さて、101回目の投稿です。またここから心機一転、200回を目指して頑張っていきたいと思います。本日のテーマはゴールデンサークル理論です。たまたま社内会議で、自社の存在意義を探索するために、このゴールデンサークルの図をフレームワークのように使って説明していたので『なるほど、こんな使い方もあるんだな』と思い、これを今回のブログのテーマに選んでみました。また、それに先立って実際のプレゼンテーションを見ておこうと思い『TED Talk』の動画(もちろん日本語の字幕で)を見たのですが、新しい発見もいくつかあったので、含めて説明していきたいと思います。
ゴールデンサークル理論とは
ゴールデンサークル理論サークル図
ゴールデンサークル理論とは、マーケティングコンサルタントであるサイモン・シネック(Simon Sinek)が、2009年に『TED Talks』でプレゼンした『優れたリーダーはどうやって行動を促すのか』の中で提唱した理論です。
私はゴールデンサークル理論という言葉と基本的な考え方については知っていましたが、恥ずかしながら、この有名な『TED Talks』のシネック氏のプレゼンテーションは見たことがありませんでした。『TED Talks』なので20分程度の内容なのですが、なるほどWEBサイトなど2次的情報で目にするものより、断然伝わってきますし、構成も素晴らしいプレゼンですね。
まず、見たことがないという方はYoutubeにアップロードされていますので、まず見てから本投稿を読んでもらった方が、理解度が高まる感じがしますし、今回の投稿についても、この動画を中心に進めていきたいと思います。
【サイモン・シネック『優れたリーダーはどうやって行動を促すのか?』~2009年 TED Talkより】
https://www.youtube.com/watch?v=K1jRI1RdkHE
プレゼンテーションはアップル、キング牧師、ライト兄弟はなぜ、成功したのか?という問いかけから始まります。そして、それは資金力、人材、社会環境が整っていたから成功したわけでなく別の大きな要因が関わっており、『私(シネック氏)はその要因を3年前に発見した』と繋げます。この時点でもう既に、シネック氏のゴールデンサークル理論に引き込まれている感じですね。
世の中の成功したリーダーたちは、『Think(思考)』 『Act(行動)』 『Communicate(伝え方)』の全てにおいて普通の人とは正反対であるとし、ここで有名な3つの円(ゴールデンサークル)を描き始めます。
上記の図は、Apple社の製品マーケティングについてシネック氏が説明した事例をわかりやすく模式化したものです。このサークル図を乱雑に描いたあと、シネック氏は『何を売るのか?(WHAT)は誰もが100%わかっているし、どのように売るのか?(HOW)についてもほとんどの人が理解をしている。そして一般的に世の中のマーケティングは、この2点のみで行われているが、なぜやっているのか?(WHY)について触れているマーケティングはほとんどいない』と指摘しています。
つまり、自社がなぜ、その製品を販売するのか?といった目的(Purpose、Cause、Belief)や、組織がなんのために存在しているのか?などは全く語られていない、と言い切っています。
これに対して、優れたリーダーや組織は必ず、なんでやっているのか(WHY)という自社の存在意義から伝えることを実行しており、むしろこのことに集中し、徹底的にアピールすることで、マーケティング活動を有利に働かせているとしています。そして、ここから引用の多いApple社のマーケティング事例を具体的に説明していきます。
まず、前段にてゴールデンサークル理論は、優れたリーダーの論理思考は『WHAT』⇒『HOW』⇒『WHY』ではなく、『WHY』⇒『HOW』⇒『WHAT』の順番で必ず行われるということをシネック氏は説明しています。この部分が骨格ですね。
心理学(psychology)ではなく生物学(Biology)
プレゼンテーションは、ここから『Apple社が一般的な会社だったら』という仮説をおいて、具体的なマーケティングを事例にして説明します。上記、図も参考にしながら読み進めてみて下さい。
1)一般の会社のマーケティング(図中の左側)
『われわれのコンピューターは素晴らしいです』(WHAT:何を売るのか)
↓
『美しいデザインで、使いやすくユーザーフレンドリーです』(HOW:どう売るか/USP)
↓
『どうですか一台買いませんか?』
いうのが一般の会社の例で、WHY(なんのために)は一切存在しません。
ただ、実際はこんなマーケティングがほとんどですね。非常に良くあるマーケティング事例で、モノ余りの時代にこれでは、競合との差別化がしづらく、インパクトに欠け、価格競争に引きずられそうな感じがしてなりません。
2)Appleのマーケティング(図中の右側)
これに対してApple社のマーケティングは、必ず『WHYから始めている』と述べ、具体的にどのようにマーケティングを展開しているのか、について続けて説明していきます。
『我々のすることは全て、世界を変えるという信念で行っています。違う考え方にこそ価値があると信じています。』(WHY:なんのために)
↓
『そして(この信念から生み出されたものは)美しくデザインされ、簡単に使えて親しみやすい製品です。』(HOW:どう売るか/USP)
↓
『こうして素晴らしいコンピューターが出来上がりました。』(WHAT:何を売るのか)』
WHY(なんのために)から始めると、前述の事例と同じ製品、同じ販売方法を取っていても『何だかわからないけど欲しくなりますよね』と伝えています。この『何だかわからないけど』が極めて重要なのです。
それはいったいなぜなんでしょう?シネック氏は人は『何を?』ではなく『なぜ?』に心が動かされる、つまりApple社は 提供する製品でビジネスしているのではなく自分の信念を信じてくれている人とビジネスしていると解説しています。
上記の事例で言えば『世界を変える』『違うものに価値がある』というApple社の信念が、消費者に対して直観的に伝わります。これに心が動かされた消費者は、すでにHOW(どんな風に売られるのか?)やWHAT(どんな商品なのか?)に関係なく購買行動を起こすということになります。これは高級ブランド品を購入する時の購買行動に近いのですが、まさにブランディングや価格競争を回避するマーケティング理論にぴったりと適合します。
シネック氏は更に続けます。『これは心理学ではなく生物学だと』
ここでゴールデンサークルと人間の脳の関係性を説明していきます。上記の図を再度見て欲しいのですが、脳の構造は大きく2つに分けられ、外側にある大脳新皮質は脳の新しい部分で、合理的な分析・思考を行い、言語を司ります。
それに対して、脳の内側の古い部分である大脳辺縁系は感情・信頼・忠誠心を感じ、行動を司ります。つまり行動は大脳辺縁系を刺激しなければ起きず、それを刺激するものは製品情報など言語や思考で説明されるもの(WHATやHOW)ではなく、信念などといった感情や忠誠心に訴えるもの(WHY)ということです。『何だかわからないけど欲しい』が重要ということです。
このゴールデンサークル理論が興味深いのは、この部分にあります。この理論をマーケティング的なプレゼン手法(話術)や人の操縦術として片づけず、脳科学の分野まで繋げ、優れたリーダーは直感、つまり脳の大脳辺縁系に訴えることを行っているために、メッセージを受けた人は、行動に移行するというように生物学(脳科学)的にまとめているのです。
実は、私がこのゴールデンサークル理論を最初に聞いたのは、WEB広告やメールマガジンのライティングセミナーで『売れるライティング広告が書きたければ、WHYから始めなさい』ということで習い、その時はマーケティングのための手法(論理展開)の1つだと思っていました。
繰り返しになりますが、シネック氏はこれを脳科学と結びつけ『人間は直感(大脳辺縁系)によって行動をする』という真意をうまく特定し、理論をより強固なものに結論づけてます。
ゴールデンサークル理論の活用
『優れたリーダーはどうやって人に行動を促すのか?』これが、シネック氏のプレゼンテーションメッセージです。脳科学的には人の直感(大脳辺縁系)に訴えることが、人を行動に促す唯一の手段となり、所詮、大脳新皮質が使われる言語は、その直感を後から理由つけをしているにすぎないわけです。
この理論は私がライティングのセミナーで習ったことや、Apple社の事例のようにマーケティング(商品販売)の場面で大いに役立つ理論ですが、そもそもシネック氏のプレゼンテーションメッセージは『優れたリーダーはどうやって人に行動を促すのか』ですから、マーケティングだけでなく日々の業務マネジメントなどにも応用が可能です。
例えば、部下に指示を与える際に『明日の会議の資料を作成しておいて(WHAT)』ではなく、明日の会議の目的や資料の必要性(WHY)を最初にしっかりと説明してから『資料の作成お願いしますね』とすれば、より質の高い資料が作成されるのではないかと思います。
本質部分をしっかりと感情に訴え、理解(ファンになる)した上で、言語や資料で説明することに日々、心がけていかなければなりませんね。
過去に読んだ本で似たようなテーマのものがありますのでご紹介します。本当はもう1冊あったのですが、全くタイトルが思い出せません。洋書の翻訳だったか、何か論文のようなものだった気がします。こちらは実際に持っている本なのでお勧めしておきますね。
『買う理由は雰囲気が9割 ~最強のインフルエンサーマーケティング~ 福田晃一著 2017年』
さて、まとめになります。この理論は『WHYを人の感情に訴えることによりお互いが共感する』ことの重要性です。これを構築することは、いかなる売り口上や製品性能、また依頼や指示を上回る効果を得れるということになります。まさにマーケティング用語でいうカスタマーエクスペアリアンスと同義とも言えると思います。
優れたリーダーの論理展開に非常に参考になるプレゼンテーションでした。私も以前『理想のリーダー【第67回】』という記事を投稿しています。ちょっと、シネック氏とは見る角度が違いますが、良かったら読んでみて下さい。
さて、いかがでしたでしょうか?今回は、いつものような持論の展開というよりは、サイモン・シネックのTED Talkのプレゼンテーション紹介のようになってしまいました。しかし、今回動画を何回か巻き戻しをしながら見ましたが、シネック氏のTED Talkのプレゼンテーションそのものがゴールデンサークル理論の実証のようですね。
まず理論の出発点、アップル社やキング牧師の話は『WHY(なんで語るのか?)』であり、また、その後のゴールデンサークル図や脳科学との結びつけは『HOW(どうやって理解させるか?)』に当たります。シネック氏のプレゼンテーションは製品やサービスではないので『WHAT(何をプレゼンするのか?)』はまさにゴールデンサークル理論ということになります。
では、今回はこれまでです。また次回、ごきげんよう!
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