ソリューションビジネスを展開していく上で、最近アカウントマネージャーという役割を良く聞くようになっています。ではこのアカウントマネージャーとはどんな役割を果たすのでしょうか?これもいろいろと解釈があるかとは思いますが、いつもの通りBtoB企業においてが私の基本なので、BtoB企業におけるアカウントマネージャーの役割について説明していきたいと思います。
アカウントマネージャーの役割
BtoB企業の問題点
BtoB企業、特にメーカーの製品は、耐用年数が長いものが多いので、当然、切替のサイクルが長くなったり、景気の動向に非常に左右され、市況が落ち込みとすぐに買い控えされたりします。
製造メーカーは自社工場を持っているので、販売製品は毎月バランスよく生産されることが好ましいのですが、そのような事情があり、なかなか安定的に受注を取っていくことは難しい状況です。
ちなみに私の会社の製品は平均で13年~15年で使用し、平均売価も1億円以上だったこともあり、景気が悪くなると極端に販売量が低迷しました。営業スタイルも製品のPRはするものの、基本的にはお客様からの依頼待ちで、商談が始まった時は、既に客先の意向は決まっており、競合にも声が掛かっているという感じでした。
そうなると、成熟市場の中では少ないパイの取り合いとなり、受注したとしても収益性の悪い商売になってしまいます。まさにそのデメリットを打開していくのがソリューションビジネスです。
顧客(アカウント)の選別方法
以前の記事でBtoB企業のアカウントマネジメント活動は3つの重要項目があるとお話をしました。その1番目である『顧客を選別する』はアカウントマネジメント活動の骨格になります。顧客を選別するということは、永続的に製品を購入する可能性のあるお客様をしっかりと捉え、そのお客様に対して、より深くビジネスを展開していくということになります。
ユーザーの選別は扱っている商品によっていろいろあると思いますが、判断基準としては下記のような数値でお客様をスコアリングし、BtoB企業(法人営業)の場合は営業担当人数の3倍~5倍の数を選出するのが良いと思います。
①過去3年の売上高(成長しているのか?も含めて)
②過去3年の利益率(収益を出しているのか?拡大しているのか?も含めて)
③信用調査会社の評価点(帝国データバンクの評点であれば50点以上)
④自社の製品、アフターセールスの売上高、収益率
⑤業界での影響力度
⑥その他(経営者の年齢・性格、後継者、社員の質、取引先など)
以前の記事をご希望の方は是非下のリンクから読んでみて下さいね
選別したお客様(トップアカウント)に対しては、従来のエリア担当営業の他にアカウントマネージャーを選出することで、具体的な販売活動だけでなく、もっと広くトップアカウントへ接触して課題を発見し、提案を作っていく役割を果たします。
当然ながらアカウントマネージャーは対面能力、商品・業界知識を豊富に持った人材から選出され、トップアカウントの業界(セクター)に特に秀でている必要があります。
これによって、既存製品の使用状況や購買に伴うことはエリア営業担当が、もう少し深い業界のトレンドや、自社の方向性、最新技術情報などを説明する時はアカウントマネージャーが、更にトップマネジメント(営業部長、役員)が会社対会社のリレーションを構築していくことで、よりトップアカウントと面のおつきあいができるようになります。
この面接触を強固にしていくことで、そのお客様のファーストコールカンパニー(お客様が何かをしたい時に最初に連絡する先)となり、相見積もりを要求されたり、不条理な値引きなどがない良好なビジネスパートナーとしての関係を築くことができます。
イメージとしては図のように、縦軸がエリア営業担当や営業組織だとすれば、アカウントマネージャーはお客様のセクター(業態や自社の商品セグメント別)別に横軸で活動する感じです。
アカウントマネージャーの役割
アカウントマネジャーが設置されることで、具体的な商談がない時でもトップアカウントに対しては定期的な接触が継続されますので、お客様に対して情報の提供が切れることもないですし、エリアの営業担当も商談に注力できるようになります。
また一番大きい効果は、お客様のセクターごとの情報が1か所に集約され、より顧客課題が掴みやすくなり、また、考えた提案を複数のお客様に流用していくことが可能となるので効果的な販売活動ができるようになります。
今回はソリューションビジネスを展開していく上で、非常に重要なアカウントマネジメント活動とアカウントマネージャーの役割を説明させて頂きましたが、それぞれの雰囲気はご理解頂けたでしょうか?恐らく、ここまでの話を読んだ方々は、『内容は良くわかったが現実問題としてだれがやるの?』のような疑問を持ったのではないでしょうか?
実は、アカウントマネジメント活動の最大の問題はここにあります。比較的、商社系のBtoB企業(法人営業)は、営業マンの数も多く、そもそも属人的というよりは組織的な営業をしているので違和感がないかもしれませんが、製造メーカー系のBtoB企業(法人営業)にとっては非常に頭を悩ませる問題です。実は、私の会社でも上記に書いたほど徹底してできていません。最後に、アカウントマネージャーの選出方法について記載してみましたので、こちらも活動を進めていく中で参考にしてみて下さい。
【参考】アカウントマネージャってどうやって選ぶの?
まずアカウントマネージャーが所属する組織ですが、理想の形は販売部とは違う部門、例えば営業技術部や販売企画部、私の会社のようにソリューションビジネス推進部が最も適しています。
しかし、これを実行するのは意外と難しいのです。アカウントマネージャーは基本的にはエリアの営業部門と一緒に動きます。ここの組織が違うと、アポイントの取り方や提案内容、現在やっている商談などの情報がしっかりと共有されず、効率が悪くなるだけでなく、お客様にも不信感を与えてしまいます。また人選部門も他社から引き抜かない限り、アカウントマネージャーは営業部門出身者になります。そのため、販売部門内に組織を置きたい場合は、営業部直轄におくことをお勧めします。
さて、具体的な人選ですがこれは一番のポイントです。機能する成功のポイントは、誰もが認める営業のエースクラスをアカウントマネージャーに抜擢することです。これは3つの理由があります。
①そのレベルの人材でなければただの2人目の営業担当になってしまう
②反発するエリア営業(担当、マネージャー)を抑え込むことができる
③他部門(会社内)に対してアカウントマネージャーの重要性を受けつけさせる
『彼を営業から外したら販売実績が落ちてしまうよ、冗談じゃない!』なんて声が恐らく販売の部門長から出ると思いますが、優秀な販売スキルを一部分で使うのと、全社で使うのでは、どちらが売上に貢献できるのかをしっかりと説明し、強い意志を持って組織づくりをしないと、ただの販売力の分割になってしまい、効果を生み出すことができません。
またエリア担当とアカウントマネージャーの立ち位置ですが、優秀なアカウントマネージャーが受け持った場合、お客様はアカウントマネージャーとの接触をメインに求めるようになってきます。これは正解です。
但し、アカウントマネージャーは予算数字を持っていないので、当然そこに販売活動が生まれればエリア担当の仕事になりますし、もちろん売上数字もエリア担当に計上されます。
モチベーションの高いエリア担当は、やや面白くないと思う人間も出てきますが、この競争力が大事です。今度はそのエリア担当もアカウントマネージャーになれるよう頑張れば、アカウントマネージャーの立場も向上しますし、営業のプロフェッショナルが自然と増えてきます。
いずれにしても、それぞれのセクターのアカウントマネージャーが定期的に、実施してきたことをそれぞれのエリア担当者へ報告(私の会社では週に一回アカウントマネジメント会議を開催していました)し、ここでも情報の集約と共有がなにより大事なことになります。
私もずいぶん苦労したところなので、今回もかなり長くなってしまいました。苦労してきた分、引き出しもたくさん持っていますので、ご質問のある方は是非、コメント欄でご質問ください。
ではまた次回まで、ごきげんよう!
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