課題解決の思考~販売不振解決のロジカルツリー【第53回】

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問題ソリューションビジネス

ロジカルシンキングは過去に同タイトル『ロジカルシンキング【第24回】』で投稿しているのですが、その時はどちらかというと仮説思考をメインにした事業戦略、または販売戦略を立案するための手法といった切り口で進めました。今回は、日ごろの業務の中でしばしば使われる問題解決に主眼を置いて説明していきたいと思います。正確なロジカルツリーを作れるようにセンスを養っていきましょう。まぁ、私も得意というわけではないのですが。。。

課題解決の思考

問題解決のステップ

日々、仕事をするということは課題(問題)解決を続けていくということです。これは仕事だけではなく、もしかすると人生そのものが課題解決の連続とも言えますね。
あまり話を広げるとフィロソフィー的な話題になってしまうので、今日は仕事の中での課題解決に絞ります。営業で言えば『予算を達成するためには』、販売推進で言えば『販売不振を打開するためには』、工場で言えば『原価を〇〇円にするには』など、課題は常に立ちはだかっています。
簡単な課題であれば、直観的に解決していっても問題ありませんが、難しい課題に対しては論理的にステップを踏んで解決していくことが有効です。これが課題解決の思考です。

課題解決のステップ

上記の図は、有名な課題(問題)解決の思考ステップで何かの課題を解決したい時に使います。
現在位置はどういう状態(現状)で、それをどういう状態(GOAL)にしたいのかを置いた時に、その差(GAP)を問題(目標)として把握します。

事例

A社は特殊フィルム印刷機の製造メーカーです。お取引先であるX社から、冬場の静電気に困っていることを聞いて、A社はそれに対応するため、フィルムが通過する部分だけに対し局所的に加湿する画期的な装置を開発し、X社に提供したところ非常に好評で納品した機械10台全てに装着してもらいました。
そこで、『この製品は売れる』と確信したA社の販促部は、メールマガジンを軸にプロモーション活動を始めましたが、販促開始してから3ヶ月、当初年間目標にしていた300セットに対し、18セットしか売れていない状況です。

1)STEP1 全体像の把握~問題・課題の把握

まずは、前提条件や現状について可能な限り数値化して把握することです。
特にビジネスの場合は目標値(GOAL)の設定を明確に定義しなければ、その後の解決策の検討その打ち手が全くズレていってしまうので重要です。

上記の事例であれば、まず目標値(GOAL)をしっかりと定義することです。
①対象、範囲:対象の顧客・装置は何社何台?あるのか?・・・120社300台
②時間軸:どれくらいの時期までに・・・初年度(1年間)
③目標基準:目標として何社何セット取りつけるのか?・・・40社120セット

次に現在の位置(現状)と目標値(GOAL)を照らし合わせて問題点を発見します。
前述した通り、分析は可能な限り数値化しなければなりません。
【定量的な分析】
・全社メルマガリスト(6,000社)でプロモーション、開封率25%、回帰率0.3%、見積書問合せ15社
・営業経由で見積書問合せ20社
・販売実績は現在(3か月)、5社18セット(総売上\22,000,000)
【定性的な分析】
・納入したお客様の評価は良く、1台取りつけると複数台になるケースが多い
(販売した5社のうち3社は4セット以上採用してもらっている)
・平均\1,220,000で販売しているが、営業からは\1,000,000切ればもっと売れるとの話がある。
・資料が技術的で、営業からは販売に使いづらいという意見がある。

これらの情報から現状を現在の位置を明確にすると下記のような表となります。

現状分析

STEP2 因果関係を把握する~解決策の仮説

STEP1で全体像を把握したら、いよいよ解決策を検討していきます。
この解決策を分析していくのに良く使われるのがロジカルツリーです。解決しなければいけない課題(問題)の原因をSTEP1の分析結果からよりロジカルに仮説を立てて考えていきます。
良く『なぜを5回まで掘り下げる』と言われていますが、あまり公式やルールにこだわらず、とにかくMECEになっているのか、を意識して進めていくことが重要です。

MECE(Mutually Exclusive, Collectively Exhaustive)

ロジカルシンキングの思考の一つで『漏れなく、ダブリなく』の意味

先ほどの事例でロジカルツリーを考えると下記のような感じになります。もちろん、ロジカルツリーの分類に正解はないので、各課題によって使える分類をたくさん持っているといいと思います。

販売不振のロジカルツリー事例

BtoB系製造メーカー販売不振の原因分析は、まず製品軸と、製品以外軸に分けるとMECEで作りやすくなります。
製品軸の原因分析はQCD(Quality【品質】・Cost【価格】・Delivery【納期】)を活用するこででMECEになり、原因を特定しやすくなります。
先ほどの事例から、『加湿装置の販売不振』ロジカルツリーにしていくと、納品したお客様の評価やリピート率の高さからいうと製品の品質には問題なさそうです。ただ、営業のヒアリングで価格が一つのネックになっていそうなので、製品軸からは製品のコストダウンをする、または粗利を少し下げる(期間を決めたキャンペーンを行う)ことが必要かもしれません。

製品以外軸は主にプロモーション関連です。私は今回、売り方資料という風に分けましたが、AIDMAで分けたり、マーケティング4Pで分けたりしても良いのかと思います。
更に売り方には対人(営業マン)DRM(メルマガ)に分けて原因を考える必要がありそうですね。STEP1の全体像の把握からは、営業マンの直接販売活動に対しては、まずまず効果的に受注している一方、メルマガの反応はイマイチです。
資料が技術的すぎるという意見なども含めて、問題の原因はこの辺にありそうです。
このようにSTEP2ではSTEP1の情報を元にして、最も確からしい原因(仮説)を見つけだしていくことになります。これを仮説思考などとも呼びます。

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STEP3 打ち手を決定する~原因(仮説)に対する対策

さて、最後はSTEP2で見つけた原因(仮説)に対して打ち手を考えることです。
今回の加湿器販売不振の事例で言えば原因は下記3点に絞られそうです。

1)価格対策
2)顧客への情報到達(メルマガの見直し)対策
3)販促資料対策

原因(仮説)に対する打ち手

いつも言っているように価格を下げることは麻薬です。極力、この対策は最後まで取っておきたいのですが、商品ローンチの場面では市場を抑えにいくことも重要な施策です。
例えば期間限定の価格キャンペーンや、消耗品の追加サービス、また今回の装置は取りつけると評判が高いという性格を持っているのであれば、無料貸し出し装置を準備してお試しで使ってもらうのも良い方法かもしれません。

今回の一番の原因はお客様へ製品情報が届いていないことが最大の問題のようです。せっかくメールマガジンを使っていてもその情報がお客様に届いていなければ何の効果もありません。
別の顧客リストがあるのであればリストを切替するとか、メルマガをあきらめてDMで展開するなどを考えていく必要があります。
販促ツールが技術寄りになるのはBtoB系製造メーカーでは非常にありがちなパターンです。導入効果をしっかりと経済性で訴え、導入事例を中心としたものに変更しないと、特にメールマガジンのようにプッシュ型のプロモーションでは途中で飽きられてしまいます。

このようにSTEP2で見つけた原因について優先順位をつけて打ち手を具体的に考えていくのがSTEP3打ち手を決定するで実施することになります。

さて、今回は日常の仕事の中で最も経験する課題解決の方法を、製品の販売不振の事例から具体的に説明してみました。意外とBtoB系の課題解決手法を説明するようなサイトは少ないので、参考にして頂けたらと思います。また、このような事例を載せた形の投稿も考えていきたいと思います。では、今回はこれまで、ごきげんよう!

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