さて、今日は販売(営業)部に対してソリューション営業を展開した時の話をします。営業という職種、特にBtoB企業(法人営業)の営業マンは個人商店化することが多く、なかなか情報共有が難しい部門です。まぁ、当然ながら私も営業時代は、営業車の中がオフィスであり、ホテルであり、本当に担当エリアに入ったら個人事業主のように働いていました。今から考えると反省が多いですね。
営業部へソリューションビジネスを展開する
従来の営業スタイルとの違い
以前の記事でも説明したように、モノが売れなくなったマーケットでは、お客様を選別し、そのお客様に対してより深くおつき合い(面の接触)をすることが重要になります。
私の会社ではアカウントマネジメント活動と呼んでいましたが、戦略的営業とか、ソリューション営業なんて呼んでいる会社もあります。(本記事は混乱しないようアカウントマネジメント活動で統一)
製品がそこそこ売れていた時の営業の場合、販売不振になると、1日の訪問数を増やしたり、アウトサイドユーザー攻略などを指示し、営業マンの活動量を上げることに力点が置かれます。
まだ訪問していないような市場が残されている場合はこの方法でも売上を伸ばすことができますが、そもそもお客様の数は減少し、1回目のパイの取り合い(シェア)が確定している成熟マーケットではムダが多くなってしまいます。新入社員が入るたびに対象ボーダーラインのお客様を訪問させるという行為も、今となってはかなりムダな作業と言えるでしょう。
恐らく、今後は平成初期に見られたような、新卒の営業マンが大量に投入されるようなこともないでしょうし、BtoB企業の営業も限られた人数で営業の効率を上げることが必要となってきます。この活動がアカウントマネジメント活動です。
ただ顔を出し、要件を聞き、時々お客様と食事をしているだけでは、なかなか販売に繋がってきません。なぜならお客様の今の心理は『できるだけ買いたくない』だからです。特にお客様側も世代が変わり、今までのおつきあいの深さだけでは競争に勝てなくなってきており、長期的な会社と会社のリレーションを築くことが求められています。
そのキーワードである顧客課題を見つける(Solution営業)ためには営業の販売方針も新しいものが必要となります。
成熟市場のBtoB企業がやるべきことが良くわからなければ下の記事も併せてどうぞ!
アカウントマネジメント活動
アカウントマネジメント活動とは、選別したお客様と面で接していく活動のことで『アカウント』とはそのお客様全体を意味します。従来の営業スタイルは、自社製品の購入決定権者だけに面会し、そのパイプを太めていくことを重要とする、どちらかといえば点で接していく活動です。アカウントマネジメント活動で営業を展開していく中では、顧客課題(顧客価値)を探し出さなければならないので、『アカウント』のいろいろなキーマンに接触していく必要があります。
例えば前回の記事で書いたように、その『アカウント』の営業マンに接触するとか、自社の製品を使用している部署ではなく、あえてその前後の工程の責任者に接触することなどです。
このようにリレーションのない『アカウント』のキーマンに接触するのには、自社主催のセミナーや製品展示会を使った集客などが有効になると思います。
では、従来の営業とアカウントマネジメント活動におけるソリューション営業とはどう違うのか、上の表も一緒に確認しながら説明しましょう。尚、ここでいうソリューション営業というのは、お客様に対して横断的に担当するアカウントマネージャーをイメージしていますが、そのような役割の人材が設置できない場合はソリューションビジネスにおける営業(部門)として理解頂いても構いません。
まず、お客様の折衝対象ですが、従来の営業であれば経営者を含めて、製品の購買決定権を持つキーマンでせいぜい2人~3人となりますが、ソリューション営業の場合は、この折衝相手(情報収集者)は多ければ多いほど良いことになります。
また目的は短期的な売上ではなく、長期的なお客様課題の発見となります。このように説明すると『ソリューション営業は製品を売らなくてもいいのか?』という表面上でしか言葉の意味を読み取れない営業マンが出てきますね。こういう営業マンはまだまだ製品を販売するという固有観念から離れられていません。
製品を売る前に顧客課題を見つけるです。こういった営業マンは結局、価格、納期、スペックで競合と真っ向勝負し、勝ったり負けたりを繰り返すことになります。第3回投稿『私の母の価値』で説明した通り価値に対する対価をもらうという発想が大事になります。
営業方針は、訪問管理から情報管理に大きく変わります。何件回ってきたではなく、どれだけ情報を持ってきた、が営業マンの評価です。また持ち帰った情報をメンバー全員で共有し、再利用をしていくことがなによりも肝心なことになります。
この辺の方針は従来の営業とは真逆になります。そのため上司が情報の有効性をしっかりと評価し、販売(営業)部全体に意識づけることも重要になってきます。また営業の教育方針も、従来の営業のスキル(接遇、商品知識や業界知識、話法など)よりも、情報の獲得手法や収集ルート、また持ち帰った情報の分析や再活用などのスキルを磨く必要出てきます。
最後に重要なのが販売方法(手法)です。上記にも書きましたが営業は属人化することが多く、実はそれが大きな効果を生んできたことも事実です。トップセールスマンが優良な顧客を担当し、それに憧れる部下が、その営業スキルを見て学んでいくというスタイルは一般的に良く行われていることで、成長市場では一定の効果を上げてきました。
しかし成熟市場では一人一人のスキル強化も重要ですが、それ以上に優秀なスキルを組織全体で共有し、スキル不足のメンバーでもトップ営業と同じ販売活動ができるように再活用することがなにより重要です。
つまり売れる営業マンのノウハウを全部吐き出させて、それを誰でもできるように標準化をしていく作業になります。最初は非常に抵抗感が強いので、売れる営業マンへの評価方法は絶対に抑えておかなければなりません。(そのまま競合に走る営業マンもいますので。。。)
さて、そろそろまとめに入ります。
今回はソリューション営業を進めていく上で重要なアカウントマネジメント活動を、従来の営業スタイルとの違いを軸に説明させて頂きました。
そのポイントは①お客様と面で接触すること、②お客様の課題を見つけること(お客様が気づいていない課題を見つけられたら最高)、そして③チームセールスと情報の共有・再活用です。
さて、今回も1冊本を紹介したいのですが、営業マンって営業論が書かれた本を敬遠する傾向ってないですか?私は書店などで『売れる営業』とか、『優秀な営業がやっていること』などというタイトルの書籍をみると興味がある反面、絶対に手に取りませんでした。営業としてのつまらないプライドでしょうか?そんな中、この本は購入しました。日々の営業活動のヒントの1つにはなる本だと思います。
販売不振で困っているBtoB系企業の営業マネージャーは、一度この考え方を実践して頂けたらと思います。では、今日も長くなりましたが、ここまでにします。また次回、ごきげんよう!
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