こんにちは、現在、私のブログは半分ぐらいの訪問者が『アカウントマネジメント』というキーワードを経由してアクセスされています。このアカウントマネジメントは成熟市場、特に私が対象にしているBtoB系製造メーカー(法人販売)にとっては最も重要な販売活動手法だと思います。今回はおさらいも兼ねて、アカウントマネジメント活動、並びに法人営業の効果的な手法についてお話したいと思います。
アカウントマネジメント
BtoB系製造メーカーのソリューション
まずは、おさらいから。私は入社して約25年ほど営業職をしていたわけですが、この経験は何にも代え難いものでした。私の会社の製品はほとんどが億単位の製品であり、もちろん法人相手の商売でした。また、その製品の性格上、経営者に直接面会することが多く、2年目や3年目の営業マンでも普通に経営者とアポイントを取って営業ができるような、やや恵まれた環境でした。
経営者との会話は家族経営の会社でも、従業員500人規模の中堅会社でも、それぞれに哲学があり、当時は毎日当たり前のように訪問していましたが、その時の経験が自然とバランスのある感覚を身につけてもらえたのではないかと思っています。
私がブログの中で『営業は誇り高き職種』とたびたび発言しているのは、この会社の最前線で、直接顧客の声を聴くことができるからです。
さて、現在の日本でBtoB系製造メーカーが大変な苦境に立たされています。特に内需に関しては、急激な供給過多になっており、つまりお客様は『新しい製品を欲しくない』というマインドになっていると言うことです。
これを打開するのが、このブログの最大のテーマであるソリューションビジネスです。お客様の本当の課題を見つけ、それに対する答えが製品、またはサービスにならなければ絶対に売買に至りません。
これからの時代は、この課題をより細分化し、同じ製品でもユーザーグループごとに提案を変更していく必要があると思います。
BtoB系製造メーカーはどうしても技術目線になりがちです。これは販売を担うマーケティングや営業部門も同様です。自社の製品がどのくらいすごいのか、技術的な話に提案が終始してしまいます。
お客様が聞きたいのは、その製品が自社に何をもたらしてくれるのか?、儲けることができるのか?というところがポイントです。
開発部門だけでなく、マーケティング部門や販売部門も、この点についてまず頭を切り替えることが必要です。この点が実はBtoC系企業の売買と絶対的に違うところなのです。
BtoB系企業の売買は投資、BtoC系企業の売買は消費なのです。
なぜアカウントマネジメントが必要なのか?
前述した通り、BtoB系製造メーカーの内需は相当厳しい状況です。課題を見つけ出し、ユーザーグループごとに提案をしていくとなった場合、エリア担当制の営業組織では限界があります。
成長市場で訪問数がそのまま売上に直結していた時は、エリア制でより細かくユーザーをカバーしていく営業手法は有効でしたが、購入できるお客様が限られてきており、課題を洞察しながら価値提案をするとなると下記2つの点で問題がでてきます。
1)担当者次第で売上に差が出てしまう
2)お客様の課題が共有できない
(1)は良くある話です。優秀な営業マンがいる地域はたくさん売れ、凡庸な営業マンの地域はあまり売れないという当たり前の原理です。縮小した市場において、製品の失注は大きな痛手となります。特に重要度の高いユーザーから不信をもたれると将来に渡って失うものが多くなってしまいます。
また(2)は、しばしば見過ごされる話なのですが、東京本社の成功事例が、九州支店では全く共有されておらず、競合に負けてしまったような話です。
営業に限らず、数字で評価される部門は、この情報の共有と再活用があまり上手ではありません。自分の、または自組織の武器として隠し持ってしまう傾向があるのです。
これら(1)、(2)の問題点を横断的に解決するのがアカウントマネジメントであり、その責任者がアカウントマネージャーです。貴重な戦力を重要な戦場に集中的に投下し、将来永続的に収益をもたらしてくれるお客様をしっかりと押さえこむマーケティング活動です。
アカウントマネジメント活動の進め方
さて具体的にアカウントマネジメント活動を進めていく方法を説明します。アカウントマネジメント活動は大きく3つのやるべきことがあります。
1)お客様の選別(セグメンテーション)
お客様を販売製品、またはお客様の業態、地域特性などで細分化しユーザーグループを作る。それぞれの上位5~10%のお客様を選出する。選別方法は収益、売上、信用調査会社の評点、自社との取引実績、業界の影響力などいろいろな切口でスコアリングする。
2)アカウントマネージャーの選出
上記で細分化したユーザーグループごとにアカウントマネージャーを選出する。アカウントマネージャーは必ずトップ層の営業マンから選出し、可能であれば販売推進部門の所属とする。アカウントマネージャーはエリア担当とは別に、ユーザーグループの選出された上位会社を担当し、そのユーザーグループの課題を見つけ、自社の製品、サービスの提案(ビジネスモデル)を立案する。
3)アカウントプランの作成
アカウントマネージャーは担当になったお客様を徹底的に調査し、1年~3年の行動計画を作成する。アカウントプランは企業情報や販売計画だけでなく、リレーション(人間関係の構築)、ソリューション(どんな課題をどのように解決するのか)も書き入れ、エリア担当や上長にも共有できる状態にする。またアカウントプランは1か月に1回程度、エリア担当、責任者、上長や場合によっては企画、開発部門も参加して進捗状況を発表し、適宜修正を加えながらPDCAを回して進める。
私も30年近く販売に関する仕事に携わってきましたが、売れる営業マンの特徴の一つに『好奇心旺盛』というものがあります。一見気が散りやすいというイメージを与えがちですが、好奇心が強いということはお客様のちょっとした反応や言葉尻に敏感になれるということです。
顧客課題を見いだせる営業マンは会社の中にそれほど多くいるわけではありません。売れる営業マンのこういったエッセンスを一部門のある特定のエリアだけで使うのか、それとも全社的に優良なユーザーに向けていくのか、どちらを選べばよいかは火を見るより明らかです。
この活動の最大の敵はエリア営業の部門長です。押し切られそうな時は、上記の言葉を思い出し、強い意志で進めて下さい。
さて、いかがでしたでしょうか?BtoB系製造メーカーがシュリンクした市場で戦っていくためのマーケティング活動・アカウントマネジメントをご理解頂けたでしょうか?
実はアカウントマネージャーというのは外資系企業では昔からよくある役職名だったのですが、日本においてはエリア制担当というのが一般的で、しばしばこれがネックになって戦略的な営業組織が作れません。
会議などでもしばしば『総論賛成、各論反対』となり、声の大きい営業部長が『実際にうまくいくわけないし、彼を担当から外すことなんてできない!』の一言で片づけられてしまうケースが多いのです。
アカウントマネジメント活動は計画よりも実行が全てです。各部署がマトリックス型の組織になって進めていけば、優秀な営業マンが全国の優良な会社から集めた顧客課題はソリューションビジネスを進めていく上で非常に大きな財産になります。会社全体の資産を増やしていく目線で、是非組織のあり方から見直してみるのも良いかと思います。では、今回はこれまで、ごきげんよう!
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