのアウトサイドユーザーに対処していくためにはファーストコンタクトが重要です。その会社のキーマン最初のコンタクト『また会いたい』と思わせなければなりません。相当な営業スキル、製品・業界知識がないと務まらないポジションで、このようなアウトサイドユーザーだけを受け持つ専用チームが存在する会社も、しばしばあります。

C顧客(ライフタイムカスタマー)

Cの顧客『親密度が高いが購買意欲は低い』顧客です。購買意欲はそれほど高くはないのですが、親密度が高いので購入の際は必ず声をかけてくれ、だいたい無競合で購入してくれます。ファンユーザーとかライフタイムカスタマーなどと呼ばれます。
この層のユーザーは総じて営業マンが最も行きやすい会社です。ところが、このユーザーは黙っていても買ってくれるユーザーです。釣った魚にエサはやらないではないですが、この層のユーザーは『低頻度の訪問、短時間の滞在』で対処していくべきです。優秀な営業マンほど、この訪問のバランスがしっかりと取れています。

D顧客(新規ユーザー)

最後にDの顧客『親密度が低く、また購買意欲も低い』顧客です。この層のユーザーは『低頻度の訪問、中時間の滞在』となりますが、そもそも親しくないユーザーですから購買意欲が正確につかめていないことも多いです。マーケットシェアを拡大するためには無視できない顧客層なので、頻度は少なくても、しっかりと情報を持って訪問し、訪問した際はある程度長く滞在して詳細な情報を獲得することが重要です。
また、ここは行く必要が無いなと判断した場合は、ABCD顧客分類から外し(表でいうE顧客)、分母から減らしていくことも心がけて下さい。営業マンが1か月で訪問できる顧客数は限られています。販売見込みのある顧客に効率的に訪問するためには、CD層の見極めも重要になります。

このABCD顧客分類は当然、ターゲットリストを作成するときに非常に有効なのですが、もう一つ、営業マンの訪問管理に活用できます。
例えば営業マン一人の活動量が1日5件訪問できるのであれば、月間の訪問可能件数約100件となります。この100件をABCD顧客分類に割り振った場合、AとBで70件の活動量になるように設定します。この70件(%)が営業マンの訪問管理のKPIとなります。
また、この訪問件数だけだと、正確に訪問管理を判断できない可能性があります。それは『誰に会ったのか?』です。ただ訪問して名刺を残してくるだけなら、状況によってはいかない方が良い時もあります。KPIとして訪問件数を集計する時は『誰に会ったのか?(キーマン面談)』だけをカウントするような工夫が必要です。

最近のSFA(Sales Force Automation)ツールはこれらに対して自動的に集計してくれたり、また訪問が予定通りに行われていない時、自動的にアラートを出してくれたりする機能を備えています。つまり営業マンごとにスコアリングしてくれるわけですね。(嫌な時代ですが。。。)
それにより、より科学的且つ平等に営業の訪問を見える化をすることができ、最終的には営業活動を効率的に行うことが可能となります。

予実管理シート

最後に商談管理に使われる予実(予算/実績)達成シートをご紹介しておきます。これも会社によっていろいろな書式があると思いますし、最近ではシステムを活用して自動的に作成されるツールもあるかと思います。
営業マンは日々予算目標に対して邁進していると思いますが、法人営業は商談の期間も比較的長くなり、また、受注の状況が生産計画にも関係してくることがあり、より長期的な目線が必要となります。
そのために長期的に計画達成のプランが見えるシートが必要となります。
冒頭に説明した通り、フォームは特に関係ありません。ここで私が言いたいことは2つです。
①計画(予算)に対して常に3倍の案件がある
②製造リードタイムの倍の見通しを立てる
(例えば製品L/Tが3ヶ月なら6か月先まで)
もし、この2つの条件が満たせないような予実管理になる場合は営業マンの人数が多いことになります。この辺も法人営業の1つの目安にして頂けたらと思います。

さて、今回はいかがでしたでしょうか?恐らくこのような販売管理手法ABCD顧客分類目標達成シート)は、どの法人営業でも形は違えど既に行っていることでしょう。しかし、新しい市場に初めて進出して行く時も、常にこの販売管理手法をその地域で実践できることが重要です。
アジア諸国ではまだ成長市場のため『問い合わせのあった商談を追う』という狩猟民族的な販売が多いです。まだ成長市場の段階でしっかりとしたCRM(Customer Relation Management)を構築しておけば、市場が成熟した際も永続的な利益を上げていくことが可能となるでしょう。とにかく販売はターゲットリストが命です。
では、また次回、ごきげんよう。

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