年末、年始と多忙ですっかりブログが更新できませんでした。おかげでブログ開設1周年も何だかわからないうちに過ぎてしまいました。しかしブログをはじめて1年、いろいろな人と交流ができ、また閲覧した方からご意見や、リクエストなども頂き本当に感謝です。今年は頑張って、もう少し頻繁に、またBtoB系製造業の役に立つ投稿をしなければいけないと思っています。
さて、今回は何回か投稿している『強い組織の作り方』シリーズです。以前、ミッションとビジョンについては書きましたが、今回は社内の行動指針であるバリューについて説明したいと思います。
組織の行動指針(バリュー)
ミッション・ビジョン・バリューとは
過去の投稿で、強い組織を作るためには、まず、その組織やチームに所属するメンバーが同じ目標意識を持っているということが何より重要で、またこれをしっかりと共有している組織は、非常に生産性が高くなり、強い組織を構築しやすくなります。
組織やチームの意思統一のための用語は、企業によっていろいろ呼び方が違いますが、ここではドラッカーが提唱した代表的な考え方であるミッション・ビジョン・バリューで説明しておきます。ちなみにミッションとビジョンについては別投稿『強い組織の作り方~ビジョンとミッション【第82回】』で詳しく解説していますので、是非こちらも一緒に読んでみて下さい。
組織メンバーを同じ方向に導くためには2方向の意思を統一させる必要があります。一つはお客様や社会など外部に対して宣言するもの、つまりビジョンやミッションです。ミッションは自分の組織が社会の中で『こういった存在になりたい』という事業目的になり、またその目的を達成した結果作られる社会の形を表現したものがビジョンになります。
そのためビジョンとミッションは必ず対になり、深い関連性を持つことになります。
そしてもう一つは、組織やチーム内部に宣言するもので、これがバリューとなります。
バリューの設定
バリューは前述の通り、内部で宣言する組織内の行動指針です。バリューとは呼ばず、そのまま行動規範とか、行動指針などと呼んでいる会社も多く、また同意義でクレドとかコンピテンシーなどと表現している会社もありますが、だいたい同じ内容です。また組織単位というよりは、企業全体で制定しているところも多く、その会社の企業風土を創り出すものと考えられます。
バリュー(行動指針)は全社的な指針なので、なかなか組織やチーム単位で勝手に変更するわけにはいかないのですが、そもそも全部門で使えるように決められたものであるせいか、やや大きなテーマとしてシンプルに書かれているものが多い傾向があります。
それだけに受け取る側も、ある程度フレキシブルに考えることができ、企業が定めているバリュー(行動指針)を自部門で共有しやすいように、よりわかりやすくしたり、業務に合わせて一部を強調したりすることで組織やチームのバリューを再定義することができます。
もちろん、企業が制定した全社バリュー(行動指針)のメッセージが強く、企業の風土・文化をしっかりと伝えているものであれば、そのまま、その全社バリューを遵守する方が良いでしょう。
どの会社もバリュー(行動指針)については、箇条書きで表現され、社員が覚えやすいようになっているケースが多いですね。いくつか有名な日本企業のバリューをご紹介しておきましょう。
スターバックス |
私たちは、パートナー、コーヒー、お客様を中心とし、Valuesを日々体現します。 お互いに心から認め合い、誰もが自分の居場所と感じられるような文化をつくります。 勇気をもって行動し、現状に満足せず、新しい方法を追い求めます。スターバックスと私たちの成長のために。 誠実に向き合い、威厳と尊敬をもって心を通わせる、その瞬間を大切にします。 一人ひとりが全力を尽くし、最後まで結果に責任を持ちます。 私たちは、人間らしさを大切にしながら、成長し続けます。 |
花王 |
よきモノづくり 絶えざる革新 正道を歩む |
コカ・コーラ |
学ぶ向上心を忘れません 変化を恐れず機敏に行動します 結果を見据え最後までやりきります 誠実と信頼に基づいた気高い志で行動します |
ソニー |
夢と好奇心:夢と好奇心から、未来を拓く。 多様性:多様な人、異なる視点がより良いものをつくる。 高潔さと誠実さ:倫理的で責任ある行動により、ソニーブランドへの信頼に応える。 持続可能性:規律ある事業活動で、ステークホルダーへの責任を果たす。 |
ローソン |
1.マチ一番の笑顔あふれるお店をつくろう。 2.アイデアを声に出して、行動しよう 3.チャレンジを、楽しもう。 4.仲間の想いを、ひとつになろう。 5.誠実でいよう。 |
バリューの社内展開
さて、このバリュー(行動方針)は制定するだけでは意味がありません。ミッションやビジョンと同様、もしかするとそれ以上に組織やチームメンバーが理解し、共有しなければならないものです。そのためにバリューの決定方法、またその組織展開の仕方をしっかりと抑えておきましょう。
まず、決定方法ですが、すでに存在するバリュー(行動方針)を活用する場合は、そのバリューに対して、自部門に合わせたサブテーマを作るようなイメージが良いでしょう。また、新しくバリューを設定するときは下記の点に気をつけて考えるようにしてください。
【バリュー(行動方針)の選定方法】
1)シンプル&イージー(簡単で短いか?)
メンバーがすぐに覚えることができ、またイメージが湧くようにシンプルさは重要です。スローガンやキャッチフレーズとは違うのでワンワードである必要はありませんが、なるべく短く、普遍的な言葉で表現するようにします。
2)社会通念の遵守(一般的なモラルを守っているか?)
これは問題ないかと思いますが一般社会のモラルが守られているものになっているか?ということです。グローバル企業の場合は自国のモラルだけではありません。商売を行う全ての国に対して、しっかりと社会通念が遵守されているかを確認する必要があります。
3)ミッションとの強い連携
メンバーがバリュー(行動方針)を遵守していくことでミッションの達成に繋がっているのかも重要なポイントです。企業、または組織はコスト以上の成果を上げなければ永続的に存続できません。バリューも、それを遵守する社員が集まったとき、ミッション達成の可能性が最大化するようにならなければいけません。
このようにしてバリュー(行動指針)の選定方法を守りながら考えると、自然と箇条書きのシンプルなものになっていきます。では、いよいよ、この決めたバリュー(行動指針)を組織(チーム)内に展開、共有、浸透させていくにはどのようにしたら良いでしょうか?
これについてはビジョン・ミッションの投稿でも触れましたが、組織が大きければ大きいほど一朝一夕で浸透するものではありません。長い時間をかけてゆっくりと浸透していくわけですが、決定側の一方的な押しつけでは定着もしませんし、もちろんせっかく決めたバリュー(構想指針)も絵にかいた餅になってしまいます。
バリューに限らず、上位方針、特にバリューやビジョンなどといったポリシーを伝えるときには受け取る側目線で進めなければ絶対に失敗します。
また短期間で全員に浸透させることを考えないことです。どんなに素晴らしい会社でも2割はコスト以上の成果を出していないと言われています。ましてやポリシーの定着となれば、半分のメンバーが理解していれば相当優秀な組織だと思います。まずは上位層と中核社員(実力者)で自分の方針をしっかりと理解してくれるメンバーを全体の10%作ることです。これが核となり、次第に影響されている人が増えていきます。
ここでいう中核社員はいろいろな部門の次期リーダー候補たちです。これらのメンバーには選抜型の研修や専門のチームを編成して、組織を動かす羅針盤としての機能を果たしてもらいます。ちなみに、私はこのチームを『経営チーム』と呼んでいます。
【バリュー(行動方針)の共有・浸透方法】
1. 【共感・共有】言葉の意味を理解し共感する
2. 【実践・行動】具体的な行動をイメージし、実行する
3. 【評価・定着】成果を生み出し、その結果を評価される
文章だけだとわかりにくいと思いまして図表も作成してみました。少しは理解しやすくなったのではないでしょうか?いずれにしてもこれらの上位方針の浸透には非常に時間がかかります。『なぜ、わかってくれないんだろう』ではなく、わかってくれない理由をしっかりと確認しながら受け取り側目線で 進めることが、なにより重要になります。
過去の投稿『強い組織を作り方~意識改革の4接点【第80回】』にも意思疎通のポイントが書かれています。Yahooの事例から取り入れたOne on One面接などは非常に効果的なので、是非参考にしてみて下さい。
さて、今回はいかがでしたでしょうか?これまでに数回連載してきました『強い組織の作り方』シリーズでビジョン・ミッション・バリューについて一通り説明しました。またそれらに基づいた戦略と戦術の立案方法についてもちょっと前に投稿しています。
私は、次世代のリーダーを教育するのに、まずこの企業の存在意義の部分についてかなり時間を割いて教育しています。それがなによりも組織の意思統一に繋がるからです。10人ぐらいの組織であれば力技で、なんとでもなりますが100人以上の組織になると一人で頑張ってもどうにもならないことを経験しました。その時は、このビジョン・ミッション・バリューを明確に打ち出し、同意してくれる同志を組織内に1割作ることです。この1割が次の1割を生み、次第に組織全体に方向性が見えてくれば、あとはファインチューニングです。ぜひ、今組織のことで悩んでいる人があればビジョン・ミッション・バリューについて考えてみて下さい。
今回はこれまでです。また次回、ごきげんよう!
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