企画と呼ばれる仕事~事業企画・営業企画【第90回】

企画会議マーケティング

さて、今回は一般的に企画職と呼ばれる業務の役割について説明したいと思います。私も営業一筋20年から最初に異動した先がソリューションビジネス推進部といった新設部門でした。私の会社ではまさに企画系の部署の先駆けで、すべてが手探り、手作り、物まねでスタートしました。この当時の奮闘記は、私のブログの初期にたくさん書かれていますので是非、読んでみて下さい。
その後、名前や役割が微妙に変わりつつ、現在ではマーケティング部という名前で企画系の業務が継続されているのですが、BtoB系製造業では、この企画系の部署雑多な雑用業務に使われることもしばしばです。BtoB系製造業においても企画系部門の役割を理解し、会社の売上に貢献する重要な部署にならなければなりません。

企画部門の役割

BtoB製造業における企画部門

この企画部門、意外と新入社員には人気がある職種です。新入社員の研修をすると、特に文系のフレッシュマンは『企画の仕事がやりたい』とのコメントを聞きます。テレビのドラマやドキュメンタリーでも、営業職がクローズアップされることはあまりありませんが、企画部門のメンバーたちが新しい製品を生み出そうと奮闘する場面は良く描かれているイメージなどが良く伝わっているのかもしれません。
確かにチームで製品を企画立案し、それをどうやって世の中に知らせていくといった仕事は非常に魅力的です。
BtoC系企業企画職などは、やはり会社の中でも花形部門であり、有名ブランドのブランド責任者(マーケター)などは業界でも名前が通った人が多いですね。マーケティング関連の講演会やWebinarなどでは、こういった有名マーケターが非常にためになるレクチャーをしてくれています。
ではBtoB系製造業に目を向けてみましょう。こちらは業務内容構成メンバーにおいてだいぶBtoC系企業との差があることが多いです。
これはBtoB系製造業ならではの特性が影響しています。

1)顧客数がある程度限定されているため製品志向(プロダクトアウト)が強い
悪い言い方をすれば『良い製品を作ったんだから売ってこい』といった感じでしょうか?そのため、生産部門と販売部門だけでビジネスが完結し、企画部門はカタログや展示会を企画する程度の役割になってしまうのです。

2)営業マンの技術志向が高い
この手の製品は、営業マンも販売技術よりも製品知識が必要になります。営業マン自身が販売するための資料や販促物を作成してしまうので、企画部門は(1)同様カタログを作成したり、展示会を企画したりする業務がメインになります。また、営業マンの訪問分析や顧客課題の集約、営業業績の報告書など、雑多なデータ集計のまとめ業務が企画部門に集まってしまいます。

3)企画部門の戦闘力が低い
BtoB系製造業は(1)、(2)の通り生産部門と営業部門の力が強くなる傾向があります。企画部門を立ち上げた場合、この両部門から人材を確保しなければならないのですが、往々にして『彼はあんまり売れないから』とか『図面がうまく描けないから』といった理由で、どちらかというと戦略外になったメンバーで構成されることが多いのです。もちろん企画職に来て一気に開花する場合も多々見てきていますが、企画部門少数精鋭が原則です。でなければ生産・販売両部門の意味のない戦力割譲になって、共倒れしてしまいます。

過去の投稿『製造メーカーがソリューションを実現するための組織【第17回】』でも同じような話題に触れていますので、良かったらこちらも併せてご覧ください。当時は自分の部署も意識して販売推進部と記載していますが今回の企画部門と同義として読んでいただいてもいいのかな、と思います。

製造メーカーがソリューションを実行するための組織【第17回】
さてソリューションビジネスについては、これまでに何回かとり上げ、ソリューションビジネスの本質や、具体的なソリューションビジネスの事例、また販売部門の立場からソリューション営業とは何なのか?などについて解説してきました。ではソリューションビ...

BtoB系製造業の企画部門の役割

企画部門の役割

上記は私が企画の仕事を表現するときに使用している図です。パワポのアニメーションがあるともう少しわかりやすいのですが、BtoB製造業のビジネスは『生産して販売する』が基本です。
このバランスが取れている、つまり『作ったものが適正な価格で売りたい数量が販売できている』のであれば、企画部門(上記の図だと販売支援部門と書かれているが同じ意味)は必要ありませんBtoB系製造業は20世紀ぐらいまではこのスタイルで十分やっていけたのです。
ところが、ビジネスではいろいろな問題にぶつかり、このバランスが狂ってきます。『予定通りに売れない』ということです。
①競合が出てきて販売価格が下がる、または失注している
②製品のクレームが出て販売活動に問題が出る
③認知度を増やすためにキャンペーンを行いたい
④販売拡大のため営業マンを補充したい

『予定通りに売れない』理由の代表例を上記に列挙しましたが、それ以外にもたくさんの理由があると思います。このような理由(販売不振課題)を解決する時に必要になるのが企画部門です。主に販売活動にテコ入れする部門営業企画とか販売推進と呼ばれます。また総称してマーケティング部とか、私の会社のようにソリューション営業推進部などと呼ばれる時もあります。
つまり、企画部門の仕事は『予定通りに売れない』状況を『作ったものが適正な価格で売りたい数量が販売できている』状態にするのが仕事です。これ以外は何もありません。
この原理原則を常に念頭に置いて企画部門を運営すれば、自然とやるべき仕事関係のない仕事がはっきりするはずです。

企画部門と販売部門の関わり

企画部門の組織構成

BtoB系製造業が直面している課題は、まさに『製品が売れなくなってきている状態』です。これに対して『製品の品質やスペックを上げる』といったプロダクトアウトの志向では絶対に解消しません。
市場をしっかりと見直し(マーケットイン志向)、『売り方を変えていく』必要があります。この仕事を担うのが企画部門です。

1)第一原則:企画部門は全て販売部門のために働くべし
企画部門は全て販売部門のために働かなければなりません。販売部門の目標企画部門の目標と考えてもいいぐらいです。前述の通り販売上、何の課題もなく順調に売れていれば企画部門は必要なくなるわけですから、企画部門は販売部門、営業マンが楽になるように環境を整備することに注力します。
私はドラッカーが好きなので『成果はお客様にしか存在しない』をビジネスの基本思考にしています。営業部門の目標は企画部門の目標ですから、企画部門の成果もお客様です。企画部門のメンバーがいつも社内にいるというのは絶対にありえないのです。

2)第二原則:企画部門は販売部門の上位にいるべし
第一原則で説明したように『販売部門のために働く』とすると、あたかも販売部門のサポート、悪い言い方をすると営業マンの雑用をするようにとらわれがちですが、社内組織上の立場は企画部門のもとに販売部門があるように社内認知されるようにしなければなりません。
なぜなら会社方針販売戦略に矛盾がないのかを確認するのも企画部門の重要な仕事だからです。これの逆流はありません。

これらの原則から企画部門の仕事『会社の方針を販売部門へ伝え、販売課題を解決し売れるようにする』ということになります。つまり企画部門から始まる業務は全くないのです。

企画部門の適正人材

経営・生産部門の方針を販売に落とし込み、販売部門の課題を経営・生産部門へフィードバックしながら解決に導いていく役割』が企画部門の業務ということを説明してきました。これは経営の根幹に影響を与える極めて重要な役割です。
この企画部門の人材内部調整力外部リサーチ力発想力行動力など全て渡って高いスキルをもっている人材の集合体でなければ務まりません。
他部門でお荷物になり、おまけのように配属されたり、新入社員が配属されるような部門ではないのです。もしそんな企画部門なのであれば、早々に解散して営業マンの数を増やした方が効果的です。
人数はむしろ少なく、個々の能力が高い人の集まりである必要があります。戦争で置き換えると参謀本部の機能になるのです。

責任者として適任なのは営業部門の課題を解決するのが仕事ですから、やはり営業部門の人材、その中でもトップセールスマンが最適人材となります。これも過去の投稿で結構書きましたが、トップセールスマンを異動させてくれる営業責任者はまずいません。
トップセールスマンがいなくなることで自部門の成績が確実に落ちるからです。しかし、全社で考えた場合、ある特定のエリアで成績をあげるのと、その人のノウハウを全社で活用して成績を上げるのではどちらが得なのでしょうか?
この辺の人事は、経営トップが強い思いで実行することが重要になりますし、私の経験でもここが徹底していなければ企画部門組織は崩壊し、目的(営業成果を上げる)を無視した手段のみの仕事に注力する部門に成り下がってしまいます。

販売部門と企画部門の業務

さて、販売部門企画部門はどのように連携していったら良いでしょうか?同じ目的で動いている2部門だだけに、境目がわからなくなるケースが多いのです。このときに軍隊をイメージするとわかりやすくなります。
企画部門は参謀本部です。大本営(経営陣)の方針を達成することができるように各方面軍に通達をします。各方面軍は販売部門です。
まず、参謀本部長(企画部長)は大本営(会社)の方針を方面隊長(営業部長)へ指示します。下の図で言えば『北部方面隊は山の頂上を占領しなさい、南部方面隊は湾を制圧しなさい』といった具合です。それぞれの戦場(市場)での戦い方は方面隊長(営業部長)に任されます。自分の部隊を訓練によって鍛え上げ、敵(競合)を攻略する戦術を考え、方針を達成させます。
これが順調に行われているときは参謀本部(企画部)は方面隊長からの報告を取りまとめるだけです。

しかし、北部方面隊(営業部長)より『山岳ゲリラ戦に苦戦しており難航している』といった問題(課題)が出た場合、これに対して参謀本部(企画部)は飛行部隊(モノ)を投入するのか、兵隊を増員(ヒト)するのかを的確に考え、方面隊を支援します。
また参謀本部(企画部)はリソースを的確に分配しなければいけません。仮に南部方面隊(営業部長)より『苦戦しているので増員して欲しい』とリクエストがあった場合、参謀本部長(企画部長)北部方面、南部方面どちらが重要かの優先順位をつけて最適なリソース分配をしなければなりません。

販売部門と企画部門の関係

この図の説明の通り、戦場での戦術展開は全て方面隊長(営業部長)に一任されます。困った時の支援が参謀本部の仕事となります。これを現在の仕事に置き換えると『競合を知り、顧客との関係を強化して任務を達成させる』のが販売部門の仕事
販売部門が困ったときに『的確に売れるように考え直す』のが企画部門の仕事と考えて下さい。

さて、今回はいかがでしたでしょうか?会社の中に数ある企画部門、その役割が少しは理解しやすくなったのではないでしょうか?製品が売れなくなった時、企画部門がどのように販売部門をサポートしていくのかが企業の勝負の分かれ目になります。
現在、日本の製品品質は過剰と呼べるところまできており、製品品質の差が非常に無くなってきています。そういった中、永続的に販売を拡大していくためには『売り方を変え』『強力な顧客リレーション』を発揮していかなければなりません。前者は企画部門の仕事、後者は販売部門の仕事です。
これを理解しながら、両部門が連携して販売活動していけば、もともと品質の高い日本の製造業が負けるわけがありません。
販売に苦しみ出したら是非、強い企画部門を再構築し、販売力を高めていってください。
今回はこれまでです。また次回、ごきげんよう!

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