マーケティングに影響を与えた著名人(2)【第62回】

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今回も前回の続きです。本当は前回に入れたかったのですが、思いのほか長くなったので2回構成になってしまいました。前回、いろいろな理論やフレームワークをご紹介したので、そちらの問合せもいくつかありました。今後の投稿の中で説明していきますのでしばし、お時間を下さい。今回は、マーケティングというより経営論の大家・ピーター・ドラッカーについて説明したいと思います。ドラッカーはマネジメントの重要な柱にマーケティングイノベーションを置いています。ではこのマーケティングイノベーションとはどのような意味なのでしょうか?

ピーター・ドラッカー(Peter Ferdinand Drucker)|1905~2005

経営学の父

ピーター・ドラッカー、名前だけはほとんどのビジネスマンが知っているのではないでしょうか?日本では数多くの著書が出版されています。オーストリア出身の経済学者で、1909年生まれで2005年まで活躍されていたわけですから、20世紀を代表する経済学者といっても過言ではありません。
実際に『経営学の父』とも呼ばれている実践型の学者です。
私は有名な『マネジメント【エッセンシャル版】』(2001年初版 上田惇生訳)を読んだことはありませんが、いろいろな著者によって引用されている部分が多いので断片的には触れているところも多く、また、日本人にとっては、岩崎夏海氏の『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら』(2009年)で内容に触れたという人も多いのではないでしょうか?実は私も、この本で『マネジメント』には初めて触れました。

冒頭で述べた通り、ドラッカーはマーケティングというよりも個人や組織のマネジメント論がベースであり、その中で経営戦略事業戦略マーケティングなどさまざまな項目に言及しているといったイメージです。
私は『ドラッカー名言集』(2010年初版 上田惇生訳)は読んだことがあるのですが、全体的に情緒的、また心理的な内容も多く、その辺が多く、いろいろな分野の人に受け入れられたのではないかと感じています。

顧客の創造(Create a Customer)

ドラッカーといえばこの言葉ですね。ドラッカーは企業の存在定義は唯一『顧客(市場)を創造すること』と述べています。顧客(市場)は社会環境の中で変化を続けていくので、重要なのは顧客のニーズを見つけ出し、継続的な満足を提供していくことで顧客(市場)を創造していくこととしています。
この部分はまさに成熟市場におけるソリューションビジネスの概念と重なるところです。顧客の課題を見つけ、その解決する製品を提供することで、市場を創り出していけるわけですね。
しかし、まだ成長市場真っただ中の20世紀半ばに、こういった理論を提唱できるというのは、この点だけみてもドラッカーは相当な先見性があったと言えるでしょう。

ではドラッカーはマーケティングについては何と定義しているでしょうか?前項の企業の存在定義として『顧客(市場)を創造すること』としていますが、そのためにやらなければいけないこととしてイノベーションマーケティングを上げています。

ドラッカーはマーケティングとは、『顧客というものをよく理解し、製品またはサービスが顧客ぴったりと合って、勝手に売れてしまうようにすること』と記しています。つまり顧客に面で接触し、課題を見つけ、それに対して解決策を提供するというソリューションビジネスそのものです。

また、もう一つのイノベーションについてドラッカーは、もう一歩顧客の深堀りを進め、顕在化している課題を解決するだけでなく、潜在的な課題を見つけ出し、今までとは違う価値を創造し、顧客に提供する、または新しい顧客を創造することを記しています。
Appleが、『音楽を聴く』という価値を、音楽CDを提供することから、楽曲そのものをネットで配信するというものに変更したことなどがイノベーションに当たるでしょう。

このマーケティングイノベーションは、当然補完しあうわけではなく、マーケティングでは顧客の価値を創造し、またイノベーションではその価値を破壊して新しい価値を見つけ出すということを繰り返して、企業は継続していくことを示しています。

マネジメント

ドラッカーは、その種の著書の多さから『マネジメントの神様』とも言われています。では、ドラッカーの言うマネジメントとはどういったものでしょう。
ドラッカーはマネジメントについて『組織をして成果を上げさせるための道具、機能、機関がマネジメントである』と述べています。
前回、解説したポーターやコトラーは『企業の目的は収益を継続的に上げること』を示していますが、ドラッカーは『企業は社会貢献するために存在する』ということを強調しています。
前述の通り、企業の目的が『顧客(市場)を創造すること』であり、その目的達成のために行う組織の成果につながる活動がマネジメントということになります。
ドラッガーはマネジメントに求められる役割を大きく3つにまとめています。

①その組織に課された特有のミッションを達成する
②仕事を通じて働く人の自己実現を図る
③社会の問題の解決に貢献する

①はいわゆる目標管理です。企業が経営理念を掲げたり、組織単位で目的(GOAL)を決めて達成のために活動していくことをマネジメント役割です。これはわかりやすいです。
②は日本企業においてはなかなか難しいのですが、仕事を進めていく中で自分のやりたいことを実現していくことをマネジメントする役割です。私も今の仕事を天職だと思ったりしていますが、自己実現になっているのかというと、単に仕事が自分の一部になっているだけという感じもします。ここの認識は頭では理解できますが、マネジメントできるのかとなると難しいですね。
③は最近でいえばCSRの向上SDG’sの達成と考えたら理解しやすいでしょうか?

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ドラッカーは自身を社会生態学者と呼んでいるように、個人の成長ややりがい、チーム力とコーチングなど、人間そのものの能力やモチベーションについて記述した著作物も多いです。1つ1つの言葉は、わかりやすいのですが、体系化などをする時に、非常に矛盾がでてきてしまうのも事実です。

マネージャーの役割

組織のマネジメントを重要視する中で、当然それを指揮するマネージャーの役割は特に重要で、マネージャーを『組織の成果に責任を持ちマネジメントを実行する人』と定義しています。
ドラッカーはこのマネージャーの役割『部分の和よりも大きな成果を上げること』『直ちに必要とされるものと、遠い将来に必要とされるものを調和させること』を挙げており、また、具体的なマネージャーの仕事を以下のように説明しています。

①目標を設定する
まずは、自部門(組織)の成果とそこまでの目標値を設定する役割があります。設定した目標に沿って組織を運営していく訳ですが、ドラッカーは一方的な目標設定を否定し、チームメンバーと対話し、双方で目標を合意して設定していくことを勧めています。

②組織する
目標を設定したら達成のために必要な業務を分析し、それぞれの職能別の組織を構築し、そのために必要な人選も行います。

③動機づけとコミュニケーションを図る
チームメンバーのやる気を高める環境づくりも役割の一つとなっています。そのためにはチームメンバーと普段からコミュニケーションをとり、長所や短所をしっかりと見極め、最もやりがいを感じる(効果的な)職務につけていくことです。このようにモチベーションなどを効率的にコントロールすることで全体の業績を高めることができます。

④評価測定する
もちろん、チームメンバーを配置し目標に向かって進めさせたら、チームメンバーの仕事に対して、評価する基準を整えなくてはなりません。また、評価をしたら、必ずフィードバックが必要です。

⑤人材を開発する
ドラッカーは『人材は企業にとってとても重要な経営資源』と説明しています。人材を育てることで、チームの業績の向上に繋がることから、人材育成は何よりも重要とされています。俗にいうコーチング力ということになります。

さて、今回は近代経済学において有名なドラッカーについて説明をさせて頂きました。なるべく要約して体系化したつもりですが、私自身も数冊の本を読んだだけなので、うまく説明できたのか心配です。何か、解釈の間違いなどがあったら是非、お問合せ頂けたらと思っています。
最後に、ドラッカーはマネージャー(管理者)の資質として最も重要な資質に『Integrity』を挙げています。これは後天的には身につかない資質であり、これを持たないマネージャー(管理者)はダメなマネージャーと伝えています。日本語訳では『真摯さ』という言葉が充てられていますね。
部下の長所を伸ばし、差別をせず、モノの本質を知ろうとして、仲間を大切にする、といったところでしょうか?果たして、私は真摯な管理者なのかな?と考えさせられてしまいます。。。
今回は、これまでとしましょう。では、また次回、ごきげんよう!

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