営業マンは永久に不滅です!~アフターコロナの営業マン【第99回】

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営業マン営業論

前回投稿した『営業DX』の考察について、少し古臭いテーマかなかと思いましたが、意外や高評価のご反応を頂き感謝です。やはり営業関連の話題はアクセス数が増えるという法則が今回も当てはまった感じです。しかしながら『営業という仕事はこれからどんどん不要になってしまうのですか?』というご意見もありましたので、今回は、そのような不安の声を解消する意味を兼ねて、このタイトルをつけさせて頂きました。(私の出身地である佐倉の偉人・長嶋茂雄氏の有名な言葉を拝借)
ということで、今回もかなり私見にまみれた話になりますが、全国の営業マンを後押しするつもりで解説していきますので是非、今後の参考にしてもらえばと思っています。
冒頭ですが、いろいろ書いてきたこの話題の第一弾『営業マン不要論【第29回】』のリンクを貼っておきます。

営業マン不要論【第29回】
これからの時代、営業マン不要論がかなり現実味を帯びています。特にコロナ禍の中、対面販売が物理的に不可能になり、各企業は対面しないでも可能な販売スタイルを急ピッチで対応してきました。BtoB系製造メーカーも、ZoomやTeamsなどを活用し...

営業マン(営業職)とは

営業マンと言えば法人営業(BtoB営業)

さて、営業マンといってもいろいろな営業スタイルがあります。今回の投稿で言う営業マンですが、私の中の定義ではBtoBビジネス、つまり法人(企業)に対して販売活動をする営業マンをイメージしています。その中には1個1円以下の製品を扱っているようなパーツメーカーもあれば、1台数億円というものを扱っているような工作機械メーカーなどもあります。それこそ、航空機やプラントなどになると数百億円の商品を扱っている会社もあり(実際は商社やリース会社が間に入って取引をするケースも多いですが)製品の価格や販売の仕方も多岐に渡りますが、やはり営業マンと言うと対企業に対して販売活動をしている販売員が一番しっくりきます。
ちなみに、国が規定した職業分類も少し触れておきましょう。総務省が規定している『日本標準職業分類』で確認すると下記のように販売従事者が分類されています。

大分類中分類小分類
D-販売従事者   32-商品販売従事者321 小売店主・店長
322 卸売店主・店長
323 販売店員
324 商品訪問・移動販売従事者
325 再生資源回収・卸売従事者
326 商品仕入外交員
33-販売類似職業従事者 331 不動産仲介・売買人
332 保険代理・仲立人(ブローカー)
333 有価証券売買・仲立人,金融仲立人
334 質屋店主・店員
339 その他の販売類似職業従事者
34-営業職業従事者341 食料品営業職業従事者
342 化学品営業職業従事者
343 医薬品営業職業従事者
344 機械器具営業職業従事者(通信機械器具を除く)
345 通信・システム営業職業従事者
346 金融・保険営業職業従事者
347 不動産営業職業従事者
349 その他の営業職業従事者

販売関連の職種は、まず大分類で『D 販売従事者』に入ります。更に中分類で3つに分かれるのですが、『32 商品販売従事者』は、主に店主や店員といった仕入れた商品を店内で直接販売している小売業販売者を指しています。また『33 販売類似職業従事者』商品の仲介販売をするような販売員のことを指し、店舗にて実際に仕入れた商品を直接販売するのではなく、あくまでも商品の仲介し手数料を得る販売者となります。
ここまでの2分類は、あくまでも店舗にて販売業務をしていることがポイントです。そして最後の『34 営業職業従事者』は、他人を訪問し、商品提案をしながら商品の契約をする販売員のことを指し、いわゆる営業マンというものになります。この分類からすると保険の外交員とか金融商品などの飛び込み営業などもこの分類に入ってきます。これらの営業マン一般顧客(BtoC)がメインなので、私の営業マン定義とはすこしズレますが、保険も金融商品も必ず法人向けの営業部門もあるので、職業分類で見た場合、この『34 営業職業従事者』営業マンとして考えて良いと思います。

営業は減っているのか

この営業マンの数が最近激減していると言われています。また、デジタルマーケティング先進国であるアメリカなどでは訪問型の営業マンは今後10年で不要になるともいわれています。こういった話は2014年に発表されたオックスフォード大学・オズボーン准教授の論文『雇用の未来』からクローズアップされてきたようです。

この『雇用の未来』にはAIによって奪われる職種として1位から700位ぐらいまでが記述されています。その第1位テレマーケティングがあり、また第29位販売員第97位訪問販売員が記されています。97位と言っても10年後に無くなる確率は94%と高く、聞き捨てならない数字です。
では日本において本当に営業マンは減っているのでしょうか?前項の標準職業分類の販売従事者の推移をみると以下の図表の通りです。

販売従事者の推移

このグラフを見ると、確かに減少はしています。しかし2010年から見ると、886万人から昨年2021年で842万人(▲5%)となっており、これを考えると激減しているという印象は感じないですね。
いろいろな資料などで言われている『営業マンが100万人減っている』というものも、2000年ごろの人数と比較しており、それぐらい古いデータから採取すると、そもそも全労働人口そのものが2000年と2020年では10%(6,400万人から5,800万人)少なくなっており『減っている』ことを強調したい悪い切り出しのデータのように感じます。
残念ながら中分類以降のデータは無かったのですが、恐らく店舗の店主や店員といった『商品販売従事者』は相当数減っていると思われますので、逆算すると営業マンの本丸『営業職業従事者』はほとんど変わりがないか、下手をすると増えているのかもしれません。

これからの営業マン(法人営業)像

営業マンを取り巻く環境変化

さて人口動態データから、営業マンはそれほど減っていないことがある程度証明できましたが、確かにBtoB系製造業営業マンが置かれている状況は決して楽な状況ではありません。当時は設備をしたい、製品を購入したい、サービスを受けたいといった成長マーケットにおいて、いかに他社よりも早く、安く、良いものを提供できるかが勝負所でした。しかし、今は営業マンが扱っている製品やサービスを欲しがっていない状況であり、製品の質や特徴だけでは勝負できなくなってきています。
では、どんなところが変わってきているのでしょうか?

①製品やサービス提供方法の変化

上記の通り景気が良い時期に、顧客は基本どのお客様も同じような特徴を持った製品を求めます。成熟されたマーケットでは製品やサービスの求められ方が多様化し、お客様によって全く違った切り口の製品提供が必要となります。
営業マンはよりお客様の課題を洞察する能力が必要となり、またたくさんの製品知識を身につけなければなりません。1件でも多く訪問するといった『ヒラメ筋勝負!』の体育会営業だけでは、なかなか成績が上げられなくなってきているということです。ただ『ヒラメ筋』も絶対にないがしろにしてはいけないのですが。。。

②テクノロジーの変化

ちなみに私がまだ若かったころ、携帯電話はおろかPCもオフィスに数台といった状況でした。営業は電話ボックスからテレフォンカードを買い足しながら電話をしたものです。
現在は営業支援ツールであるSFA/CRMの導入により、いつでもどこでも顧客の情報や販売のためのツールを入手することができます。またSFAを活用して商談の情報を部門全体で共有することもでき、迅速な対策が取れることも大きなメリットです。インサイドセールス部隊としっかりと連携が取れると、メールマガジンやSNSなどからリード(顧客)情報を入手し、訪問することなく商談を獲得することも難しくありません。そういう意味では、これらの営業支援ツールから営業は非常な時間的な効率を得たことになります。結果として、営業マンは移動や事務作業などのわずらわしさから解放されるようになり、営業マンを減らしてインサイドセールスに人員を異動するという会社もでてきています。
過去投稿で、SFA導入後に起きた営業部の違和感について述べている投稿がありますので現在、SFA導入をご検討されている方は是非、併せて読んでみて下さい。(営業の本質【第68回】)

営業の本質【第68回】
さて、営業関連の投稿については過去にもいろいろな切り口で解説をしてきました。BtoB系製造業が事業を展開している市場は、ほとんどが成熟市場での戦いになっています。プロダクトライフサイクルでいえば成熟期から衰退期を迎える段階にいるわけです。...

③顧客の変化

BtoB系製造業営業マンと顧客の関係と言えば、昔はDGL(Dinner・Golf・Lunch)が管理指標になるくらいお客様とのリレーションが重要視されていました。しかし最近は、そういったリレーションが有効に働く中小規模の顧客が少なくなり、非常にビジネスライクの関係が必要となっています。また、創業社長の割合もかなり減っており、入社した時から営業職や経営業が中心で育った2代目社長はあまり自社の設備や製品購入に関わっていないケースも多くなっています。
特に先代と蜜月の関係を構築して販売をしていたようなメーカーが、世代交代時に一気に商売を失ってしまうケースなども少なくありません。人間関係よりも課題解消してくれる具体的かつロジカルな提案が受け入れられるようになってきています。これは①で説明した製品やサービスの売り方の変化にも通じるところです。
また日本特有の代理店販売制度も同じように崩壊してきています。製品数が多く、単価が安価な製品などは地域、地域の販売代理店が顧客とのリレーション構築に一役買っていましたが、WEBなどで情報が大量に入手できるようになると、このようなサプライチェーンが崩壊し、メーカーが直接情報を届けなければいけなくなってきています。この結果代理店としての営業マンの役割が大きく減少している可能性があります。

◆アフターコロナを戦う営業マン

さて、このように変化の多いマーケット環境の中で営業マン自体はどのように変わっていけば良いのでしょうか?前回の投稿『販売部門のDX~ソリューションによる営業変革【第98回】』では、主に営業組織としての変革をキーワードにしていました。今回はより営業マン個人に向けて発信したいと思います。前回投稿もリンクを貼っておきますので、良かったら読んでみて下さい。

販売部門のDX~ソリューションによる営業変革【第98回】
さて、今回は久しぶりに営業関連をテーマにしたいと思います。なんといっても営業関連の投稿は毎回閲覧数が伸びます。今から5年ぐらい前は営業のDXをテーマにしたセミナーがたくさん開催されていましたね。CRMやSFA、またMAツールと呼ばれる営業...

1.リレーション構築は更に重要

前項で『以前のように会食やゴルフといった接待では戦えない時代です(DGL戦略)』といった記述をしましたが、お客様とリレーションを構築することについては、このデジタル化した時代においても最も重要なことだと考えています。むしろ重要性が高まっていると考えます。
特にコロナ禍の中、直接面会が難しくなってくると、人と人の関係が希薄になり、ともすればeメールに書かれた価格だけで決まってしまうこともあるかもしれません。リレーション構築の最大の目的は『ファーストコール』『ラストコール』カンパニーになれるかどうかです。
『ファーストコール』とは、お客様に何か課題が出た時に、最初に相談される会社(営業マン)になっているかということであり、また『ラストコール』とはお客様が何か意思決定する時に最後に問い合わせがくる会社(営業マン)になっているか、ということです。
このような存在になるためには顧客のリレーション構築が必要不可欠であり、営業マンはその顧客のあらゆる部門(アカウント)と面接触をしていくこととなります。
この過程は営業マンの個人差が最も出てくるところですし、営業マンの醍醐味です。ある意味、営業マンは『自分を売り込んでいる商売』ともとれる職種です。会食を上手く使う人、趣味の話を活かす人、誰にも負けない技術知識を持つ人など、自分の得意な分野を活かしてリレーションを構築し『ファーストコール』『ラストコール』としての立ち位置を確保できれば、これはいつの時代も最も強い武器となるでしょう。
良く若い営業マンから『今日、○○社長に昼食をご馳走になって。。。』という報告を聞きます。これはリレーションの大事な一歩ですが、リレーションのはかり方は、食事に誘われることではなく、誘えることです。『食事に誘う』ってかなり親しくなければできないですし『断れる関係の人からの誘いで食事をしたい』と思うことは一緒にいたいという現れです。親しくない人と無理にまで食事したくないですからね。
アポイントを入れた時『今、コロナも増えてきているし、また落ち着いてからにしよう』なんて言われていないですか?競合の営業マンは普通にアポイントが取れているかもしれませんよ。

さて、リレーション構築で課題になるのが属人化です。営業マンはしばしば、この顧客リレーションを自分のものにしがちです。やっかいなのは優秀な営業マンほどこの傾向に陥るからです。
この営業マン暗黙知形式知化するのがDXの役割です。CRMを使ってお客様の代表者やキーマン、窓口担当の名前から趣味、性格などをデータベース化していくことです。またSFAを活用すれば、日々の営業活動や、商談の進め方などを共有することも可能です。このように営業マン、特に優秀な営業マンの暗黙知を営業支援ツールで見える化していくことでリレーションの財産をある程度引き継いでいくことができます。
また、このような営業マンを中心にして自分の行動(商談)パターンマニュアル化していくことも有効です。こういった優秀な営業マンは聞かれれば、進んでノウハウをオープンにしてくれるものです。
但し、この顧客リレーションCRMSFAといった営業支援システムだけではなかなか引き継ぐことができません。前任者が個人と個人でなく、会社と会社を結びつける意識をもって、次の担当者にも最大限の支援をしながら、構築したリレーションを引き継がせていく作業が一番大事なことになります。

2.DXは時間の有効活用を意識

営業マンの仕事というのは、販売活動以外にもたくさんあります。前項のリレーション作りなども地道な業務の一つですし、納品した製品のクレーム、社内業務(受注処理、製造指示など)、冠婚葬祭対応など探せばいくらでも出てきます。それだけに忙しいと仕事をしているという錯覚に陥るのです。
『いやー、今週は忙しかったなぁ』と感じて、週末やったことを反芻すると、ほとんどがお客様と仕入業者を行ったり来たりしてクレームを処理してたなんてこともしばしばです。実際に他にやってくれる人がいなければ営業マンがやるしかないので始末に負えません。
営業マン販売活動に最大限時間が割けるようにしなければならないのです。以前、私の会社で営業マンの行動分析をしたことがあります。営業マンの行動を5分単位で1週間記録をして、どんな作業が多いのか、阻害要因は何なのかを分析しました。もちろん実施する前は事務処理が多いという結果を期待して行ったのですが、ふたを開けてみると移動(客先駐車場での調整含む)が41%だったという驚きの事実が出ました。まぁ、ある程度多いことは予測はしていましたが、1日の40%は移動していただけと考えると内勤者に申し訳ない気持ちになりましたね。ちなみに交通費の清算や日報の入力などといった事務処理時間はわずか9%ほどで、人間の感覚などいい加減だということも良くわかった事例です。
この販売活動、特に顧客とのコンタクト時間最大限高めるためにDXが極めて有効な手段となります。まずは移動時間の削減で言えば、TeamsZoomを活用したリモート会議です。また最近では営業マンの訪問だけでなく技術説明やデモンストレーションといったこともリモート会議を通じて行うことも増えてきています。通信環境さえ整っていれば、それぞれのメンバーが移動や出張することなく効果的にお客様に対応することができ、1日のあいだで沖縄と北海道、両方のお客様対応をすることも可能となります。
また製品説明用の販促資料、特に最近では販促用動画などはSFAデータベースからストリーミングして活用することで、遅くまで自分で資料を作成し人数分コピーしたり、わざわざ重い資料を持って歩くことからも解放されるようになります。
コロナ禍への対応もあり、事務処理関連もほとんどがリモート環境でできるようになったことも大きいですね。交通費精算、就労申請なども全て出先や自宅で可能となり、営業マンもほぼ直行直帰で対応できるようになっています。心配なのは組織内のコミュニケーションですが、朝礼・終礼をTeamsで行ったり、SFAを使って商談のアドバイスやフォローをすることもできますし、これらの営業支援ツールは積極的に取り入れ、有効に活用できるように組織ぐるみで対応していくことが必要です。販売部門の場合、DX営業の有効時間を最大化するためにのみ使うように心がけすることが良いと思います。

3.営業支援ツールは営業マンが活用できるものに限定

営業支援ツールは非常に便利なツールです。しかし、現在はそのほとんどがクラウド型となっており、一人(1アカウント)に対して毎月使用料がかかります。クラウド型の良さはワンソースマルチユースであり、全員が同じ情報を共有できることなのですが、全員がアカウントを持つとそれなりのコストが発生します。また、自社の都合に合わせてカスタマイズをしていくと、システムの改築や権限設定などで更に追加のコストが掛かっていきます。
これらの営業支援ツールを導入する時の判断基準は大きく2つです。
①なるべくオリジナルのパッケージで導入する
②最前線の営業マンが便利になることを考える

①は非常によくあるパターンです。せっかく新しいシステムを導入したにも関わらず、従来の管理方法に固執し、ワークフローから出力フォームまで、従来と全く同じ形にしてしまうことです。これでは手書きのものをなくしただけでプロセスは全く変わりません。ツールベンダーが提供するシステムは最も最適化されたものと理解するべきです。この形の導入では営業マンは一つも楽になりません。字が汚い営業マンが喜ぶくらいですね。(笑)
②も良くありがちなパターンです。SFAの運用などは、まず担当営業マンが、そして次第にマネージャーが活用しはじめます。マネージャークラスがツールの良さを理解することは良いのですが、マネージャーは数値の集計や管理をシステム管理者要求するようになります。売上の集計や達成率、訪問頻度や有効訪問率などです。これらの数字が見える化することは重要ですが、それらの数値を営業マンの管理したり評価するためではなく、営業マン自体が日々の行動のKPIとして使うようにしないといけません。本来、SFAは担当営業マンが自分の商談を管理し、その確度を高め、成約に結びつけるまでのツールです。上司が数値を管理し、見張るようなツールにしては営業マンのモチベーションが落ちるだけになってしまいます。

さて、今回はいかがでしたでしょうか?最後は得意の営業マン理論となり、あっという間に書き上げてしまいました。その分ほとんどが私見を中心としたものになっていますので、読み物として楽しんで頂けたらと思っています。投稿の中でも一貫として触れてきた通り、営業マンが不要になったり、いなくなったりすることはまずありえません。
私の投稿でしつこいぐらい『営業マンは誇り高き職種である』と言っているように、営業マンの存在は、これからの時代も重要で、むしろこれからの時代の方がより重要かつ、得難い人財になってくると思います。従来のリレーション構築型のスタイル最新のビジネスツールを上手く組み合わせて、お客様にソリューションを提供できるコンサルタント型の営業マン次世代営業マンとなるでしょう。このような人財は会社の中でより重要な存在となり、欠かすことができない職種となることは間違いありません。営業マンのみなさんも、少しは安心して頂けたでしょうか?
今回はこれまでです。また次回、ごきげんよう!

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