ミスを無くせ!~ミス発生のメカニズムと対策【第76回】

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ペケビジネス一般

毎日の業務の中でミスは無数に存在します。小さな計算ミスから、お客様にお詫びに行かなければならないような大きなミスまで実にさまざまです。しかしよく見ていると、いつもミスをする人と、あまりミスをしない(顕在化しない)人がいます。この違いは何なんでしょう?
今回は業務の中で、しばしば問題となるミスの発生メカニズムと、その対策について考察していこうと思います。かくいう私も、日々ミスの連続で、ミスの数がそのまま経験に繋がったような人間なので自分の実体験を元に反面教師的に書いていきたいと思います。

ミス発生のメカニズム

ミスを起こしやすい人の特徴

前述したとおり、ミスを起こさない人はいません。むしろミスを起こすから人間だということも言えるでしょう。しかし、私も数多くの人と働いてミスが顕在化しやすい人同じミスを繰り返す人にはある程度特徴があると思っています。

①ミスをミスと感じない(反省しない)
この手の人は残念ながらミスが無くなることはないグループです。良く『4つのじんざい』といいますが。この手の人は会社組織の中では人罪です。さすがに打ち手がありません。

②反省だけをする
ミスをして上司に叱られると、しゅんとなってえらく反省する(落ち込む)人がいます。『そんなに落ち込まれると全体に影響するなぁ』なんて人、みなさんの近くにもいませんか?
ところが、この反省しすぎる人は、意外とまたすぐミスを起こします。なぜでしょう?
これは私の経験からですが、このグループの人たちはミスをして非常に落ち込むのですが、その対策を何もしていない人が多い感じがします。自分の起こしたミスに対して『次はどうしてこのミスを無くすのか』といった対策を考えないので、同じミスを繰り返すような気がしています。

③叱られたことだけを直す
このパターンは多いですね。まさに対処療法ですね。『なんでメモを取らなかった!』と指摘されるとメモを取ることだけは修正する人です。
本来はメモを取らなかったことがミスの全てだったわけではないと思います。例えば『メモを取らなかったことで発注量がうる覚えになり、確認する人もいなかったので、自分の判断で前月と同じ数量を発注した』というのがミスの内容だったとすれば、メモを取るのは、確かに対策の一つですが、メモを取ったからといって、この発注ミスが防げたとは限りません。
こういう人はメモを取るようになっても、次はメモを読み間違えたり、違う発注先に発注をかけてしまったりするものです。ミスの本質に対して対策を考えていないのです。

ミスはなぜ起こるのか?

人間の情報処理プロセスとヒューマンエラー

上記は、人間がある情報に接し、それを処理するまでのプロセスをフロー(『人間の情報処理プロセス』)にしたものです。コップに入ったアイスコーヒーをストローで飲むという簡単な動作でも、人間の脳はこれだけの工程を瞬時に行うわけです。
私は脳科学などには疎いので受け売りの話になりますが、人間の脳はシングルタスク、つまり基本1つの作業しかできないそうです。いろいろなことを一緒にやっているように見えても、それは高速で2つ、あるいは3つの演算を切り替えて処理しているので、複数のことを同時に実行することには、あまり向いていないようです。(むしろマルチタスクは脳に悪影響というレポートもあります)
日常業務は、まさにやることの連続ですから脳が混乱してミスが発生するのはむしろ当たり前と考えてもいいのでしょう。
では次はミスが発生するメカニズムと一般的な対策を上記プロセスに従ってひも解いてみましょう。

①入力(インプット)ミス
情報に最初に触れる瞬間です。五感、特に視覚(見る、見せられる)聴覚(聞く、聞かされる)が大きいですね。機械を操作するオペレータや修理技術者などになると触覚(触る)や、場合によっては嗅覚(嗅ぐ)なども重要になってきます。
入力でのミスは知識や経験、理解などが不足していることが原因で発生し、経験とともに減ってくるミスです。入力ミスは事象の共有事例教育である程度減らしていくことが可能です。

・見落としによるミス ⇒指差し確認、メモをとる
・見間違いによるミス ⇒写真、動画で残す、2人以上で確認する
・聞き間違いによるミス ⇒口頭ではなく指示書で伝える、復唱する
・その他確認不足、間違いによるミス ⇒過去事例や経験値の共有、マニュアル化をする

②媒介(情報処理)ミス
入力された情報を処理する過程でのミスですね。この媒介(情報処理)ミスは、個人でいえば『こう思っていたのだが、実は違った』などという思い込みミスが代表例ですが、そもそも処理する仕組みがおかしい共有している知識情報に誤りがあるといったプロセスの問題によるミスも考えられます。
このプロセスでは、情報が正しく処理・判断されないことによって起こるので、常に正しい判断ができるシステム化判断基準をまとめた基準書の作成などが重要になります。

・マニュアルや基準書を作成し、作業基準を統一する
・作業手順を簡略化し、ミスのポイントを減らす
・異なる人間によるダブルチェックを実行する

③出力(アウトプット)ミス
最後は出力(アウトプット)ミスです。実際に処理を行った段階で発生するミスで、プロセスの最下流で発生するため、被害も最も大きくなることが多いです。
実行手順のミス(作業の間違い、忘れ、手抜きなど)で本来は正しく行われなければいけなかった行動を正しくできないというミスです。
これは、作業が難しかったり複雑なために正しく実行できない場合(スリップ)や、作業員の能力不足や疲労などによって実行できない場合、慣れなどで意図的に手抜きをする場合と3つが考えられます。

【スリップ】自分の意思とは違った行動になってしまった(作業手順の間違い)
【技術/能力不足】適切な行動をする能力がない
【故意】意図的に誤った行動をとる

出力(アウトプット)ミスの対策は徹底的なシステム化です。慣れを許さず決められた手順を細かく提議し、守らせることです。これによって行動が正しく実行されているかどうかを確認しなければなりません。

・事前DR(レビュー)の実施
・作業手順書の頻繁な更新
・ツールやシステムへの置き換え(人間の判断範囲を軽減する)
・ToDoリストの作成(モレ防止)

この章の締めに一冊、本を紹介しておきます。ミスに関する書籍は非常にたくさん出ているのですが、あえて樺沢紫苑氏を避けて、『仕事が速いのにミスしない人は、何をしているのか?【飯野謙次氏著(2017年)】』をご紹介しておきます。私も数年前に読みました。まずミス防止のために個人としてやれることをしっかりと身につけたい人にはうってつけの本だと思います。まぁ、これ以外でも、この手の書籍はたくさんでていますので書店に行ってパラパラめくるものいいのではないでしょうか?

ミスの防止方法

ミスを憎んで人を憎まず

さて、ここまでミスを起こしやすい人の特徴や、ミスが発生する原因などを検証してきました。また一般的なミスの防止方法も説明しました。
『そうはいうもののミスは本当に減らないよね』と言うのが実情じゃないでしょうか?
最後はミスが起きた時にどうすれば最も効果的に対策に移せるのかについて考察していきましょう。

繰り返しになりますが、人間は必ずミスを起こす生命体です。
とはいえ、企業においてはミスが企業そのものの命取りになることがありますし、ミスが本当に関係者の命を奪う場合もあります。前者でいえば、食品偽装問題など社員の隠ぺい行為(ミスとはいいがたいですが)や入札価格の桁間違いなどがきっかけで会社そのものを倒産させてしまった例も、枚挙に暇がありません。
また、後者でいえば、医療ミス運転ミスなどは、ミスそのもので他人の命を奪ってしまうものになってしまいます。
ミスに対して一時的な注意や指導は防止のために当然必要ですが、特に企業においては『ミスに対してヒトを攻めるのではなく、減らす、被害を最小限にとどめるためのシステム』を作ることが、最も重要なミス防止策になると考えます。

①ミスを発生させた人をリーダーにしてチームで対策を考える
だいたいミスが起きると発生者が報告書を書き、上長が次々とハンコを押して、最後はファイルして終わり、ということが多いのではないかと思います。発生者も過去の報告書をコピペしてるし、作った書類は共有もせずファイルに綴じられるだけ、昨年に対して何件減ったかだけを管理する報告書ではやらない方がましですね。
ミスが起きたらミスをした人をリーダーにして数人の組織メンバー(ミスの対策を統括している部門があるのが好ましい)で3日以内対策を練り上げることを習慣化させることが、ミスの再発防止の最重要事項です。

②誰がどうやっても同じミスが起きない(起こりづらい)案を考える
アイディア出しは可能な限りたくさん出す。ポイントは誰が、どのようにやってもそのミスが発生しない方法を考えることです。その際に重要なのは、現在の組織構成やコストなどは一旦取り払って考えることです。
対策会議に参加すると、『今のシステムでは。。。』とか『コストがかかり過ぎちゃう』などという実現可能性が前に出てきて、最終的にありきたりの対策案しか出てこないことがあります。これでは先に進めません。まずは実現可能性を取り外して自由に大量にアイディア出しをすることです。そこには他のミスを解消するヒントも出てくる時があります。

③対策案ができたら組織に迅速に共有する
これも組織が大きくなればなるほどできていません。せっかくミスをしてまで掴んだミス防止対策をその部門だけが認識していたら、また他部門でも同じミスが発生しかねません。ミス対策の統括部門があれば、そこがキーになって全部門へ発信をし、可能な限りマニュアルの配布教育をするようにならなければけません。
ミスのレベルもありますが、簡単なものであれば全社共有のチャットで一斉発信するのもいいですし、お客様へ迷惑をかけるレベルのものであれば、時間を取って勉強会形式でマニュアルの説明や教育をするのが良いと思います。

『ミスした当事者がチームを組んで短時間で幅広く対策案(可能な限り人の判断を無くしたシステム化)を検討し、決まればすぐに組織共有する』といったところでしょうか?

さて、今回は比較的日常業務寄りのお話になったので読みやすかったのではないでしょうか?
こういったミスについては、私のブログ内『私の失敗~失敗から学ぶ営業』でも、すでに連載で6回ほど投稿していますので、良かったら覗いてみて下さい。

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私の部署も300人を超える大所帯なので、毎日のように不注意によるミスの報告が届きます。これはお客様に対してだけでなく、車両事故などについては自分自身の身体、他人の身体にも影響を与えてしまうかもしれません。
だからこそミスは完全に無くしたいのですが、人間がやっている以上『0』にはならないので、少しでも『0』に近づけるためにひたすらシステムを作っていくことです。
そもそもISOなども個人の主観で管理をしていたら、バラツキも出るし、判断がつかないので手順書(システム)を作って、明確にしたのが始まりです。
似たような会社や、自社よりもミスをした時の影響度の高い会社(航空会社や医療)などをベンチマークにして自社でミスを減らすシステム構築を進めてみて下さい。
今回は、これまでです。また次回、ごきげんよう!

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