強い組織をつくるために~One on Oneミーティング【第92回】

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会議室ビジネス一般

新しい年度が始まりました。私もサラリーマン生活31年目のシーズンを迎えます。そう考えるとずいぶん長く勤めたな、と感慨深いものがあります。今年も新入社員が入社し、社内にも新鮮な空気を呼び込んでくれますが、最近、かなり早い段階で転職するフレッシュマンも増えている感じがします。
もちろん終身雇用を推奨しているわけではありませんが、前回の投稿でも少し触れたように、雇用された側にもある程度、採用された義務を果たすべきだと感じています。
さて、そもそもそのようなことが起きないように上司、先輩とのコミュニケーションをとっていくことが重要なのですが、今回はそのコミュニケーションの1つとして『One on One ミーティング』をご紹介したいと思います。
ちなみにフレッシュマンに送った前回の投稿もリンクしておきます。良かったらこちらも読んでみて下さい。(『営業3年生までへのアドバイス【第91回】』

営業3年生までのアドバイス~令和の営業スタイル【第91回】
いよいよ桜の季節、フレッシュマンが新しい社会へ踏み出す季節です。今年もたくさんの営業1年生が全体研修を受け、秋ごろにはいろいろな部門に販売部門に配属されていくことでしょう。私も当時のことを思い出すと、とにかく先輩のやっていることを見よう見...

One on One ミーティング導入

One on Oneミーティングとは

営業部門にいた時は、組織メンバーも80人程度でしたし、20年近く在籍していたということもあって個々の能力や業績を評価する際も、それぞれの顔や性格をしっかりと把握した状態でできていました。しかしアフターセールス部門を見るようになると、400人近い人数が地方拠点に散らばって在籍しており、なかなか直接会うこともできず、また修理の出来栄えなどは営業の売上と違い、非常に評価が難しいのです。
まずは全員と会ってみようと、1か月くらいかけて全国の支店、営業所を回り、200人くらいのメンバーと面接をしてみたのですが、面談の内容はほとんど一方的に質問することになり、顔こそ覚えましたが、その人の能力コミュニケーションさえ取れないデータ収集のみに終始してしまいました。
そこで、面談をするのに何か良いものはないのかと探していたところ、この『One on One ミーティング』と出会いました。つまり当初は目的なども、それほどこだわらずコミュニケーション強化をするために始めたのがきっかけです。
『One on One ミーティング』インテルなどシリコンバレーのIT系企業で始まり、日本ではYahooRicohなどの会社名が良く検索されますね。目的は『人材育成であり、目標や成果を確認するものではない』とされています。これは言うのはやさしいですが実行してみると非常に難しいものです。
私たちが実行した当初はまさに日頃の業務の課題を聞いてあげながらコミュニケーションを高めていくことが面談が主になりました。とはいえ、まずはコミュニケーションを良くすることが強い組織の第一歩なので私的には間違っていなかったと考えています。
恥ずかしながら『One on One』も間違えて『One to One』と言っていたので、今でもうちの部署の面談シートのタイトルは『One 2 One面談シート』になっています。。。

One on Oneミーティングの導入

私の部門で最初に導入した時は、それこそYahooで実施していたやり方をほぼ踏襲して始めました。面談の内容(テンプレート)も公開されていたものをそのまま使用していますので、添付のシートは参考程度にご使用ください。ちなみに私が実施するにあたって意識させたのは下記の5点です。

(1)毎月同じ日にち、時間に実施する(第1月曜日のAMなど)
(2)会議室で実施する
(3)事前に面談シートに内容を記載してもらう
(初期はYahooのテンプレートを活用)
(4)すぐ下の部下と行う
(部長は課長と、課長は係長と)
(5)会話は上司は聞き役で2割、部下は自由に8割

One to Oneミーティングテンプレート~Yahoo参照

まずはやってみようと導入しましたが、1回目はテンプレートの内容を読み上げるだけで『これってなんか意味あるんですか?』といった感じになってしまった面談も多々ありました。それでもだまって半年続けようということで、毎月進めていくと、次第に面談に変化がみられるようになってきます。
上記のように『One on Oneミーティング』の面談シートは1枚のシートに毎月継続的に記載するようになっており、これを両者で書き込みながら進めます。そのため、前回の面談に対して今回どのような変化があったのか、ということがはっきりわかるようになります。
すると不思議なもので、前の面談から1か月の間で『新しく何をしたのか?』『先月から何が進捗したのか?』を積極的に語るようになってきます。面談される側にとっては『先月と同じことは説明できないな』という思いが強くなるんだと思います。
これにより、前回より業務を先に進めようという意識が生まれてきます。この意識が芽生えることが大事なのです。とかく日本企業の社員は指示待ちの傾向が強くなりますが、この意識によって『業務は自分で考えて進めていく』といった意識が根付いてくるのです。
また、部下が悩んでいる、またはやや間違った判断をしている時には、上司は面談を通じて明確なアドバイスをすることで、部下の止まっている思考を動かす必要があります。この明確なアドバイスコーチング力と呼ばれるものになります。
もう一つの変化は、毎月定期的に面談をしますので当然ながらコミュニケーション力が高まります。特に時間や場所をしっかりと決めることでお互い準備をしながら臨むため、本音をしっかりとぶつけ合えるようになってきます。この変化には上司側のコーチング力が大きいのですが、しっかりと継続していれば、どの面談も徐々にコミュニケーションが取れていく傾向があります。
面談の中ではプライベートな話にそれることなどもあるのですが、上司は意図的に話題として提起することも重要です。プライベートな話は距離を縮めていくには最も有効です。但し、内容によってはハラスメントに繋がる危険性もありますので、業務の話からすこし脱線したり、趣味や学生時代の話などから溶け込んでいくことがいいでしょう。
また悩みや課題を相談された時にすぐに答えを示さないようにしましょう。あくまでもアドバイス程度にとどめ、結論は部下が考えて出すようにすることで、より相互の信頼感が増していくでしょう。

営業時代、営業車で部下と長時間移動することが多かったのですが、その道中は非常に良いコミュニケーションの場でした。まさに車の中は一対一の空間なので、仕事のことやプライベートのことなど、いろいろな相談を受けましたし、たぶんオフィスにいる時以上に、個別に話をする機会が多かったような気がします。今から考えると、この一対一の空間こそ『One on Oneミーティング』を行っていたのだと思います。

One on Oneミーティングのメリットと効果

さて、ここからは『One on Oneミーティング』のメリットについて実際に実行した経験から説明させて頂きます。
実施した一番のメリットはやはり業務進捗の相互確認です。最近はリモート勤務なども多くなり、部門内のメンバーの日々の業務が見えにくくなっています。
『One on Oneミーティング』のように定期的な面談をすることで、本来やるべき業務を部下に気づかせ、自主的に業務を正しい方向へ進めていく行動を生み出すことができます。また業務の方向感が間違ったり、停滞している時に上司が適切なアドバイスをすることで、短いスパンで軌道修正ができるようになります。まさに目標管理のPDCAを回していくイメージです。
また、もう一つのメリットは、同じ空間で一対一で面談をすることで、直接の上司とのコミュニケーションが高まります。1回目の面談などでは、なかなか不自然さが取れませんが、回を重ねるにしたがって次第に本音の話ができてくるようになります。
コミュニケーションを高めるポイントは、とにかく上司は聞き役に徹することです。途中で遮ったり、反論しないで、まずは全部受け止めてるようにして下さい。また話が業務や本題からそれても、それがコミュニケーションに繋がります。面接の時間はしっかり守りながら、可能な限り信頼関係の構築に努めるようにして下さい。

【One on Oneミーティングの効果】
(1)上司と部下のコミュニケーションを高め、組織内の信頼関係の向上
(2)業務進捗の相互確認と気づきによる業務遂行能力の向上【経験学習】
(3)上司のコーチング力の育成と問題解決思考の向上

さて、私もまだ道半ばですが『One on One ミーティング』を上手く機能させるポイントについて説明して終わりにしたいと思います。

【One on Oneミーティング運用のポイント】
(1)定期的に行い、絶対に延期や中止しない(可能であれば短時間でも毎週実施)
とにかくうまく進まないと尻切れトンボになる傾向が強いです。時間は少なくても構いませんが、週次、隔週ぐらいで実施するのがベストです。また決めた日程は絶対に延期や中止をしないことです。これもなし崩しになる大きな原因です。
(2)部下側から面談を始め、部下側の意見を尊重する(結論は部下が出すようにする)

これは投稿の中でも述べていることなので復習になりますが、主役は部下側になるように進めます。従って会議は部下側から始めると意外とスムーズに始められます。また部下が悩んでいるときなどもアドバイスはしても最後の結論は部下に考えさせるようにすることです。
(3)上司のファシリテート力(面談進行能力)を育成をする

上記を上手く行うためには、やはり上司のコントロールが重要です。うまい面談ができている上司は面談の進め方が非常に上手です。このような手順はしくみ化して部内や社内で共有できるような教育やマニュアル化を進めていきましょう。

さて、今回はいかがでしたでしょうか?最近、良く話題に出る『One on One ミーティング』について実際に私の部署で展開した時の方法や、その効果について説明させて頂きました。投稿中にも書きましたが成功の秘訣は、どれだけ本音で向かいあって面談できるかです。また忘れてはいけないのは面談することが目的ではなくあくまでも面談という手段によって部下の自主性上司とのコミュニケーションを創ることが目的です。
是非、上手に『One on One ミーティング』を実行し、フレッシュマンが1年で離職するようなことが無い組織を作ってください。今回はこれまでです。
また、次回。ごきげんよう!

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