さて、前回減りゆくお客様の数に対応するために商品を増やしていかなければならない話をしました。まずは自社製品の前後工程の機器・システムへ手を伸ばし、企業連携をしていくことを書きましたが、今回は製品の拡大策の2番目としてストックビジネスへの拡大をご提案します。自社製品が使用する資材や消耗品(自社製品でない)を扱うことで、納入した機械が設置されている間、ずっと収益を生み出してくれることになります。
迅速な新商品企画・開発のポイント(前回続き)
ストックビジネス(サプライ品販売)
ストックビジネスの良さは文字通り、毎日、毎月安定した売上と収益を上げることができることです。ます。BtoBの製造業の場合、イニシャル(機械価格)が高ければ高いものほど、月次の売上が大きく変化してしまいます。売れた時は大きな実績になりますが、売れない時は0になるなど管理者泣かせの製品です。
一つの製品で大きな売上があがるのも魅力ですが、やはり毎日の積み重ねで基礎数字ができる製品と合わさることで強い商品ポートフォリオが作れることになります。
ところがストックビジネスに参入する際の問題点はコンペチターが非常に多いこと、そして差別化要素が少なく、収益性があまり良くないのが一般的です。また、前回のとり上げた自社製品前後の機械販売をすることよりも販売部門やアフターセールス部門の抵抗が強く、また経理部門からもお客様によって単価の違う低額定期商品を扱うことから、社内のシステムに大きな混乱をきたす可能性があります。
このストックビジネス立上げの成功のポイントは下記になります。
1)絶対的な差別化要素を持っている(自社の機械はその資材しか使えないなど)
2)インターネット(IT)技術を最大限活用し、販管費を抑える
3)サブスクリプションなど入替リスクがすくないビジネスモデルを考える
(1)はサプライ品の開発に自社の技術力を付加し、特に自社製品に対して使用すれば、最も効率、または性能が良くなるサプライ品を開発することです。洗濯機メーカーが『この弊社の洗剤を使用すると最も洗濯物がきれいになります!』と言っている感じです。
コピー機のトナーや家庭用プリンタのインキカートリッジが専用品しか利用できないモデルはこの事例です。(最近はサードパーティ品も出てきていますが。。。)
またサプライ品単独では、なかなか差別化が図れないのも事実です。その際は自社の機械側を改造して、自社で開発したサプライ品しか使用できないようにする、または自社のサプライ品だとすごく便利に供給できるような装置でを提供することです。前者は100%縛りになるのでお客様からも嫌厭され、本体そのものの販売にも影響を与えることもあるので注意が必要ですが、製品そのものが良い製品であれば効果は絶大です。
また、そのサプライ品を購入している間は自社製品のメンテナンスや修理対応に対して特別なサービスを行っていくなど製品供給メーカーでしかできないを付加価値サービスを付加していくことが、ストックビジネス参入のポイントとなります。
(2)はサプライ品ビジネスは全て自社開発をしていない限り、取れて粗利20~30%の商品だけに販売や管理、発送、アフターサポートにコストを投入できません。ODM先との在庫量、配送方法、技術サポート体制などを販売前にしっかりと契約に落とし込んでおくことが重要です。
また販売に関してもサプライ品は日次の取引となります。これに細やかに対応するためには販売の人数を増やすか、自動化するしかありません。これだけのために営業マンを採用する訳にもいきませんので、ここは販売代理店をうまく活用することを考えた方が良いでしょう。
販売量と連動した仕切り価格の設定や代理店との定期的な会議、表彰制度、販売予算の設定とインセンティヴなど組織立てて進めないと、なかなか販売代理店に優先的に取り扱ってもらうことは難しくなります。
また、自動化を狙うのであればIT技術を活用し、自社製品の稼働状態からサプライ品の使用状況を自動で見える化するシステム(クラウド)を構築し、お客様の資材使用状況を見える化することで、在庫数から自動的に発注できるようなシステムができると強固な安定供給が見込めると思います。
私の会社でも自社製品(機械)と自社のクラウドを繋げるサービスを1年ほどで立上げ、ここ数年納入している製品は自社のクラウドと繋がっている状況となっています。現在は、機械の稼働状況をレポーティングしたり、エラーの情報から保守工事の推奨をしたりしていますが、なかなかサプライ品の販売を促進するようには使いきれていません。この最も製品品質としての差別化要素が少なく、少額な製品はITよりも販売のサプライチェーンがまだ大きな重きを持っています。日本の材料販売の代理店網の根強さはITより手ごわいことを現状では実感しています。
アフターセールス
そして商品拡大の3つ目はアフターセールスです。製品が売れていたころは、アフターサービスというと『新しい製品を売るためのサポート業務』であり、自社の製品に何かあった時に迅速に駆けつけて復旧することがメインの仕事です。特にBtoB製造業のサービス部門は、修理出張ごとに料金を支払うというモデルが定着しており、当然人員の配置や勤務体系を適正に行うことが難しくなるので、社内では修理出張員の稼働率がなかなか上がらず、そのあおりを受けて出張料金も高いものになるケースが多です。
しかし、販売サイドからはアフターサービスの良し悪しが、実際の製品販売に影響を与えることも少なくないため、その結果24時間対応や休日の対応、在庫パーツの過剰保有、修理代の値引きなどをアフターサービス部門へ要求してくるので、会社の中では収益を上げるということはあまり期待されず、とにかくお客様満足(営業満足ともとれるが。。。)のために『無駄があっても迅速に対応して』といったアフターサービスをしている会社が多くなります。
しかし製品が売れなくなってきた今、アフターサービスは最も重要な製品になりうると考えます。そこで今回、あえてアフターセールスと呼んで、従来のアフターサービスと分けて考え、どんな商品が考えられるのかを説明していきたいと思います。
アフターセールはなぜ魅力なのか?
では、アフターセールスがなぜ魅力的なのかについて、解説します。
まずは、当たり前の話ですが、販売の対象が多いということですね。普通の会社であれば、その年度に売れる台数よりも既存の製品の台数ははるかに多いです。保有年数の長い製品になればなるほど、既存の製品の数は多くなりますし、それだけでもアフターセールスにはビジネスの可能性が存在します。
新しい製品だと既に購入対象ではなくなっていたりするお客様があっても、既存の製品に対する製品であれば、まだまだ対象であったりします。これは成熟した市場においては変えがたいことです。
そしてもう一つは、原則的に競合がいないということです。これは販売側の人間とっては夢のような話ですね。企画をした提案が顧客の価値を上回れば、受注につながる訳で、よりソリューションビジネス的な商品展開が可能になります。
『ソリューションビジネスは経済価値に置き換える【第2回】』良かったら併せて読んでくださいね。
では、そのように好環境の中で、BtoB企業のアフターセールスはどのような製品を提供していけばいいのでしょうか?
Covid-19の影響で、やや落ち着いてきましたが、2018年ごろの日本における軽作業の人手不足は危機的な状況でした。今でこそセルフレジなどが採用され始めていますが、都内のコンビニエンスストアの店員は大半が外国人に代わってしまったし、私のお客様でも、軽作業に日本人を雇うことは難しく、ベトナムからの短期実習生を採用して、何とか乗り切っていました。
それでも近くにAmazonの物流センターなどができると複数単位で辞められてしまうなど、この問題は早かれ遅かれ、超高齢化社会と外国人受け入れの少ない日本にとって必然な事象だと思います。
製造現場も今後、省人化、省力化、無人化の動きは加速化することは間違いありません。生産する機械やシステムも革新的に自動化が進むでしょう。こういった慢性的な作業人員不足と機械の自動化によって、、お客様側のスキルも大幅に落ち込み、設備オペレーションの指導や、設備のメンテナンスなどにもビジネスチャンスが広がる可能性があります。
また、サービス部門は過去に蓄えた膨大な自社製品の修理履歴を持っています。これらを分析することで、壊れる前に修理を促していく予防保全の立案可能です。これはお客様にとっても突然のマシンダウンによる生産阻害を防ぐことができ、また製造メーカー側も計画的に工事をスケジュールすることができるので、出張作業者の稼働率を大いに高めることが可能になります。まさにWin-Winの関係が築ける訳です。
更にストックビジネスのパートで前述したIoTクラウドを活用することで自社製品の稼働状態(生産状況やエラー情報)を常時監視し、生産の最適化の提案をしたり、エラーの情報から壊れそうなところの予兆保全をするなどのアフターセールスも提供できるようになります。
この通り、アフターセールスは競争の無い大きな市場でお客様とWin-Winの関係を構築できる最も適した商品となることは間違いありません。
以上、いつもの通り長くなってしまいましたが、前回と今回でアカウントマネジメント活動を進める中でBtoB製造メーカーがやらなければいけない製品の拡大方法のポイント、参考になったでしょうか?
製品を拡大していく方法として、①前後連携する機械(システム)、②ストックビジネス、③アフターセールスの切り口で進めていくとバランスの良い商品構成になるのではないかと思います。それでは、次回まで、ごきげんよう!
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