商品戦略の立案【第27回】

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商品戦略計画マーケティング

実践的な事業戦略の立案方法【第19回】の反響が大きかったので、かみ砕く意味で実際に新製品を販売していくとなった時に販売推進マネージャーがどのように計画を進めたらよいのか、これも過去の経験から説明したいと思います。BtoC系のメーカーであれば、このような商品企画部門は、花形部門で、一人のブランドマネージャーと4~5人ぐらいのチームで進められることが多いのですが、BtoB系製造メーカーでは、ほぼ一人の担当者が複数の商品企画を考えていく状況が一般的です。短時間に商品戦略を立案していく参考になったらと思っています。

商品戦略とは

何を置いても顧客課題の発見

もう、しつこいと言われるかもしれませんが、大事なことなので何べんでも説明します。何か製品を売る時には顧客課題、つまりお客様が今現在悩んでいることが起点で考えていかなければなりません。なので商品戦略の最初は顧客課題の発見(Research)なのです。
製品のプロダクトマネージャー、または販売推進担当者はこの顧客課題を見つけるために仮説を立て、それに対して、いろいろな方法で根拠づけをしていきます。この仮説思考については『ロジカルシンキング【第24回】』にわかりやすく説明してありますので、良かったらそちらも参考にしてみて下さい。

ロジカルシンキング【第24回】
仕事を進めていく中で自分の考えを人に伝えていく場面は毎日のように出てきます。会議の発表などでも、非常に理解しやすい人の発表と、なんだかさっぱりわからない人の発表などが浮き彫りになります。これはなにが違うのでしょうか?もちろん、発表に使用し...

仮説の立案から顧客課題の発見までのプロセスは下記のようなものが考えられます。

1)実際に顧客へヒアリング
2)トップ営業マンからのヒアリング
3)顧客へのアンケート
4)蓄積されたデータからの分析(修理データ、出荷データ)
5)競合商品(ヒット商品)分析

今の時代、BtoB系製造メーカーマスプロダクション戦略は難しくなります。よりターゲットを絞ったところに製品を投入するとなると、この顧客課題の発見綿密に、また迅速にやる必要があります。またターゲットによって顧客課題は変わってきますので、複数の仮説を作っていくことが重要です。
私は営業経験の方が、マーケティングより長かったので顧客とのリレーションも確保できており直接ヒアリングに行くことが多かったですね。ただ、直接の場合、どうしても仮説に結論が落ち着くように質問してしまう傾向があり、やはり第三者の判断、特に販売経験のあるトップ営業マンへのヒアリングは欠かせません。
またサービス部門の商品などは過去の修理履歴などから顧客課題を発見できます。実は顧客課題の発見で一番良いのはお客様が気づいていない課題の発見ですので、うまく見つけだせれば大きな効果が上げられると思います。

STP(ターゲットの明確化)

顧客課題が見つけられたら、それに対して製品をどのように販売していくのかを考えます。ここからはBtoB系の製造メーカーでも昔から実施していることなので馴染みやすいでしょう。
販売しようと考えている業界のどのセグメント(Segment)に対してローンチする製品なのか?その業界の中でも、どの顧客層(Targeting)に販売を進めるのか?を明確にしなければなりません。ここが曖昧だと、販売側からすると、『どこに、どうのように』売ったら良いかわからず、販売をボイコットされてしまうからです。プロダクトマネージャーや販売推進部門はまず、販売部門(営業)に売り込みをすることがなにより大事なことになります。
またポジショニング(Positioning)も販売部門と密接な関係があります。その製品をどういうポジション(差別化要素)で販売したら良いのかは販売テクニックのキモになります。たとえば、徹底的な価格の安さで勝負するのか?それとも異次元の生産性を売りにして高額だが投資対効果(ROI提案)を訴求して販売するのか?次章で説明するプロモーションも、このポジショニングに沿って実行されるので、このポジショニング(差別化要素)はターゲットを決めていく中では最も重要です。逆に、製品のポジショニングが見つからないようであれば、その製品の販売はあきらめた方が良いと考えます。

顧客課題の発見

プロモーション(販売方法)

顧客課題ターゲットが決まっていればプロモーションを考えるのはそれほど大変ではありません。プロモーションは過去にやってきたことと、いくつかの新しい要素(デジタルマーケティングやサブスクリプションのビジネスモデルなど)をミックスさせて、どの方法で販売すると販売量が最大化するのかを決めるプロセスです。

ここでは3つのプロモーションが必要になります。『えっ、プロモーションって4つ(マーケティングの4P:Price・Product・Place・Promotion)じゃなかったっけ?』と思われる方、はやとちりです。この4P/4Cの手法を誰に対してプロモーション(説明)するか、ということです。

【プロモーションの種類】
1)お客様向けプロモーション
2)販売(営業マン・代理店)向けプロモーション
3)アフターセールス向けプロモーション

お客様向けのプロモーションは、営業マンの対面訪問、展示会での集客やDMの送付、最近ではデジタルマーケティング(メルマガやLP)などですね。お客様に販売したい製品をどうやって伝えていくのか、ということに対するプロモーションです。
2つめは販売員に対するプロモーションです。BtoB系の製造メーカーでは、まだまだ対面販売が主流で、実は私の会社のメールマガジンでもレスポンスは営業への問い合わせがまだ一番です。この販売員に向けたプロモーションをしっかりと実施することで販売員のその製品に対する意識が大いに変わります。営業は数字を追いかける生き物なので『売れる!』と腑に落ちて初めてお客様に提案をします。私がマーケティングチームに良く言っているのが『営業マンが騙せなければ、お客様は騙せない』です。
そして最後はアフターサービス部門へのプロモーションです。実はこれが抜け落ちている会社が意外と多いのですが、納品された製品はアフターサービス部門が管理していきます。この部門に製品情報が伝わってないと、まず修理がままならないですし、お客様に対しても商品特性に対して共通の認識を持って対処できなくなります。また、サブスクリプションリカーリングで収益を上げていく場合はアフターサービス部門が主役となりますので、製品のローンチ前にアフターサービス部門もしっかりとプロジェクトに参画させて、進めないと思わぬ問題に直面する時がありますのでご注意下さい。

STPとマーケティングの4P

さて、今回はどうだったでしょうか?もし会社である製品を販売することになった場合、この手順をしっかりと踏んでいけば、少なくても的外れにならない計画書が作成できると思います。私もこのルールを自分の中で作ってからマーケティングの仕事がすごく楽になりました。それでも、ある程度売れた製品は2割ぐらい、ほとんどが見当違いだったり、予期せぬ問題に妨害され結果を待たずに止めています。成功率の高いマーケティングをするにはまだまだ修行が必要なようです。
では、今回はこれまで、ごきげんよう!

良かったら『実践的な事業戦略の立案方法【第19回】』も読んでみて下さい。私の投稿の中でもかなり良くできたかな、と思った記事です。

実践的な事業戦略の立案方法【第19回】
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