外部環境分析【第63回】

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pest分析マーケティング

現在、どの企業も事業のターニングポイントに来ています。特に2020年初頭からのCovid-19の問題は未曽有の社会問題を発生させ、今もなお、暗い影を落としています。しかし、そのような中でも企業は生き残りをかけて事業を展開していかなければなりません。
このように企業が大きく事業を変更しなければいけない時には、まず自社が置かれている立ち位置をしっかりと把握し、どちらの方向に一歩を踏み出せばよいのかを見極める必要があります。これを分析するのが外部環境分析です。今回は、この外部環境分析フレームワークを中心に説明致します。

外部環境分析

外部環境分析とは

企業は同じ製品の販売だけで事業を永遠に続けていくことは、なかなか難しいと考えます。最近は製品ライフサイクルも非常に短くなっており、高頻度新規事業を考え、進めていかなければなりません。
新しい事業を展開するには、まず自社が置かれている環境、立ち位置を、なるべく詳細に掴む必要があります。これが外部環境分析です。

外部環境分析と代表的なフレームワーク

外部環境分析は、大きくマクロ環境業界(競争)環境分析に分かれます。マクロ環境分析とは自社ではコントロールできないような企業に影響を与える環境を分析することで、有名なフレームワークとしてPEST分析があります。
マクロ環境分析を効果的に行う方法は、とにかく、あまり直近を見るのではなく3~5年といった時間軸で社会環境を分析することです。
よくある失敗例は、マクロ環境分析をしていても、誰もが常識で知っているレベルのレイヤーまでしか分析できず、結果ありきの分析をするケースがあります。
とにかく長期的に考え質よりも量を重要にして深堀りをしていくことが大事になります。『今後は高齢者の比率が増え、超高齢化社会になる』では分析になりません。高齢化すると『どんなことが考えられるのか』、『考えた社会環境から必要になるものは何なのか』と深堀りをして、誰もが気がつかないようなものを見つけ出すまで進めていくことです。

業界環境分析は、自社を中心とした業界内の環境分析となります。有名なフレームワークとしては 3C分析5Forces分析などがあります。3C分析5Forces分析もフレームワークの中心に自社を置いて、周りの環境がどのように影響しているのかを分析します。こちらは、自社に近い環境の分析になるので比較的わかりやすいです。

マクロ環境分析

PEST分析

では、それぞれのフレームワークについて説明していきましょう。マクロ環境分析で最も有名なフレームワークはPEST分析です。
自社を取り巻くマクロ環境が将来、どのような影響を与えるかを予測する手法です。
Politics(政治)Economy(経済)Society(社会)Technology(技術)という4つの視点から分析するため、それぞれの頭文字をとり『PEST分析』と呼ばれています。『マーケティングに影響を与えた著名人(1)【第61回】』で解説しましたがコトラー氏が提唱したフレームワークです。

マーケティングに影響を与えた著名人(1)【第61回】
ちょっと実務が忙しくブログ更新が疎かになってしまいました。今回は実務をやっている中で、マーケティング基礎部分は本当に変わらないな、と感じています。そこで今回は自分の頭の中を整理する上で、マーケティングで良く出てくる著名人の本の内容も参考に...

前の投稿でも何度か触れていますが、私はこのPEST分析というものが馴染めません。私の会社が単一製品を扱っていたせいなのか、それほどマクロ環境を分析するほど市場が狭かったのか、わかりませんが中期経営計画など、チームでは、必ずPEST分析から入るのですが、何か結論が出たことがなかったような気がしています。
恐らく、前述のレイヤーが浅すぎたことと、それぞれの項目で一から分析したことなどが失敗の原因だと考えています。

全国民を対象としたような新規事業などでない限り、まともにPEST分析をするのはやめた方がいいでしょう。まずは、どんな市場に事業を展開すれば良いのだろうか?と仮説を立て、その仮説の市場に対してP(政治)E(経済)S(社会)T(技術)がどのように関わるのかを考えていく進め方が議論も広がり、いろいろな角度で意見が出てきます。
また、P(政治)E(経済)S(社会)T(技術)それぞれで考えるのではなく、『高齢化の社会(S)になった時に技術(T)はより自動であるものに進む』といったようにPESTを複合的に考えながら意見を出していくのも効果的です。
PEST分析だけで事業内容を決め込んでいくことは極めて難しいです。立てた仮説の市場に対して、どのようの方向性で進めるのか?仮説に間違いはないのかを検証することに活用するのがPEST分析を有効に使えるポイントだと考えます。

ハイプ・サイクル

2020年日本における未来志向型インフラ・テクノロジーのハイプサイクル【ガートナー社より】

このような図を見たことがあるのではないかと思います。これはガートナー社が毎年作成している特定の技術の成熟度、採用度、社会への適用度を示している図です。
賛否両論ある図ですが、新しい技術というものは発生【黎明期】してから大きな期待【過度な期待】をもたれて市場に受け入れられ、だんだん本当の必要性【幻滅期】が理解されブームは落ち着き、良いものはしっかりと残って【啓発期】、拡大【生産の安定】していくといったことを示した一種の製品ライフサイクルです。
上記の2020年版日本のインフラ・テクノロジーのハイプサイクルを見ると、5Gが過度な期待を過ぎ、いよいよ本物かどうかが問われる幻滅期に向かっているとみることができます。
このハイプサイクルは、主に新技術に関する分析になりますが、技術トレンドを抑えていくには有効な資料になると思います。ちなみに10年前のハイプサイクルは下記の通りです。
2020年現在ではトレンドや当たり前のようになっている技術が、登り坂の部分【黎明期】にたくさんありますね。

2010年版ハイプサイクル【ガートナー社より】

業界環境分析

3C分析

ここからは自社を取り巻く環境、つまり自社に近い範囲の業界環境分析となります。なにより有名なものは3C分析です。3Cは外部環境分析だけでなく、さまざまな場面で利用されます。
マーケティング上のSTPの段階や、4Pの製品戦略などでも活用する場面が多いフレームワークなので必ず使いこなせるようにしておきたいです。
3C分析とは自社(Company)競合(Competitor)顧客(Customer)のそれぞれを分析して、戦略、製品販売を考える重要なフレームワークです。

マーケティングの教科書をみると、外部環境分析から4Pまで一連の流れのように説明されていますが、それぞれが同時に行われたり、あるプロセスの中で違うフレームワーク(分析)が必要になったりします。重要なのは、そのフレームワークが何を見つけるために活用するのかを覚え、あまり公式にこだわらないことが、良い分析をする秘訣になります。まぁ、反面教師的に私も書いていますが。。。

では3C分析は何を見つけるフレームワークでしょうか?
3C分析は一言でいえば競争優位点を見つけるフレームワークです。バリュープロポジションとかユニークセールスプロポジション(USP)を見つけると言い換えてもいいかもしれません。
よくある失敗は、3Cでそれぞれで分析はするものの、最終成果として競争優位、つまりどういった戦い方をしていくかが見えないで終えてしまうことです。
これが見つからない3C分析はやる必要がありません。顧客自社(製品特性)競合を細かく細分化して、どの領域に、どんな武器で、どのような戦い方をするのか?を徹底的に考えるようにして下さい。

5Forces分析

さて、5フォース分析については『マーケティングに影響を与えた著名人(1)【第61回】』である程度説明をしています。ご存じの通りポーター氏が提唱した環境分析のフレームワークです。

5フォース分析

縦の列に並ぶ①、②、⑤は市場の取合いを分析しています。もし、売上不振が課題なのであれば、競合との競争が影響しているのか?それとも新規参入者に苦しめられているのか?はたまた、新しい技術(代替品)によって市場を失いつつあるのか?この縦の3つを分析し、最も重要な項目に対して競争優位(収益最大化)を獲得するためにはどうすれば良いのかを検討していきます。
また、横の③、④はバリューチェーンにおける価値の取合いを分析しています。サプライヤー(売り手)から原材料を仕入れをして自社で製造して、購買者(買い手)に買ってもらうのが商取引です。
サプライヤーから安く原材料を仕入れることができれば自社の収益は高まります。また購買者に高く販売することができても自社の収益が高まります。これの逆になると自社の収益が低くなるわけです。
つまり、サプライヤー購買者価値(収益)を交渉することで自社の価値(収益)が最大化するように検討していきます。

5フォース分析打ち手の優先順位をつけるための分析です。
縦軸である『市場の取合い』では、自社に最も影響を与えているのは何なのかを見つけたら、それに対して打ち手を考えていきます。
横軸である『価値(利益)の取合い』でも同様、利益を最も取っているのはどこなのかを見つけ、それに対して打ち手を考えていきます。
売上シェア低下であれば縦の軸収益力の低下横の軸から分析をするのが良いでしょう。

さて、今回はいかがでしたでしょうか?新規事業でも既存事業の拡大でも外部環境をしっかりと分析することは必ずやらなければなりません。また、使われているフレームワークは外部環境を分析するだけでなく、使い方がしっかりと身についていれば、他の場面、例えば製品戦略を立案したり、市場のセグメンテーションをしたりする時にも大いに役立ちます。
今回の投稿で気がついたのですが、3C分析はマッキンゼーの大前研一氏が考案したフレームワークなのですね。大前研一氏の書籍は何冊か読んだのですが、全く知りませんでした。

公式で覚えるのではなく各フレームワークは何を導くために活用すのかを理解し、効果的な分析ができるようにしていきましょう。では、今回はこれまで。ごきげんよう!

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