強い組織の作るために~ビジョンとミッション【第82回】

強い人組織論

先日、管理職になったばかりの後輩から『マネージャーにはなったものの、相変わらず仕事のやり方は今までの焼き増しで、このままじゃダメだと思うのだが、自分の色強い組織の作り方、何から教育したら良いのかわからない』との質問を受けました。
正直、私も『見て覚えろ派』だったので、この組織内のシステム的な教育が下手で、試行錯誤を繰り返していました。今も進行形ですが、この時したアドバイスの内容から、組織の意識統一には欠かせないビジョンミッションの話を説明したいと思います。

強い組織を率いるために

ビジョンとミッション

組織のリーダーになったら自分の理想のチームを作りたいと思いますよね。しかし、軍隊のように力で締めつけるようなことは現代社会では不可能です。ましてや先輩社員などがいた場合、なかなか新しいことをするのに遠慮してしまうものです。
5人ぐらいの組織であれば、日々の業務の中で、少しづつ自分の理想を組織の中に意識させていくことは可能ですが、10人以上だったり、更に階層組織がある場合などは限界があります。
また、このスピードの時代にこのようなやり方をしていたら成果が上がるまでに半年以上の時間がかかりますし、違う組織に行くたびに組織の作り方が変わってしまいます。
やはり短期間で、どんな組織でもある程度同じやり方で自分のチームを作れるようにならなければなりません。そんな時に重要なのは組織のメンバーが同じ方向を見ることができる指針が必要です。
私はこの指標はミッションビジョンであると考え、組織を担ったら、なるべく早い段階で組織全体に伝えていくことが重要だと考えます。

企業の中にはいろいろな方針や指針を表す言葉があります。経営理念ビジョンミッションバリューなどです。これらは会社によってさまざまな使われ方をしているので、1つの定義をつけることは非常に難しいですが、一般論として図式化すると下記のようなイメージです。

ビジョンとミッション

経営理念は、その名の通り企業のフィロソフィーであり、存在意義使命社員の行動指針向かうべき方向など企業が存在する全てを包括した社会へのメッセージです。そのため、経営理念=ビジョン+ミッション+バリューという企業もたくさん存在します。
バリュー社内向けのメッセージです。社員の行動方針大事にしなければいけない価値観を表したもので主に社員の規範を示したものになります。そのような性格を持ったものですから、一度決めたものは大きな事業変化が無い限りは不変で、組織内で展開する時も経営理念自社のバリューに概ね則ったものになります。
ミッション社外(社会)向けのメッセージです。自社が社会の中どのように存在するのか何を実現するのかを表します。ドラッカーはこのミッションを考え抜き、定義することがリーダーの最初の仕事であると述べています。
これも組織内で展開する時は自社のミッションズレの無いものに定義しなければなりませんが、組織内でミッションを定義する時は共有しやすいようにその組織内で誰もがわかりやすい言葉に置き換えて表現するべきです。また、このミッションも長期間不変なものであることが原則です。
ビジョンミッションと綿密な関係になります。ミッションが社会の中で『どのようなに存在になるのか?』といったものを定義していましたが、ビジョンはそのミッションが果たされた結果『どのような姿になっているのか?』を表したものになります。

本項目についてはちょっと前の投稿『強い組織の作り方~意識改革の4接点【第80回】』にも記載していますので良かったら併せて読んでみて下さい。

強い組織を作るために~意識改革の4接点【第80回】
前回に引き続き、『強い組織』をテーマに、組織のリーダーはどういったところに心掛ければ『強い組織』を実現できるのか?について深めていきたいと思います。前回、説明をしたグレイナーの企業成長の5つのモデルの第一段階のように、組織が小さいうちは力...

ミッション【使命】

組織のリーダーになった時、このビジョンミッションを決めなければなりませんが、どちらが先と言う問いに対して、私はまだ明確な返答ができていません。
一般的にはミッションが先だと考えられています。ドラッカーもそのように説明していますし、まず企業が社会の中で『どのような存在』であるのかを定義した上で、その結果『どのような姿』になるのか?とした方がロジック的にもスムーズです。
但し、企業として掲げる場合は、これで良いのでしょうが、小さな会社組織の場合は社会と言われても大上段すぎてイメージがしにくいですね。
組織などの場合は、まずビジョン『なりたい姿』を示し、その『なりたい姿』になるためには、社会(業界)の中で『どのような存在でいるべき』なのかとミッションを考えていく方がスムーズで実効性のあるものになります。
いろいろな本やネットを調べましたが、本当に正解がなく両方が連携しながら決まっていくような気がしています。

今回は便宜上、ミッションから説明します。ミッションは前述の通り『どのような存在でいるべきなのか』というものです。そのため大手企業はやはり事業も多方面に拡大していますし、一行で伝えるのは難しいようで結構長文になっています。
またミッション社会の中における自社の存在意義であり、経営理念重なっている会社も多いです。いくつかミッションを明確にしている日本の有力企業のミッションを掲載しておきます。
ちなみに、われわれがCMで良く聞くセンテンス、例えば三菱電機『Change for the better』や日立製作所の『Inspire the NEXT』、Cannonの『Make it Possible』などは経営理念ミッションバリュービジョン包括的にまとめたスローガンです。

□ミッションの事例
トヨタ自動車『わたしたちは幸せを量産する』
富士通『私たちはイノベーションによって社会に信頼をもたらし世界をより持続可能にしていきます』
日本通運『社会発展の原動力であること』
東京電力『安心や快適な暮らしのためにエネルギーの未来を切り拓く』
三井物産『世界中の未来をつくる』
第一三共『世界中の人々の健康で豊かな生活に貢献する』

ちょっと大企業だと壮大な内容が多く、ちょっと組織レベルのミッションを考える時の参考にならなかったですかね?
組織レベルでこのミッションを考える際に大事なことが3点あります。

(1)自分の存在するマーケットの要求に合致したものになっているか?
(2)自社の強みや技術力が活かせるものになっているか?
(3)そしくメンバーがすぐに理解でき、明確なものになっているか?

ミッションを作ることに没頭すると、とかく(1)と(2)が疎かになり、なんとなくゴロの良さとか、雰囲気で決めてしまうことが多いのですが、ミッションは一度作成したら、かなり長期間降ろせない組織の看板です。
(1)のマーケットの将来像をしっかりと分析して、向かうべき方向を示しているのか、また(2)の自分たちの得意とするものが組み込まれているのかを、しっかりと置いた上で、(3)強いメッセージ性のある言葉選びの順番で考えてみて下さい。
また、後述するビジョンとはセットです。考える時間は人それぞれですが、回数は何べんも見直しをするべきです。私の経験からは一度考えて終わりにし、また再度考えてということを5回以上は繰り返した方が、より的確なミッションビジョンが作れると思います。

ビジョン

ビジョンは数多くの企業が明確に示しています。ビジョンミッション忠実に実行した結果『なりたい姿』であり、ミッションより明確に、またわかりやすく作成します。

ビジョン『なりたい姿』、つまり事業計画ではGOALであり、組織リーダーの思いが大いに詰まったものになります。ビジョンからミッションへ落とし込んでいく人もいますが、スポーツチームなどGOALが明確なほど、その形になり傾向があります。
組織の場合、なりたい姿(ビジョン)も、市場での立ち位置・存在意義(ミッション)もより近いところにありますので、『課題解決のコンサルタントとなり(ミッション)全ての顧客の経営が5%以上の営業利益が上げられるようにする(ビジョン)』とか『ガン治療のスペシャリストになり(ミッション)ガン患者の死亡率が5%以下の健康な社会をつくる(ビジョン)』のように結びつきます。
上記を見てもおわかりのとおりビジョンGOALですから、組織がつくるビジョンの場合は少し具体的なもの(数値が入ったもの)が好ましいと思います。

さて、明確なビジョンミッションができたら、いよいよ組織に展開をしなければなりません。20人ほどの組織であれば全員を集めて、自部門が置かれている環境分析から現状とあるべき姿を描き、よりロジカルにビジョンミッション定義した理由を説明する必要があります。
良く『2-6-2の法則』ということが言われます。仮に20人でも、リーダーの言葉に1回で共感するのはせいぜい2割、つまり4人ぐらいです。これはいくら立派なミッションビジョンを作ってもそれほど変わることはないでしょう。
しかしこの2割が重要なのです共感したメンバービジョンに向かって進んでいると、それに感化された6割の中の一部が反応し始めるのです。この反応までどれだけ粘り強く展開できるかがリーダーの差になってきます。
100人を超えるような大きな組織の場合は、逆に選抜した20人にまず、しっかりと共感させることです。すると残った60人の中から徐々に参画する人が出てきます。

2-6-6の法則とは一般的にグループは優秀な人2割平凡な人6割ダメな人2割に分かれるという法則。パレートの法則(上位2割が全体の8割の効果を生み出す)から派生した法則と言われるている。良くアリが例に出され、アリをある箱に入れておくと、働くアリが2割、普通のアリが6割、働かないアリが2割に別れる。この中から働かないアリ2割を取り除くと、普通のアリの中から2割分働かないアリが出てくるという実験が有名。

尚、ビジョンミッションを展開する時だけではありませんが、何か方針を組織の中に埋め込んでいく時の意識変化は共感⇒共有⇒行動⇒定着(習慣化)です。

(1)共感⇒共有・・・内容について追体験させる、合点させ、同じ土俵で会話ができる
(2)行動・・・共有情報を元に計画を立てて具体的な行動ができる(確認のための指示と承認が必要)
(3)定着(習慣)・・・リーダーと同じ考え方ができ、指示無しで進められ、人にも教えられる

上記にもリンクを貼りました過去の投稿『強い組織の作り方~意識改革の4接点【第80回】』に部下に意識を変えさせる4つの接点(3つの手法)を詳しく書いていますので良かったら読んでみて下さい。

強い組織を作るために~意識改革の4接点【第80回】
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さて、今回はいかがでしたでしょうか?年功序列や護送船団方式などといった昭和時代の企業のあり方が薄れてきて久しいですが、今後、働き方改革への対策や同一労働同一賃金など、企業と社員の関係が変わってきています。それでも成果を上げる強い組織には明確なリーダーシップがあり、それを固めているのは強いミッションビジョンの定義組織内の共有です。
新しい組織リーダーになったら、まずこの2つを組織内に示し、意識共有できるように心掛けてみて下さい。では、今回はここまでです。また、次回、ごきげんよう!

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