販売企画書の作り方【第85回】

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企画書マーケティング

マーケティング関連の部署にいると、製品の販売企画書を作る場面が多くなります。慣れてくるとポイントをしっかりと抑え、比較的骨格は簡単に作成できるのですが、初めて作りなさいと指示されると、『どうやって作ったらいいのかな?』と悩んでしまいますね。
今回はそういった販売企画初心者に対して、効果の高い販売企画書を作成するコツを説明したいと思います。もちろん、こういったものに模範解答はありません。これをベースに自分なりに最高のパターンを作ってみて下さい。

販売計画書の作り方

販売企画書の目的

ある製品をマーケットに投入するとき、販売企画書を作成します。市場が売り手市場だった時代は、良いものをより安く作れば、製品は売れました。しかし、今の市場はモノが余っており、また製品性能の差別化も均質化され難しくなっています。
こういった成熟マーケット販売を拡大していくためには、より市場を細分化し、自社製品が最も有利な戦場で戦う必要があります。これをしっかりと定めるものが販売企画書です。
これは新規事業を立ち上げる際の事業企画書などにも通じることなのでしっかりと構成できるようになりたいところですが、良くチームメンバーが作ってきた販売企画書を見ると『雰囲気として良くできてるんだけどなんかピンとこないな』ということが多いです。これは計画書がロジカルでないことが大きく影響しています。

まず販売計画書はどういったものなのかを考えましょう。販売企画書『こういう製品を売れば会社の成果に繋がるので是非やらせて下さい』という意思を自社の上層部の同意、承認を得るものです。ここからズレてしまっていると、承認をする上司も『何をしたいのか?』『何を承認すればよいのか?』わからなくなってしまうことがあります。販売企画書を作成するときは、まずここに要注意です。

販売企画書の主旨

販売企画書に限らず、社内へのレポートはまず結論を書かなければなりません。販売企画書であれば、『その製品を販売すると会社にどんな成果をもたらすのか?』という企画の主旨のことです。
企画書の最初には主旨端的に書くことから始まります。販売量を拡大する企画書であれば『成長している〇〇市場に△△の製品を投入し、年間〇〇の売上を上げる』という内容を明確に宣言します。
もちろん企画書はその主旨の詳細を記載していくのですが上司もバカではありません。この主旨を読んだとき『いや、ちょっと無理だろう』、『そんな当たり前のことを今さら考えてどうする?』というものであれば企画書が通るわけがありません
まず主旨の段階『このあとの企画を聞いてみたい』と思わせなければなりません。

企画書の本文

主旨が首尾よく聞きいれてもらえたら次は企画書の内容です。このパートはマーケティングの原則である、STPマーケティング4Pをしっかりと活用しながら作れば問題ありません。

1)ターゲット・・・主にSTP、新規商品の場合は外部・内部環境分析も参考
2)製品特徴(USP)・・・4P『商品(Product)戦略』『価格(Price)戦略』
3)販売目標
4)販売方法・・・4P『流通(Place)戦略』『プロモーション戦略』
5)スケジュール
6)進捗の確認方法(KPI)

ターゲット

まずはターゲットです。STPの分析をし『市場のどの分野のどういったユーザー層へ製品を売り込むのか』を定める部分です。このターゲットより狭く、深く狙っていく必要があります。
特に製品の均質化が進んでいるマーケットの場合、幅広い製品特徴を持ったものほど競合との競争に晒されます。例えばかゆみ止めの軟膏を扱っているのであれば『どこにでも使えるかゆみ止め』では広すぎるのです。『足首専用』とか『頭皮専用』など、かゆみの市場課題をより細分化し、自社の製品の勝ち目のある領域で戦うことを、まず最初に考えることです。

製品特性(USP)

ターゲットを絞っていく際にも関わってくるのですが、狙う市場が決まったら『その市場に対してどういった強みを持って、販売していくのか』を表したものが製品特性です。よくUSP(Unique Sales Proposition)という言葉で代用されます。
また、マーケティングの4Pでいうところの製品戦略です。販売する際にこのUSPが明確でない製品は、まず売れることはないでしょう。この製品特性(USP)プロモーションと並んでマーケティングの柱といっても過言ではありません。
競合製品に対する差別化ポイントであったり、ユーザーに対する最もアピールするポイントになり、これが描けないと負け商品になってしまうのです。そのため、製品特性優位に持っていくためには、途中でターゲットを変更するようなこともしばしば発生します。必要もあるわけです。
これは実話で有名な話かもしれませんが、ある会社が保湿効果の高いティッシュを開発し、他製品よりもワンランク上級のティッシュというUSPで販売を開始しました。しかし、思ったほど販売が伸びず、ターゲットをさらに細分化し、『花粉症の人に優しいティシュ』とポジションチェンジをしたところ、爆発的なヒット商品になったという事例です。実はこの時に商品名パッケージデザインも変更しているのですが、ネピアの『鼻セレブ』という製品のお話です。
この事例は製品特性(USP)一切変更していませんターゲットを細分化し、自社製品のポジションを変更すると同時に、製品名やパッケージデザインといったプロモーション方法も変更し、一気に販売量が拡大したという非常に参考になる例ですね。
いずれにしてもターゲットに対して製品特性が突出していなければ、何度でも販売企画を練り直す必要があります。

販売目標

これについては販売企画書に書かない人はいないでしょう。目を通す上司もここが一番気になるところですね。販売目標を記載するときに下記の点は必ず入れるようにしましょう。
①販売予定(希望)価格と予定原価・・・1個売るといくら儲かるのか?
②初年度から3年目までの販売予定・・・初動でどうれくらい粗利(売上総利益)があがるのか?

短期間で一気に販売して、すぐ撤収する製品なのか、長い期間をかけてじわじわと稼いでいく製品かなどでも違いはあると思いますが、まずは3年で見通しがつけることが重要です。
また販売目標には必ずその根拠が必要です。

売上目標の立て方

上記の図の通り、売上は単価×客数ですね。1万円の製品を1,000件のお客様に売れば、売上は\1,000万円になります。ではこれを目標の5,000万円にするにはどうすれば良いでしょうか?
これは当たり前の話ですが、単価を上げるか購入するお客様を増やすかということになります。この時代、単価を上げることは非常に難しいですが、新しい機能を追加する、上位モデルを設定するなどして単価を上げることが1つの対策となります。
これに対して購入するお客様の数を増やすことは比較的実行しやすいですね。広告、宣伝といったプロモーション活動で客数(分母)を増やすことは当然考えなければなりません。
また単価単価×個数に分解できます。1個だけ購入するお客様もいれば2個、3個と購入するお客様もいます。また製品そのものは1個の購入でも、それに使用する消耗品や、保険加入などに結び付けられれば顧客単価はがあります。これも売上拡大の重要な施策です。良くクロスセルなどと呼ばれます。アップセルクロスセルについては過去の投稿『アップセル・クロスセル【第58回】』で具体的な事例も上げて説明していますので見てみて下さい。

アップセル・クロスセル【第58回】
前回、アンゾフの成長マトリックスを説明しました。現在、日本のBtoB系製造業は成熟したマーケットで苦戦を強いられています。そのようなマーケットの中で事業を成長させなければならない中、アンゾフの成長マトリックスは非常に活用できるフレームワー...

更にお客様(購入者)案件数×契約数に分解できます。いろいろなプロモーションにより興味を引いてきた案件者(リード)に対して、購買意欲を高め、最終的に契約に導く最も有効な手段成約率です。デジタルマーケティングの世界では購買のトリガーなどとも言われています。
価格、おまけ、2次的な効果など、最後の一押し、購買のトリガーを考えることも売上拡大には大きく寄与します。
このように立案した目標数字に対して、それぞれがどのような比率で達成が可能なのかを明示すると、非常に説得力のある販売目標になると思います。

販売方法・スケジュール

ここまでできると概ね販売企画書の内容は完成しています。最後の仕上げは企画してきた製品をどのように売るかですね。BtoC企業だと、ここに最も時間が割かれそうですが、BtoB系製造業では対面(営業、または販売代理店)か、ネット(メルマガ、WEBサイト)かぐらいですね。
それでも製品情報を『だれが、どうやってお客様へ到達させる』かは重要なことであり、しっかりとしたスケジュールがひかれてなければなりません。
販売方法のコンテンツごとに担当納期が明記されたスケジュール販売企画書には必ず添えなければなりません。
ちなみにスケジュールを引く時のポイントは下記3点に留意した方がよいでしょう。
①ほとんどの製品の場合6か月以内(可能であれば3か月)
②対顧客・対社内・対仕入先に分ける
③担当者を明記する

進捗の確認方法(KPI)

販売企画書の最後に忘れがちなのは、その企画の進捗確認方法です。販売企画書が承認、通過したら、あとはひたすら実行し、振り返り進捗確認もないまま進めてしまうことはビジネスでは絶対にありえません。しかし実際は意外とそのような事業が散見します。
販売企画書には、GOAL(目的)だけでなく、細かくマイルストーンをおいて、今の状態が予定通りなのか、遅れているのかを認識する場を定期的に設け、そこで次への対策を立てて軌道修正するやり方も書き込んでおくことが必要です。

ここまでの内容が販売企画書に記載されていれば、全てが一発承認になるわけではないでしょうが、少なくても販売企画書を投げつけられる!?ような事態にはならないと思います。
だいぶ前になりますが、こちらもほぼ同じようなテーマ『商品戦略の立案【第27回】』を投稿しています。良かったらこちらも一緒に読んでいただけると幸いです。

商品戦略の立案【第27回】
実践的な事業戦略の立案方法【第19回】の反響が大きかったので、かみ砕く意味で実際に新製品を販売していくとなった時に販売推進マネージャーがどのように計画を進めたらよいのか、これも過去の経験から説明したいと思います。BtoC系のメーカーであれ...

さて、今回はいかがでしたでしょうか?販売に携わっている部門は、多かれ少なかれ、このような販売企画書を作成する場面に遭遇するでしょう。こういった社内の企画書を短期間でロジカルに作成する能力は、今後はより一層重要なスキルになっていくと思います。業務の中で何回も作成してみて、経験値を上げてみて下さい。
では、今回はこれまでです。また次回、ごきげんよう!

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