BtoB系製造メーカーがやらなければならないことを3つ(①お客様の選別、②製品数の拡大、③ビジネスのやり方の変更)について、前回 は①のお客様の選別とそれを実現するためのアカウントマネージャーの説明で終わってしまいましたので、今回続きとして残りの2つを書いていきます。前回のアカウントマネジメントとアカウントマネージャーいう言葉、あまり聞きなれないかと思いますが、成熟市場で販売を安定させていくためには非常に重要な販売戦略です。今回も、実際に私の会社で取り入れたことを下敷きにしてお話したいと思います。
前回の『成熟市場で戦うための営業戦略(1)【第5回】』を読んでいない方は、そちらから読んでみて下さい。
BtoB企業の営業戦略~製品の拡大
①お客様(ユーザー)の選別
②商品数の拡大
③ビジネスの仕組みを変える(新しいビジネスモデル)
商品数の拡大
さて、お客様(アカウント)の選別ができ、アカウントマネージャーが重要アカウントに対して面の接触ができるようになるのと同時に、次は販売商品を拡大していくことが必要になります。
お客様と面接触することで顧客課題を発見すること機会は増えてきますが、その課題を解決するためには従来の製品だけでは対応できないでしょう。もちろん接触するお客様の数が減っていく訳ですから、商品のラインナップを増やさなければ売上は縮小する一方になります。
つまり、お客様の顧客課題がわかっても、それに対して売るものがなければ、コンサルタント料でも貰わない限り売上拡大にはつながりません。
そのためアカウントマネジャーやエリア営業担当が見つけてきた顧客課題をしっかりと商品企画・販売推進部門、または開発部門に伝え、その課題に対応する商品を迅速に作ることが重要になります。
製品開発のポイント
BtoB系製造メーカーは、私の会社もそうですが商品化までのスピードが非常にゆっくりしています。数年に一度の大きな見本市で、主に競合製品の調査が行われ、設計、製造、評価の各工程で時間とお金を使い、そのため途中からその製品をローンチすることが目的となって、顧客課題置き去りのマーケティングが行われてしまいます。
最近は市場の変化が、相当早くなっているので、製品開発までに時間を掛けてしまうと、当初の計画と市場要求にズレが生じ、ビジネスチャンスを失ってしまうことも多くなってしまいます。
まず商品開発が顧客課題が起点になっていないことは問題です。開発のコンセプトが顧客課題から始まっていないと、その商品は絶対に売れません。また製品開発に時間とお金を掛けてしまうと社内では止めるに止められない雰囲気が出てきます。これが前述した顧客課題置き去りのマーケティングに繋がり、販売側にストレスを与えることになります。
この商品企画、開発(設計・製造)、マーケティングをどれくらい早く進められるかが勝負となります。失敗を恐れず、トライアンドエラーを繰り返していくことです。
ミスミの元CEOである三枝匡氏が著書『V字回復の経営』で示唆している『創って、作って、売る』のサイクルを極限まで早める必要があります。
この本はソリューション推進部に着任したばっかりの時に上司から勧められて読まされたのですが、とにかくおもしろいし、ためになります。読んだあとは半沢直樹よりアドレナリンがでますよ。また、このシリーズは全部で3部作(4部作)あります。どれから読んでも、大丈夫なので、是非読んでみて下さい。本当にお勧めです。
では、製品ローンチを早めるためには、どんな製品開発が考えられるのかについて、項目だけ示させて頂きます。これも私の会社で取り組んだ具体的な事例となっています。更に深い部分も既に原稿化していますので、別の機会にアップロードさせて頂きます。
【スピードを速める商品開発事例】
〇自社製品の前後工程の装置・機器の販売(代理店契約、M&A)
〇サプライビジネス(自社製品で使用する資材、消耗品の自社ブランド化)
〇アフターセールス(修理履歴を分析した計画的な工事商品)
BtoB系製造業の営業戦略~ビジネスの仕組みを変える
新しいビジネスモデルの創造
さて、最後は最も難易度の高くBtoB系製造業が常に悩んでいるビジネスの仕組みを変えることです。これは古くからいろいろな方法があり、どこの会社でも3C分析や、SWOT分析といったさまざまなフレームワークを使って分析した経験がある方も多いのではないかと思います。
私の会社でもSWOT分析は非常に良く使いましたが、なんとなく結論ありきで作ってしまうというのか、分析のためのフレームワークにならなかった経験が強かった感じがします。
変にフレームワークに当てはめることを考えるのであれば(もちろんフレームワークでしっかりと分析できるのが一番いいのですが)、もっとシンプルにフレームワークの項目(自社の強みや弱み)で重要なものから箇条書きにしていく方が、分析と議論が進めやすいのではないかと思います。
例えば、販売しようとしている製品、サービスに対し、お客様はその製品で何をしたいのか?【顧客価値】を書き出し、反対側に自社が提供できるサービスを並べて、どうやったら真似されずに、継続的に収益を上げられるかを考えてみるものいいですね。
有名なドリルの穴の話(Tレビッド『マーケティングの発想法』)をベースにビジネスを考えてみます。
お客様:8mmのドリルをホームセンターに買いに来た
顧客価値:8mmの穴が空けたい
提供できるサービス:ドリルを売る、貸す、出張穴あけサービス、穴の開いた板の販売など
この中で最も真似されず継続的に収益が上げられるサービスはどれでしょうか?
お客様がいろいろなサイズの穴が必要なのであれば各種ドリルの定額利用サービスが良いかもしれませんし、DIYの最中に2か所難しい場所に穴を空けたいのであれば、出張穴あけサービスの方がより顧客価値に合致するでしょう。
このように顧客価値と提供できるサービスを照合し、最も真似されず継続的に収益を上げられるものを選択していくと、ビジネスモデルにたどりつける可能性が高まると思いますし、何よりも分析と議論をしっかり進めることができるようになります。
さて2回に渡って成熟市場でBtoB系製造業が取るべき手段について3つ説明をしました。この中でもビジネスの仕組みを変えるというのは最も難しいと思います。
但し、BtoC系のビジネスでは、この仕組みを変えることでゲームチェンジした会社が市場を席捲していますし、こういった成功事例をうまくBtoB用にアレンジをして自社の製品販売に取入れることができれば、ゲームチェンジのチャンスはいくらでも存在すると思います。
このビジネスの仕組みの変えること(新しいビジネスモデル)こそ、ソリューションビジネスの神髄です。
このビジネスの仕組みを変える時に欠かせないのが、クラウドビジネスを軸にしたリカーリングとサブスクリプションですが、これについては、また近々に別の記事でまとめてみたいと思います。
では、最後まで読んで頂きましてありがとうございます。また次回、ごきげんよう!
コメント