ターゲティングの方法【第44回】

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ダーツマーケティング

最近、マーケティング関連の投稿が減っているので今回は、久しぶりにおさらいを兼ねて製品販売のターゲティングについて説明したいと思います。マーケティングにおける最重要事項であるSTPは、BtoB系製造メーカーのように成熟した市場の中で製品販売をしていくためには特に間違えるわけにはいかない事項です。ある製品を販売しようと思った時に、どのようにターゲットを定めていくのかを製造メーカー目線で解説してみます。

STPとは

マーケティングの3ステップ

STPは過去にも結構、触れてきましたね。マーケティング(製品の売る方法)についておさらいも兼ねて復習しましょう。
一般的にマーケティング3ステップです。つまり、リサーチSTP4Pですね。

まずリサーチですが、BtoB製造メーカーの場合、よほど新しい市場に出ていくような製品ではない限り、リサーチで発見すべきものは顧客課題です。対象とするお客様の数が10,000以上ある場合は、SWOTなどを活用し、しっかりとした環境分析が必要ですが、3,000を下回るような対象顧客の企業であれば、トップ営業マンや、知見のある社員の意見から仮説を立てていく方が時間がかからずに顧客課題発見につながると思います。
この顧客課題を正しく選び出すことができれば、製品販売の50%は達成できたといえるでしょう。

その次が、今回のテーマであるSTPです。SセグメンテーションターゲティングPポジショニングの頭文字を取っています。STPは、リサーチのプロセスで発見した顧客課題に対して、自社の製品をどのように位置づけして販売していくかを分析する手法です。これについては、後ほど詳しく説明したいと思います。

そして最後が4Pです。これも4つのPの頭文字を取っています。プロダクト【Product:製品】、プライス【Price:価格】、プレイス【Place:流通】、プロモーション【Promotion:販売促進】ですね。
4Pは、製品をどのような形でお客様に届ける(販売)のかを検討する分析手法です。
どんな製品(Product)をいくら(Price)で、どういった流通経路(Place)で、どのように製品情報を伝達する(Promotion)のか?まさにマーケティングの醍醐味です。
過去の投稿『商品戦略の立案【第27回】』にも同様な記述がありますので併せてご確認ください。

商品戦略の立案【第27回】
実践的な事業戦略の立案方法【第19回】の反響が大きかったので、かみ砕く意味で実際に新製品を販売していくとなった時に販売推進マネージャーがどのように計画を進めたらよいのか、これも過去の経験から説明したいと思います。BtoC系のメーカーであれ...

セグメンテーション

セグメンテーションは、対象とする市場を一定の条件で区分けすることです。しかし、なぜセグメンテーションするのでしょうか?せっかく製品を販売するのであれば対象のお客様は多いに越したことはないですよね。
確かに、モノがたくさん売れていた時代は顧客課題がある程度共通していましたし、仮にいくつかの顧客課題があっても、そのセグメントだけで結構な数量が売れた訳です。ところが現在はモノが余っている時代です。基本的にお客様に購買意欲がありません。このような成熟市場で製品を販売していくためには、より深い顧客課題を見つけ、そこに対して製品を投入しないと販売に繋がりません。これを市場の細分化といい、セグメンテーションの柱となります。
例えばテレビを販売する時に『新型の高性能、高品質なテレビです』と販売しても、お客様の購買意欲を刺激することはできません。ここでテレビを購入する可能性のある人を年齢や嗜好などに合わせて細分化していきます。例えば年齢や行動パターンなどで細分化した際に『若年層、テレビ離れ』といった層が切り出された時に、もしその層に対して『動画配信サービスにボタン1つで対応したTVです』といった製品を投入することで、テレビ所有者全員には響きませんが、少なくてもYoutubeやNETFLIXなどを多く見る層にはヒットする可能性があるわけです。
つまり、市場を狭めるというよりは、市場を細かくすることで、一番効果がある層を発見できることが、市場の細分化、つまりセグメンテーションの役割になります。
セグメンテーションは一般的に下記のような切り口で細分化します。特に製造業的な切り口を太字で追記してみます。

1)地理的変数/細分化・・・寒冷地と温暖地都市部と過疎地沿岸部と山間部
2)人口的(業態的)変数/細分化・・・売上高事業形態・領域都市型と郊外型下請と直請
3)心理的変数/細分化・・・ブランド志向(高級志向)輸入品崇拝と国産崇拝ファン心理
4)行動変数/細分化・・・新規購入者とリピーター購入製品の傾向(頻度、種類)

BtoC系メーカーであれば(3)(4)の分析が非常に重要になりますが、BtoB系メーカーだと心理的な細分化は上記に挙げた通り、輸入品崇拝中国品の嫌悪ぐらいかなと思います。(まぁ、経営者がこの心理を持っていると何よりも強い購買意欲に繋がりますが。。。)
やはり(2)(4)をしっかりと分析をしてセグメンテーションしたいところです。

ターゲティング

ターゲティングセグメンテーションで切り出した各層に対して、自社の製品を投入したら、どの層の売上が最大値になるのかを検討することです。
これは、あくまでも学習用に作成したフレームワークです。(こんな切り口を家電業界の人に見られたら苦情になりそうで)

TV購入者のセグメンテーション

自社の製品は大型薄型の4K対応、Youtubeをはじめとした動画配信サービスに対応したネットテレビだとした場合、普通に考えると『テレビの依存度が高く、資金力もある層』を狙っていくのが定石です。しかし、自社のテレビの最大の製品特性は『動画配信サービスに対応したネットテレビ』であり、この特性で再度分析すると、赤枠内のような顧客課題にたどり着き、本当に購入する層は『テレビの依存度が低く資金力のない層』と、最初に導き出したターゲットと真逆の結果になるかもしれません。
このようにターゲティングセグメンテーションでの切り出し方も重要になり、上記のように切り出し方でターゲティングのポイントも大きく変化してしまいます。
当然、自社の製品が『とにかくシンプル操作にこだわったテレビ』だった場合は、違う結果が導き出されますし、だからこそ、このセグメンテーションターゲティングは製品販売で切っても切れない関係になります。

最後にターゲティング分析をする際の手法として6Rがありますので簡単に内容をのせておきます。ちなみに、私は『対象数』『収益性』『顧客への効果』『取組みの容易性』ターゲティングのポイントにしています。

ターゲティングの6R

Realistic scale(有効な規模)・・・売れる先がたくさんあるのか?
Rank(優先順位)・・・どのセグメントからやるのか?
Rate of growth(成長率)・・・もうかるのか?
Rival(競合)・・・勝てるのか?
Reach(到達可能性)・・・対象にアクセスできるのか?
Response(測定可能性)・・・マーケティングの効果が測定できるか

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ポジショニング

STPの最後はポジショニングです。マーケットを細分化(セグメンテーション)し、区分けした市場から製品を投入すべき市場を見つけ出しました(ターゲティング)。次はその見つけ出した市場で、自社の製品をどういう立ち位置に置いて販売していくのかを決めるのがポジショニングです。
このポジショニング分析により、自社製品のUSP(ユニークセールスポイント)最も有効になるポジションを探し出すことで、競合に対して有利に戦いを進めることができます。また、この製品ポジションが有効であればあるほど、その市場におけるブランドの地位を確立することができます。まさにマーケティングの醍醐味が、このポジショニングにあると言えます。

ところが、このポジショニング分析には市場を見極める経験と、切り口を見つけ出すセンスが非常に必要です。だいたいの場合、ポジショニングマップを作成し、そこに競合製品と自社製品をプロットしていくわけですが、まったく分析になっていないことが多いです。

ダメなポジショニングマップ事例

一番やりがちなのが、マップが一直線上に並んでしまうパターンです。上記の表の通り、価格が高ければスペックは良くなるというのは、ほぼ原理に近く競合との差別化をマッピングすることが難しくなります。特に軸に価格を使うと概ねこの形になります。
軸を選択する時は、必ず顧客の購買意欲(Key Buying Factor)に関係するワード(確かに価格は大いに関係するワードであるが。。。)を選び、自社商品が単独でポジショニングされる軸を探し出すことです。いくら単独で設置できても軸に顧客の購買意欲(KBF)が選ばれていなければ、その商品は売れることはないですし、いろいろな軸を探して最適なポジショニングをして下さい。
恐らく数々の製品を世の中に出してきたマーケターなどは直観的に、この2軸をみつけだすのでしょうが、慣れていないと上記の表のように何のために分析しているのかわからないような状況になってしまうことが多いです。

さて、久しぶりにマーケティング関連の投稿をさせて頂きました。今回のSTPは、マーケティングミックス(4P)と並んで、絶対に頭にいれていなければならない項目です。言葉の丸暗記ではなく、順を追って考えていけば自然と身についていくはずですので、本投稿がその一助になると幸いです。では、今回はここまで、近いうちにマーケティングミックス(4P)についても、触れていきたいと思います。ごきげんよう!

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