製造業のカスタマーサポート部門の電話対応【第77回】

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スマートカムアフターサービス

ソリューションビジネスに始まり、アカウントマネジメントやデジタルマーケティングなど、なるべく現在のビジネストレンドを中心に投稿してきました。今回のテーマはかなり以前から投稿しようか悩んでいたテーマですが『今さら電話対応。。。』という思いがあり、踏み切れませんでした。
しかし、最近は携帯電話でのやり取りが当たり前になり、また昔のように研修などで、手取り足取り教えてくれなくなったせいか、電話対応の基本が本当にできていないのを感じます。
今回はややレベルが下がりますが、特に製造業におけるカスタマーサポート(いわゆる修理受付部門)の電話対応に焦点をおいて、電話対応の、初歩の初歩について説明したいと思います。

カスタマーサポート(修理受付部門)の電話対応

BtoB系製造業のカスタマーサポートの宿命

カスタマーサポートというと広いオフィスに女性スタッフが100人ぐらい並んで、お客様からの問合せに対応しているコールセンターをイメージしますが、それはどちらかというとBtoC系の企業の話です。製造業、特にBtoB系製造業においては、故障の受付がメインの業務になります。
生産している機械が故障し、止まっているわけですから、お客様は非常に困っている、または少々いらだっている状況でコールしてくるわけです。
これが営業部門や部品、消耗品の販売部門、または総務などであれば、お客様もフラットな気持ちで電話をしてきますが、こちらはそうはいきません。これがBtoB系製造業カスタマーサポートの宿命なのです。

そこに加えて、このような修理対応部門の社員はだいたいが技術者ですから、この電話対応が極めて苦手です。ぶっきらぼうハッキリしないタメ口など、営業部門では考えられないような対応をしてしまいます。ただでさえイライラして電話をかけてきたところに、そのような対応をしたら、結果は火を見るより明らかですね。
そういう観点から考えると、製造業のカスタマーサポートは営業や受付以上に細やかで丁寧な対応が必要になります。

電話対応の失敗例

電話対応の失敗はいにしえからずっと続いている問題です。私が営業部の新人だったころは、まだ携帯電話もない時代なので、新人の最初の仕事は電話対応でした。マニュアルでたった1日の内部教育を受けて、いきなり実戦でした。『ワンコール以内着信』『メモと復唱』『切る時は相手から』など先輩に叱れながら、徐々に覚えていきましたが、この時の対応は今でも機械的に身についています。
しかし最近はお客様とのコミュニケーションツールが多彩になりました。会社の固定電話は、概ね携帯電話に変わり、それ以外でもe-Mailショートメールなどが多く活用されています。
特に本社(総務、販売、販促、経理)部門では、リモート勤務なども増え、会社の固定電話の利用は急速に減っている状況なのですが、それに伴って固定電話の対応は、以前には判で押したようにマニュアル対応をしていたのですが、全体的にやや疎かになっている感じがします。

さて、本題の製造業のカスタマーサービス部門に目を向けてみると、こちらはまだまだ固定電話対応が主流です。録音ガイダンスなどを使って、ある程度サポート内容を絞って着信する場合や、コールセンターを設置して、まず一括で着信をするなど工夫はしていますが、まだまだお客様を満足させるような対応にはなっていないところが多いのです。
さらに前述した通り、この部門には既に不利(ディスアドバンテージ)の状態で応対しなければならないので、対応を間違うと大変な信頼失墜に繋がってしまいます。
私の会社では、電話対応を顧客データベース(CRM)と連携させ、着信の際に発信元の顧客データが着信者のモニタに自動的に表示させたりしています。また着信した時の時間内容(録音)を全て記録していたりするのですが、これらは分析や後追いには役に立つのですが、受電の際の電話に対するクレームはなかなか減りません。
これについて私の感覚では下記3点が大きいと考えています。

①名乗らない
これは本当にダメです。会話をしている相手がどこの誰だかわからないで会話をしていたら、お互いコミュニケーションが図れません。電話はただでさえ表情が見えないコミュニケーションですから、音声(トーク)情報だけでコミュニケーションを合わせていかなければなりません。
まずは、私がどこの誰で、話しているのはどちら様なのかを明確にして進める必要があります。名前が確認できたことで、お客様側は『〇〇さんにコンタクトすればいいんだな』という安心感につながりますし、電話を受けとった側も名乗ったことで『責任を持ってやらなければいけない』というよりプレッシャー(使命感)に繋がります。

②あいづち
これは録音して聞き直すとすごく良くわかるのですが、実は電話をしている最中はなかなか気づかないものです。(隣で聞いてると『あっ、印象悪いな』ってすぐ気がつくのですが。。。)なので、ある意味、最も不満爆発に発展する可能性があります。
『はいはいはい』とか『うん、うん』など、録音を聞かせると恥ずかしくなるぐらい感じが悪いのですが、電話の最中は気がつかないんですね。またちょっと聞き取れなかった時『えっ』とか『はい?』なんていうのも印象悪いです。
また電話を受けつけている時の態度は声にハッキリと映し出されます。ふんぞり返って謝っても電話の向こうには伝わってしまうものです。
営業マンにとってお客様は『製品を購入してくれる大事な人』という意識が強いのですが、アフターサービスのメンバーはともすれば『わがままで怒ってくる人』という意識で対応している人がいます。この意識では自分では気がつかないところに、つまりあいづちに不満が出てしまうのです。

③たらい回し
顧客アンケートなどを展開すると、最も多いナイナス意見は、対応時のたらいまわしです。次々と担当が変わり、その都度説明させられるも課題は解決しない。挙句の果てには折り返しもなかった、などといった対応は、機械の不具合じゃなかったとしてもイライラします。
これは立場を置き換えて考えるクセをつけなければなりません。次々と対応者が変わる不安、保留で待たされる苛立ち、問題が解決しない怒り、立場を逆にすればやってはいけないことがわかるはずなのですが、指示だけではなかなか治りません。
そんな時に、対応している時を録音してメンバーで聞くことは、問題を解決するのに非常に役立ちます。保留30秒が待たされている人にとってどれだけ長いのか?受付担当が変わるたびに、状況を一から説明させられていることがどれだけストレスを与えるのかを、対応している人たちに聞いてもらい、腑に落ちてもらうことで一気の解決につながります。

カスタマーサポートに対しては、何回も話をしている通り、既に発信者が『不満を持っている』わけですから、最初の1分間でこれをどう和らげていくのかが、極めて重要になります。

以前『文字情報と聴覚情報と視覚情報では7:38:55ぐらいの違いがある』という情報の伝わり方の違いについて投稿した記事がありますので、こちらも参考にしてみて下さい。(メラビアンの法則【第43回】

メラビアンの法則【第43回】
『眼は口ほどにものを言う』と良く言います。特に視線は反射的に動いてしまう器官なので、その時の心理状態を瞬時に表現してしまいます。たまたま週末にTVでこの言葉を耳にした時に、『メラビアンの法則』を思い出しました。この法則、私は業務上のいろい...

電話対応の3原則

あいさつとか電話対応、5Sなどは企業風土です。老舗企業の一部では、事業は非常に先進的なものを扱っていても、このような文化が引き継がれている会社も数多く存在します。とはいえ、お客様は企業風土が変わっていくのを待ってはくれません。
この章では、まず取り組める内容として3原則にまとめてみました。自社の電話対応に悩んでいる管理者の方がいれば参考にしてみて下さい。尚、実行していくためには強制力が必要です。悪者になる覚悟を決めて短時間で進めることをお勧めします。
また、今回は販売やインサイドセールス、コールセンターなど電話のプロに対するテクニックではありません。あくまでも電話対応の初歩の初歩として原則論として説明していきます。

原則1:第一声に全てを込めろ!

電話は表情や雰囲気が伝わらないので、第一声が非常に重要です。第一声で好意を持ってもらえれば、その先は比較的友好的に進みます。こちらからかける時は、事前にレビューができますが、かかってきた電話に対してはその場での判断が必要となります。
製造業のカスタマーサポート部門は、かかってくる電話に対応することが多いので、特に難易度が高くなります。それだけに考えられるパターンを蓄積する必要があるのです。

『第一声は明るく、最大限の敬意を払って対応する』これは反復練習しかありません。全員ができるまでマニュアルを作成し、研修し、OJTの中で注意しあって進めます。

すぐに明るく振舞えなくても、まず『どこの誰だかを名乗る』ことはできるでしょう。これだけでも電話をかけてきた方は安心しますので、かかってきた電話であれば
『〇〇株式会社 ××課のFujiwebsと申します。いつもお世話になっております。』
転送されてきた電話であれば
『お待たせいたしました。××課のFujiwebsでございます、いつもお世話になっております。』

ここまでは展開したその日にできるようにしましょう。また電話を切る時も
『××課のFujiwebsがお承りました。お電話ありがとうございました。』です。
この『ありがとうございました』という締めは、電話を頂いた時だけでなく、いろいろな場面で使えます。営業時代も良く使っていました。
さんざん怒られた後に帰り際に『本当に申し訳ありませんでした。ありがとうございました。』という感じで使っていましたね。何がありがたかったのかは関係ないのです。人間はありがとうと言われると心が和らぐものなのです。

原則2:ネガティブ、自分の都合の発言は禁止!

カスタマーサポートで受付する電話対応の中で、特に禁句なのはネガティブな発言、つまり『できません行けません』など全面否定の言葉を使うこと、そして『それでは私が困ります』とか『ちょっと会議があるので』といった個人や自社の都合を言い訳にすることです。

お客様は現在の課題を解決して欲しくてかけてきているわけですから、そこで全面否定をされたら、もうすがるところがなくなります。かなり難しい内容でも『まずは一度受けとめる』を忘れないようにして下さい。ベテランの技術者ほど自己の判断で解決を試みる人が多いのですが、まずは一度受け止めてそして親身になって問題を解決に全力を向けることです。
人の命を守る医者の気持ちになり、機械やシステムを患者に置き換え対応すれば、結果が同じになっても、そのトライはお客様に伝わります。
製造業のカスタマーサポート部門は、毎日相当量のコールがかかってきます。怒られ、ムリを言われストレスが溜まっています。そんな気持ちが電話対応に出てしまうことがあるのですが、お金を頂いている側と支払っている側では立場は違って当然と考え『まずは一度受けとめる』そして『最後の最後まで解決のために対策を考える』ことで真のサポート部門に近づけると思います。
また、電話だけの話ではないですが、できない理由に個人の都合を話題に出すのは絶対にダメです。お客様はわれわれの会社にサポートを求めているので、個人の都合は関係ありません。『私の立場がなくなります』などは知ったことではないのです。

更に、できない理由に会社の悪口を使用するのも同様です。『うちの会社のルールで』とか『うちの開発が悪いので。。。』『うちの営業はいつも。。。』ということを言い訳にしている本人は、責任を逃れているような気分になっているかもしれませんが、聞いている側は『そんな会社なのか?』と会社自体の信頼を大きく失います。

原則3:口ぐせを理解し、消す!

口ぐせは一度気がつくと本当に気になるものです。私はマーケティング部にいた時、セミナーをかなりの回数こなしていました。自分でも話し方については自信があり、口ぐせなんてないだろう、と思っていましたが、ある時のセミナーの動画を見てびっくりしました。『まぁ。。』という言葉を90分のセミナーで20回以上使っていました。
セミナーは口ぐせも個性ですが、電話対応ではなるべく無くしたいものです。特にあいづちについては日ごろのクセが必ず出ますので、ぞんざいに聞こえるあいづちは、周りの人が注意し、減らしていかなければなりません。
とにかく返事は『はい』『かしこまりました』。口ぐせが出そうになったら飲み込む(一呼吸入れる)ようにしていくことです。
少なくても『はいはいはい』『えっ?』『はぁ』飲み込んで下さい
また、これも電話だけではありませんが『聞き8、話し2』です。お客様の話を聞き役に徹し、お客様が話している最中に切り返さないように心掛けることです。
カスタマーサポートは電話対応の改善で、相当評価が変わります。今回の内容程度であれば1か月もあれば徹底できることなので、即実行に移してみて下さい。

最後に、いつもの通り参考になる書籍をご紹介しておきます。電話対応については、結局、新人研修のようなものが多いので、少し角度を変えてクレーム処理の本を推薦します。『役所窓口で1日200件を解決!指導企業1000社のすごいコンサルタントが教えている クレーム対応 最強の話しかた【山下由美著(2019年)】』(タイトル長い。。。)

さて、今回の投稿はかなり初歩的な内容となりました。『電話対応なんて今さら。。。』と言われそうですが、リモートプレゼンテーションバーチャル展示会デジタルマーケティングなど、人と人がコミュニケーションをとりながらやるビジネスに変化が起きています。
まだ、私のような前時代的な人間が残っているうちに、コミュニケーションとしての原点をしっかりと会社の風土、文化の中に残していくことが会社の差、ブランド力の差になってくるのではないかと考えます。
今回は、これまでです。また次回、ごきげんよう!

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