実行性のある目標設定【第54回】

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カレンダー営業論

みなさん、こんにちは。3月もいよいよ終わり、新しい期を迎える企業も多いのではないでしょうか?期初といえば、その年の目標を立てる時期。経営企画室や部門長などから目標が展開されてくるころですね。今回はこの目標を設定する時に重要なことについて書いていきたいと思います。作成する社員、評価する上司の方両方に参考になるように進められたらと思っています。

効果的な目標設定の方法

目標管理の代名詞MBO

最近の上場企業ではMBO(Management by Objectives)と呼ばれる目標管理手法が使われているところも多く、私の会社でも30歳以上の社員は、ほぼ全員MBOによる目標管理の展開を実施していました。
せっかく記事にしたので、このMBOをちょっとググってみたのですが、ドラッカー『現代の経営』の中で提唱していたのですね、驚きでした。(あれ、読んだことあるけどほとんど記憶にない。。。)
そういえば、私の会社で実施することが決まった時も自社で作ったものだと思っていたぐらいですから、そんなことはわかる由もないのですが、そのようにして考えると、これほど多くの会社で採用している理由がのが良くわかります。
ある就職系サイトのデータでは300人以上の企業の90%がMBOを採用、または導入しているとのことで、もはやビジネスの共通言語として通じるレベルです。

目標設定のルール『SMART』

では、目標設定する時にどのようなことに気をつけて立てることが必要でしょうか?

例えば、来期販売量を拡大するといった目的に掲げた営業のF課長が、目標管理の一項目に下記のような目標を立案しました。

『販売店との関係を強化し、うまく活用することで販売量を大きく拡大する』

みなさんの中にもこのような目標設定をしている人が多いのではないでしょうか?この目標で販売量を拡大するといった目的に対し、具体的な実行計画が描けるでしょうか?100歩譲って立案した本人は、できるかもしれません。しかしこれだと展開される部下はいろいろな解釈ができてしまいますし、すぐに自分の行動計画に落とし込むことができないでしょう。
また、評価時点では上司も達成度をどのように評価したら良いのかわからないでしょう。大きく拡大っていったいどのくらい。。。

目標実行性があるように設定するためにはルールがあります。特に良く使われているのがSMARTです。

目標設定のSMART

目標設定をする際に、留意をする点として示したものが、それぞれの頭文字をとってSMARTと呼ばれています。目標設定時は、このSMARTを必ず意識をして立案しなければなりません。
また、あなたが上司であれば、部下が提出してきた目標設定に対してSMARTの要素がしっかりと入っているかを評価しなければなりません。
ではSMARTに照らし合わせて、前述のF課長の目標管理はどこが悪いのか検証してみましょう。

まず、目標設定に非常に良く使用される『関係』『強化』『拡大』といったワード、目標設定では非常に良く使ってしまうワードですが、SMART『S』つまり具体的ではありません。『販売店との関係』とは何でしょうか?人間的なリレーション、製品教育、いろいろな意味に取れますね。
また、『より強化』『大きく拡大』とは、いったいどんな状態からどんな状態にするのかが全くわかりません。これがSMART『M』測定可能性ですね。

そもそも、この目標設定には F課長自体が何をするのかが示されていません。SMART『R』役割が明確になっていないですね。
当然、この文書だけではいつまでに実施するのかも記載がないのでSMART『T』達成期間も示されていないことになります。
実際のMBOのフォームには、役割や達成期間(またはスケジュール)が別に列に書かれている場合が多いので、やや無理やりな解説になっていますが、最低でも下記ぐらいより具体的に測定可能目標設定できるように心掛けて欲しいですね。

『販売店に対し商品教育を月次で行うことで、上期までの代理店だけでも販売できる状態にすることで昨年比150%の売上目標を達成する』

不適切な目標設定例と修正方法

さて、前項を受けてここでは、目標設定に良く使われる(私もついつい使ってしまうのですが)けど、実は不適切ワードとその修正方法について説明を致します。

まず何より、目標設定は可能な限り数値目標(定量目標)を設定することです。目標設定数値目標を使うことで、時点での進捗状況が理解しやすく、また評価する時も評価者のバイアスがかからない相対的な評価が可能となります。
営業部門のように販売予算を持っているような部門は定量目標設定が作りやすいのですが、人事・総務部門や販売推進部門などは、どうしても定量目標の設定が難しい場合があります。
そのような時は『〇〇な状態にする』とか『△△ができているようにする』といった書き方をすると、何%ぐらいの状態か、何割できるようになったか、など進捗のイメージがつきやすくなります。

目標設定の不適切ワード

目標と目的

目標目的って非常に似ていますよね。普段は区別なく使ってしまっていることもあるのではないかと思います。しかしビジネスで使用する時は大きく違います。

□目的(GOAL)・・・あるべき姿、最終的に目指す到達点

□目標(GAP)・・・目的(GOAL)に到達するための手法、手段

たとえば『やせる』という目的(GOAL)を設定した場合、目標運動することだったり、食事を抜いたりすることになります。目標は可能な限り定量設定をしなければならないので、例えば運動であれば、毎日5km走るとか、2日に1回1時間ジムに通うなどになります。また食事であれば、毎日昼食は抜く、とか1食当たりのカロリーを300kcal以下にするなどになります。

目標は、目的(GOAL)に向かうための具体的な実行手段です。目的は1つですが、目標はいくつも存在します。だから管理をして進捗を確認しながら進める必要があるのです。

これについては前回の投稿『問題解決の思考【第53回】』目的(GOAL)目標(GAP)の立ち位置について図表で説明していますので参考にしてみて下さい。

課題解決の思考~販売不振解決のロジカルツリー【第53回】
ロジカルシンキングは過去に同タイトル『ロジカルシンキング【第24回】』で投稿しているのですが、その時はどちらかというと仮説思考をメインにした事業戦略、または販売戦略を立案するための手法といった切り口で進めました。今回は、日ごろの業務の中で...

目標管理の実行方法

では、最後に目標管理の進め方についてポイントを3点ほど上げておきます。

1)目標設定数は多くて4つまで
目標を立てる人の部署や役割にもよりますが、半期ごとの目標設定をするのであれば、3つがいいところだと思います。目標設定時に上司としっかりと相談し、なるべく具体的な目標設定を3つ立案するのが適量です。

2)月次でレビューを行う
目標管理、特にMBOはどちらかというと業績評価の要素が強いので、目標設定してから評価までの間の進捗状況についてあまり確認しない傾向があります。これでは片手落ちです。
最低でも2ヶ月に1回、できれば月次で目標設定のレビューを行い、進捗状況を確認することでPDCAを回していくことが重要です。

3)コピペではなく自分の役割を明確にする
MBOは上司からの方針展開なので、基本上位方針に従って作成することになります。すると判で押したように上位方針を貼り付けて、数字の部分だけ個人の目標に変更したようなMBOが提出されます。特に営業部などでは、予算に従って目標設定がされるので良く見られる形です。
展開された方針の中で自分は何の役割を果たしていくのか?前述の営業部門の場合などは『予算を必達する』だけではなく、自分は、ある特定のユーザーに詳しいので、『そのセクターユーザーの受注量を150%増やす』とか、『資料化し、部内で共有させメンバーのスキルを高める』など自分の役割を明確にする必要があります。

最近はMBOではなくOKRという目標管理も良く聞きます。基本は同じ目標管理の手法ですが、OKRは評価制度と結びついていないので、状況の変化にすぐ対応するためウィークリーでの進捗報告をしたりフレキシブルに目標設定を変更したりすることができ、より実戦型の目標管理となります。

さて、今回はいかがでしたでしょうか?まさに来期に向けて目標設定をする時期なのでタイムリーじゃないかと思っています。私も今回説明をしたSMARTを意識して目標設定するようにしていますが、気がつくと不適切ワードを使っていたりします。重要なのは目標設定を作成することではありません。最終目的(GOAL)に向かって具体的な行動を起こすための手段を考えていることを認識して、より具体的に定量的に立案するクセをつけていきましょう。では、今回はこれまで、ごきげんよう!

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