勝てる営業、勝てない営業【第52回】

ガッツポーズ営業マン営業論

営業論については、過去にもたくさん投稿してきました。また、自身の失敗例から学んだ教訓なども、『私の失敗シリーズ』などでいくつかご紹介をしてきましたが、やはり、営業というテーマで投稿するとPV数がかなり上がります。特に最近は就職活動の時期も絡んでか、20歳以下の閲覧数も多いので、今回は特に私が心血を注いできたBtoB系製造メーカーの営業、つまり法人営業について説明したいと思います。営業職を希望している学生から、営業経験3年目ぐらいの悩める営業マンに読んで頂けたらと思います。

法人営業の特徴

私の中では営業というと法人営業しか浮かびません。BtoC系の企業の営業は一般的に個人営業ということになりますが、いわゆる保険の外交員や自動車ディーラーの販売員などが代表的です。

法人営業と個人営業の違い

この法人営業個人営業の違いは何でしょうか?
いろいろありますが、決定的に違うのは以下の2点です。

1)購買決定の要因
2)購買決定者

法人の存在意義は収益を継続的に上げて存続していくことです。つまり法人購買決定要因『収益に貢献できるか』になります。個人の場合は、そのほとんどが購買者の嗜好、必要性で決定します。つまり、法人にとって購買は投資であることを意識しなければなりません。
また購買決定者は個人であれば1人、多くても数人ですが、法人営業の場合は、購買担当者、その上司、または経営者など組織のレポートラインにいる人物だけでなく、営業部門や管理部門、その会社のクライアントや株主など複数の関係者が決定に影響を与えます。
私は、あるユーザーで風水師の判断(占い)が購入決定に影響を与えた経験もこともありました。

このように法人営業購買決定の要因購買決定者が個人営業とは全く違い、それが法人営業の難しさであり、面白さでもあるわけです。

法人営業の難しさ

では、法人営業は何が難しいのでしょうか?
法人営業購買決定要因は、お客様に対し『収益に貢献できるか』を示さなければなりません。取扱い製品がお客様に対し、どれだけ利益が出るのかを提案していく必要があります。
販売先のマーケットが成長している時は、概ね性能(スピードや切替時間の短縮)の上がった設備を提案すれば収益に貢献できました。しかし現在の日本の法人は成熟マーケットでビジネスを展開しているところが多く、また事業も細分化されているので、よりお客様の課題を洞察し、それに対応した製品提案をしなければなりません。いわゆるROI(投資対効果)提案が必要ということです。

ROI(投資対効果)【第38回】
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購買決定者が複数存在することは『収益に貢献できるか』よりも更に法人営業を難しくします。購買決定者は必ずしも『購買決定要因』だけでは口説き落とせません。

1)購買決定者の発見
2)購買決定者のメリットの発見

まずは大事なのは本当に購買決定をする購買決定者の発見です。良く決定キーマンなどと言う言葉で表します。購買担当役員を長い期間かけて口説き落とし、ようやく稟議申請してもらったら、社長が仲の良い競合担当へ連絡をして決めてしまった、などという話はよく聞く失敗談です。これは典型的な購買決定者を見誤っている事例です。
お客様社内のさまざまな人物に会ってリレーションを増やしたり、出入りの業者や近隣、組合の同業者などからも情報を取って間違いのない購買決定者を見つけられるようにしなければなりません。

また購買決定者のメリットの見極めも重要です。購買決定者が経営者の場合は、比較的シンプルで購買決定要因である『収益』メリットになることが多いです。
しかし、購買決定者が経営者ではない時は、購買決定者のメリットがどこにあるのかを洞察する必要があります。自分に置き換えてもらえばわかると思いますが、サラリーマンにとっては常に『収益』のためだけに働いているわけではありません。むしろ『収益』を出すことで自分の評価が上がることだったり昇給昇格することが目的だったりします。購買決定者何を提供してあげれば喜んでもらえるのかを掴み、例えば購入のための稟議書作成の基礎資料を手伝うとか、最近では設備のための助成金や補助金を紹介するなど的確に購買決定者をサポートする動きが法人営業には必要になります。

勝てる営業、勝てない営業

優秀な営業マンの特徴

さて、非常にフレキシブルな活動が必要な法人営業ですが、それでも必ず毎年結果を残す営業マン、いわゆる勝てる営業マンがいます。
私はあまり営業的に気が利く行動ができない営業マンでしたし、なによりお酒が飲めないことにコンプレックスを感じていました。『お酒が飲めなくて良く営業が務まるね』なんてことも言われました。
しかし20年の営業時代、販売成績だけは常に上位をキープしていたと思います。
自分の営業を思い出した時に、勝てる営業マンに重要だったのは、キーマンへの訪問数レスポンススピードでだったと感じています。
この2つを徹底的に高めると、お客様のファーストコール先になります。何かわからないことがあった時、商談やクレームの時だけに限らず、食事したい時などプライベートに近いところも含めて、最初に連絡が来るようになります。今考えると、私にはこのようなお客様が数多くいてくれたような気がしています。
これを言ってしまうと、ややソリューション営業の目的とやや離れてしまうのですが、法人営業の一番ベース、根っこのところは、このファーストコール先として認知されるリレーションでお客様と繋がっていることだと思います。
つまり、これがない状態で、前述の『収益貢献提案』『購買決定者のサポート』を一生懸命実行しても、空回りしてしまうということを常に考えなければならないと思います。

ちなみに、過去の投稿『営業職の適正【第35回】』で、私がいろいろな営業マンを見てきた上で、売れる営業マンの特徴を詳しく書いていますので、是非併せて読んでみて下さい。こちらは一般論になりますのでより参考になると思います。
売れる営業マンの5つの特徴の項目だけ記載をしておきます。

【売れる営業マンの特徴】
1)レスポンスが早い(依頼に対しての初動、進捗、報告が早い)
2)ヒアリング力(聞き上手)
3)創造(想像)力が豊富
4)断定表現
5)交渉力(期待値調整能力が高い)

営業職の適正【第35回】
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勝てる営業マンのスキル例

さて、最後に勝てる営業マンが必ずできている大事な部分を書いておきます。これは『次への布石が秀逸である』ということですね。
たとえば新規のお客様を訪問した時に、キーマンに面会できず、事務所に名刺を残して帰ることもあると思いますが、その際に『ちなみに設備ご担当者のお名前を教えて頂くことは可能でしょうか?』の一言が言えるか言えないかです。教えてくれなくても損することはないですし、だいたいの場合、教えてくれます。その後『では〇〇様に後日連絡を入れさせて頂きます』ということで名刺を残していけば、その名刺が担当者に届く可能性は相当高まるわけです。更に名刺を受けた女性の方が名札をつけていた時などは『では、△△さん大変お手数をお掛けしますが〇〇様に何卒、宜しくお伝えください』等を添えれば、名指しされた責任からかなりの確度で名刺が担当者に到達します。

また、名刺を残したら翌日の朝までにはアポイントを取ることですね。当たり前のことの割にできていない人が多いです。見ず知らずの人の名刺が置かれていた場合、記憶に残っているのはせいぜい1日程度です。訪問した日の夕方か、翌朝にはアポなしで伺った非礼をお詫びしながらアポイントを取れば、取る方も電話を掛けやすいですし、アポイント率も高まると思います。

また商談時に良くあるのが、お客様の『検討しとく』に対する切り返しですね。これを聞いて、『わかりました、よろしくご検討ください』という営業マンは、なかなか売れないでしょう。
『検討しとく』は自社にとっては80%ネガティブワードです。何か手を打たなければ敗戦するか、商談が延期されることを示唆しています。くれぐれもそのまま、帰るなんてことがないようにして下さい。

では『検討しとく』の切り返しはなんといえば良いのでしょうか?

1)『ありがとうございます!』
『検討する』わけですから、まずは満面の笑みで感謝を述べましょう。断ろうと思っている客先の気持ちに少しでも訴えていくべきです。
2)『急かしてしまって恐縮ですが、来週の〇〇に結果を聞きに伺ってもよいでしょうか?』
これは上手に言う必要があります。急かしているわけではないと前置きした上で、1週間以内に次のアポイントを固めます。この一言で客先の意向も非常に良くわかります。難色を示された時は、かなりまずい状況です。他社に決めているか、もう購入の意思がないと思った方がいいですね。
3)『何かご決断頂けるヒントを頂けないですか?』
上記(2)で次のアポイントが固められない時は、なりふりかまっていられません。ずばり、逆転の可能性を探らなければ、購買担当者はすぐにでも競合に発注の電話を入れるでしょう。何が条件で競合に傾いているのか、購買の意思が無くなってしまったのかを聞くのに、上記セリフは有効です。

今回は上記2例をお伝えしましたが、こういったケースにおける応酬話法術はいろいろなテクニックがありますので、またどこかでまとめて投稿したいと思います。

さて、今回は勝てる営業をテーマに、営業論について再度、書き下ろしてみました。何べんも書いている通り、自分自身は教科書にあるような営業マン像とはかけ離れている営業マンです。でも、勝てる営業になるためには、教科書通りでなくても勝つ方法はいくらでもあります。
BtoB系製造メーカーであれば、そのベースは全てお客様との強固なリレーションです。もちろん一時的な勝ち負けはあるかもしれませんが、永続的に企業同士がWin-Winの関係を築くために、営業マンはこのベース作りをしっかりと短時間で構築するのが急務です。
さて、今回はこれまでとします。ごきげんよう!

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