強い組織~グレイナーの5段階企業成長モデル【第79回】

ピラミッドビジネス一般

係長でも課長でも自分の部下を持ったら良い組織、良いチームを作りたいとリーダーは思うはずです。私もいろいろな業務、人数の組織リーダーを経験しましたが、この『強い組織』を構築することは、終りなきテーマのような気がしています。(もちろん今も日々、最重要検討項目です)
スポーツチームであれば勝負に勝ち、優勝するようなチームが『強いチーム』であり、効果的な練習をして個々のレベルを高め、チームワークを醸造し、誰にも負けない精神力を育成するなどが対策になります。
企業の場合、組織の規模や継続年数、マーケットでの立ち位置や実際に提供する製品など、基礎的な条件がまちまちで、その企業や組織が置かれた状況によって対策が変わってきます。今回はグレイナーの5段階企業成長モデルをひも解き、実際に『強い組織』を作っていくためには、何に重点をおけば良いのかについて説明致します。

グレイナーの5段階企業成長モデルの考察

グレイナーの5段階企業成長モデルとは

『5段階企業成長モデル』とは、ラリー・E・グレイナーが1979年にハーバードビジネスレビューに発表した論文『企業成長の”フシ”をどう乗り切るか』に記載されている企業の発展の典型的なモデルを表したものです。
結構古いものですが、その後いろいろな人が引用していろいろな使われ方がしていますが、今でも普通に理解できるモデルです。

グレイナーの5段階企業成長理論

企業が事業規模を拡大していく中で成長するための条件と、成長していく中で生じる乗り越えなくてはならない組織課題(危機)について上記のような図で表現しています。
私の会社は100年企業なので、入社した時は既にある程度の規模の会社でしたが、やはり一部上場して2年目、社名を変更して1年目だったこともあり、社内ではいろいろな軋轢が発生していました。外部から役員や部長クラスが入社し、会社も上場企業として内部統制が厳しくなったので、古参の部長、課長などが部下を引き連れて競合や関連企業に転職するようなことも目の前で見てきました。

第一段階~創造性による成長【3人~50人規模】

企業の創業当初の段階です。こういった時期は起業した経営者が全てのビジネススキームを考え、マーケティングを行い、投資の意思決定をする。また部下は経営者の思いに集った最適なメンバーが組織全体で補完しあいながら事業を進めていくことになります。
この時点で経営者(リーダー)に強いカリスマ性卓越した技術や発想力があると、従う社員も強い社員となり成長の下地ができます。まさに創造性による成長です。
軌道にのった企業は徐々に事業が拡大します。投資も増え、内部組織も分業が必要になります。
一般的に10人を超えると全てのことを一人が行うことは難しくなるのですが、それに加えて新しい社員を採用していかなければ拡大のスピードについていけなくなります。
これらの社員は、創業期のメンバーとは思い入れもやや希薄な社員が入社してくるので経営者(リーダー)のカリスマ性だけでは企業の成長を維持できません。そのため企業内にしっかりとした組織を構築する必要が出てきます。これが『リーダーシップの危機(限界)』という最初の危機になります。

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第二段階~指揮による成長【50人~100人規模】

社内に組織がしっかりと作られると会社が機能的に動き出します。製造は商品をつくる仕事、営業は商品を販売する仕事、経理は売ったり買ったりしたものの払い出しと回収をする仕事などです。
経営者は全体を俯瞰し、最も効率よく経営資源をコントロールすることになります。これが指揮による成長です
この時点で経営者はリーダーシップと同時にマネジメント能力が問われます。
良くある話ですが、技術に明るく職人的なカリスマ経営者が、コスト度外視の製品に注力して会社を破産させたなど、この段階になるとリーダーシップ特殊技能だけでは乗り切れないのです。
経営者に指揮されている組織の長はその分野においては経営者よりも知見のあるメンバーが選出されている場合が多く(でなければダメだと思うのですが。。)、それぞれで組織を拡大し始めます。販売数が増えれば製造部門にも営業部門にも設備や人を投入しなければならないということです。
経営者は、それぞれの長に的確に指揮を与えていかなければならないのですが、知見が上回る組織の長と方針について衝突したり、場合によっては離脱されてしまったりします。
こうなると、経営者は全体をコントロールことも難しくなってきます。これが『指揮の危機(限界)』です。
この段階で最も怖いのは強い組織の長が、自部門の最適のためだけにバラバラに活動をし始めてしまうことです。営業が売上を上げるために原価を考えず安売りに走ったり、開発が興味本位から売れる見込みのない製品に多大な投資をしたりすることです。
これを抑えるために経営者(リーダー)は経営理念ビジョンをしっかりと企業内に浸透させておくことも重要です。

第三段階~委譲による成長(100人~300人)

社員が100人を超えてくると、組織の数も多岐にわたってきます。こうなると経営者の指揮だけではスピード的にも業務の進め方的にも制御できなくなるほど複雑になります。そこで経営者は任せられる組織の長に権限を委譲し、それぞれの組織が独立するような事業経営が求められます。
これが委譲による成長です。この規模になると社員もいろいろなタイプの人が採用され、優秀な社員もあれば、まったく働かない社員(あまり悪ければ採用されないだろうが。。)も出てきます。そこで経営者は権限を委譲する代わりに成果主義を展開します。
権限を委譲されたそれぞれの組織が、しっかりと収益を出し、独立採算の組織運営を求められるようになると、優秀な人の取合いや、部分最適の投資などを、全社的には極めて非効率なことが行われます。特にカンパニー制事業部制を引いた場合は、それぞれの事業収益を正確に知るためには適していますが、組織構造も重複化(人事や業務、販売などの部門がそれぞれの事業所分散される)し、前述の人の問題や投資の面においても無駄が多くなります。
これが『コントロールの危機(限界)』になります。
グレイナーの成長モデルでは、この第三段階を300人規模の会社としていますが、1000人規模の会社でも、この第三段階から、この後の第四段階辺りの企業モデルが多いのではないかと思います。
恐らく、このブログのメイン読者であるBtoB系製造業の方々の会社も、このあたりの変革が悩みで苦しんでいるのではないでしょうか?(私の会社も2000人近く社員がいますが、この第三段階と第四段階の中間的なイメージですね)

第四段階~調整による成長/第五段階~協働による成長(300人~)

それぞれが別々の会社のように事業を展開すると、前項の通り非効率なことがさまざま発生します。そこで横断的な組織が各事業部にまたがるように関わることで全体調整(全体最適)を試みます。
これが調整による成長ですが、管理部門をホールディング会社にしたり、マーケティングチームを横断的にして全体最適技術的なシナジーを生み出す組織モデルです。自動車メーカーのように、販売部門だけを子会社化(更に分社化)するものこの段階の組織モデルですね。
このような横断的な組織を置くことで各事業部が一か所で繋がり、企業全体としての経営理念や、マーケティングの方針など、ブランドを決定するようなコアな部分は共通化していくことができます。
この段階での問題は組織が官僚化するという問題です。既に社員レベルでは事業部の理念や収益は関係なく、分業化された自己の目標達成だけが働く目的になります。これをグレイナーは『形式主義の危機』と呼んでいます。
更にこの後、第五段階もあるのですが、これは組織成長モデルというより、肥大化した組織を何の力で統制していくのかの理論であり、最後は人同士の協働の意識で、それぞれの事業部間統制をとっていくというものになります。

さて、かなり紙面を取ってグレイナーの企業成長モデルについて説明してしまいましたが、今回のテーマである『強い組織』においても特に第一段階から第四段階までが組織成長モデルにも適応できるのではないでしょうか?
最初はカリスマ的なリーダーが引っ張り、徐々に組織化し、優秀な部下がそれぞれの組織管理者になり、最後は独立採算部門になるという形です。その中でいろいろな危機を乗り越えていかなければならないのですが、企業経営同様重要なのは、組織を結びつけるビジョンを明確に置くことだと思います。
それだけ組織化し、分業化しても組織のビジョンは明確に定めて組織メンバー全員が共有することで、『コントロールの危機』『形式主義の危機』などは乗り越えていけるのではないでしょうか?

やっぱりアメリカは組織編制から入ることを感じさせてくれる書籍を紹介しておきます。読んだ当時、特に後半は日本では役に立たないと止めてしまった本ですが、大きな組織を受け持つようになって再度、読み直した書籍です。『アクセル デジタル時代の営業 最強の教科書~マーク・ロベルジュ 著、神田昌典 監修【2017年】

強いチームを作るためには

『自分が考えていることを組織みんなで共有して一丸となって業務にあたれたらなぁ』なんて考えている管理者も多いと思います。
しかし、本人もそうであったとおり、人は簡単に意識を変えられないものです。ましてや待遇や役職などに違いがある訳ですから素直に聞くことすら難しい場合があります。

前項で長々と述べた通り、組織は大きくなればなるほど、それぞれが自分の都合で勝手に動きます。
私の会社の事例ですが、毎月月末に残業しながら1週間ぐらいかけて資料をまとめている社員がいました。いろいろな部署に『この資料出して』、『もっと早く出せないの』と殺気立って仕事をしていたある日、『毎月ごくろうさま、この資料は何に使ってるの?』って聞いたところ、『私は毎月作って指定のホルダに入れているだけなのでわかりません』との返答。そこで部門長に『何に使ってるの?』と聞いたところ『私が着任する前からやっていたのでわかりません』とのこと。。。

この担当も担当ですが、部門長も大きな問題です。結局調べたところ、誰も、何にも使っていないことが判明しました。挙句の果てには、この社員の査定が良いのにも呆れました。確かに一生懸命仕事はしてますし。
これは極端な例ですが、実際にこれに近いことはたくさん行われています。目標管理(MBO)を全社員に展開している私の会社ですらこんな状況ですから。

目標達成と進め方のプロセス【第69回】
春先に目標設定の仕方について投稿(『実効性のある目標設定【第54回】』)させて頂きました。目標設定でよく使われるMBO(Management by Objectives)を軸に、目標の設定方法のSMART、また目標を設定する時のNGワード...

この組織膠着の状況を打破するためには『強い組織』を作ることなのですが、大きくなっても強い組織を維持する秘訣は何でしょうか?これは

組織のビジョンの明確化と共有

です。何かあった時に自分の行動指針になるビジョンリーダーが作り、これをしつこくメンバーに伝え共有することこそ、『強い組織』を生み出す原動力になります。
これは並大抵のことではできません。特に50人以上の組織になると、強引にやれば昨今、ハラスメントとなったり、また精神的な病気や場合によっては退職に追い込んでしまいます。
また柔らかく接していたら、それこそ甘く見られ、ビジョンはおろか日頃の業務ですら徹底できなくなってしまいます。

これはは残念ながらリーダーの号令だけでは限界があります。よりシステム的にやるしかないのですが、しっかりとビジョンを理解させるために人の意識を動かすチャンスってどんな場面が考えられるでしょう?
ちょっと長くなってしまったので、詳細は次回投稿しようと思っていますが、私は下記4つだと考えています。これらをシステム的に行うことで、間違いなく組織全体の意識を変えることができると考えています。

【部下の意識に訴えられる4接点】
(1)面談・同行~1対1の接点
(2)会議~1対数人の接点
(3)研修~1対多数の接点
(4)朝礼~1対全員の接点

さて、今回はいかがでしたでしょうか?『強い組織』を作りたいという思いは職制全員が考えている気持ちです。しかし小さなチームではリーダーシップを発揮して『強い組織』がつくれた社員が、ちょっと大きな組織の長になると、とたん結果が残せなくなったりします。これは成長の壁のどれかににぶつかっているわけです。
まず、組織の長になったらビジョンを明確に打ち出し、それを根気強く組織で共有できるように意識の訴えかけていくことです。次回はこの意識の訴えかける4接点について、詳しく説明したいと思います。
では、また次回、ごきげんよう!

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