本業の製品の販売数が落ちてくれば、当然ながら新しい商品を市場に投入していかなければならないですね。製造業であれば新しい製品を企画、開発していかなければならないのですが、顧客課題や市場のトレンドの変化のスピードは非常に早まっている中で、1年も2年もかけて製品の企画、開発をしていると、市場に投入する頃には時代遅れになっている可能性も十分に考えられます。
今回はBtoB系製造業がスピード感が増す市場トレンドの中で、どうやって迅速に新製品を新しい市場へ投入していけるのかについて一考察をお話したいと思います。
新規商品開発
新しい商品はどのように考えれば良いのか?
BtoB企業、特に製造業が取扱い商品数を拡大していく時に重要なポイントは極めて単純ですが、まずは本業から大きく離れないことだと思います。
例えば、既存の製品と製品カテゴリーは違うが、使われる工程が連続しており連携性が保てる製品をラインナップするなどがあります。生産財メーカーであれば、鉄板を打抜くプレス機械を販売していれば、その前後の工程で必要な機械も製品として取り扱うなどが考えられます。また素材メーカーであれば、素材加工だけでなく、より最終製品に近いところまで製造するなどもありますね。
また既存の製品との全く連携性はないが、同じサプライチェーンを利用して販売できるなどという製品拡大策も考えられます。プロパンガスの販売事業から同じチャネルを利用して、ウォーターサーバー事業に製品拡大した事例などが挙げられます。
いずれにしても、本業から1つ、多くても2つぐらい外したところに新製品のビジネスを見つけることをこころがけたいところです。
M&Aなどをして組織・社員丸ごと引き取るのであれば比較的影響は限定的だと思いますが、あまり本業から離れた製品をローンチすると、お客様の最前線にいる販売部隊、アフターサービス部隊の負担が大きくなり、体制がなかなか構築できず、販売が思うようにいかないことも多いです。
新製品に限らず、新規事業などを検討する時にアンゾフの成長マトリックスと呼ばれるフレームワークがあります。非常に有名で、頻繁に活用するフレームワークなのでご紹介しておきますが、今回は、本業からあまり離れないところ、俗にいう伝い歩きの中で、迅速に新製品を生み出していくポイントに絞って説明します。
実は私の会社で実施した経験からのものなので、他にも良い切り口があるかもしれませんが、参考程度に活用頂けたらと思います。(当然、失敗したものもたくさんありました。。。)
以前投稿の『成熟市場での製造メーカー【第4回】』にもヒントになることがいくつか書かれているので併せてご覧ください。
迅速な新商品企画・開発のポイント
①前後工程の機械の取扱い
まず、BtoB系製造業、生産財を扱っている会社であれば、自社の製品の前後の工程を担っている製品をセットで取り扱うという拡大策が考えられます。
これであれば対象顧客もそれほど変わらないし、販売部隊もサービスサポート部隊も馴染みがあるので、比較的スムーズにスタートできます。
お客様に対する課題解決策も幅が広くなりますし、最も取組みやすい新商品開発だと思います。どのような機械、システムを扱っていくのかについては自社の立ち位置によってもだいぶ変わってくると思いますが、以下のようなことが選択肢として考えられるのではないでしょうか?
1)国内企業と業務提携をしてお互いの機械の代理店となり販売する
2)アジア、中華圏の企業からOEM供給を受けて自社ブランドで販売する
3)海外のトップシェアメーカーの代理店となり国内で独占販売する
最も迅速に、リスクも少なく進められるのは間違いなく(1)です。国内でもこのような話は日常茶飯事行われていますが、ほとんどの場合、記者発表(プレスリリース)がメインイベントで、その後は両社ともビジネスとしてはワークしないことが多いですね。特に似たような規模の会社の提携はパブリシティやイメージ戦略に近いものを感じます。
逆に企業規模に差がある場合はM&Aによる拡大も多いに考えられる拡大策です。
(2)についてはコストリーダーシップ戦略によるビジネスの拡大策です。既に存在するマーケットに新しく乗り出すために、アジアの安価な機械メーカーと協業し、自社の知財を加えて、短期間に市場に乗り出すことが目的となります。
(3)はビジネスを始めるまでには若干時間がかかりますが、提携先次第では非常に大きなビジネスになります。
(2)の利点は圧倒的な収益性です。本業の製品では、その低価格がライバルとなりうるわけですが、そこを逆手にとって製品を仕入れることができれば、大きな利益を上げることができます。
成功の秘訣は、その会社の扱おうと思っている製品のマーケットシェアです。売れているものにはなにか差別化要素があると考え、シェアの高い会社との提携を数社検討していくのが良いでしょう。
これは私見ですが、日本と同じ品質保証をするためには、ほぼ日本と同じ製造工場と人を用意しなければ不可能です。これをやったら提携する意味がなくなってしまうので、なるべくオリジナルの状態で安く購入し、品質保証は自社内(国内に持ってきてから実施する)で実施し、更に重要な部分は自社の技術を組み入れて内製化を進めていくことです。当然、その際は提携先との契約に変更した際の知財の所在等を条項にしっかりと明記しておくことが重要です。
(3)の利点は比較的、品質保証やドキュメント(マニュアル、パーツリストなど)などに手間が掛からないことです。また最近のキーワードであるデータ連携なども国際規格に則って柔軟に対応しているので進めやすいです。もちろん両者の機械を連結したりすることで省力化・自動化を推進する際もお互いの技術力が活かせることになると思います。
価格勝負ではないROI提案を展開するソリューションビジネスの中では最も選択したい提携先となります。しかし、当然ながらこれらの優良企業は既に日本への進出を果たしています。連携先を探す中で、海外では一流なんだけど国内には全く入り込んでないという企業をどうのように選び出すかがプロダクトマネージャーの腕の見せ所となります。もちろんその企業の製品が国内においてどのようなセグメントで差別化を出せるのかも常にリサーチしながら進めるのがいいでしょう。
これについては現在の事業、販売製品、また提携先によっていろいろな結果が出るので正解はありませんが、私の会社では(2)の製品が一番販売量も拡大していますし、収益も稼いでいます。
今回、ご紹介する本はマーケティングの大家・ポーター氏の『競争戦略論』そのものではなく、エッセンスだけを抜き出して書かれた『「競争の戦略」を理解する77の原則 2013年 西村克己氏著』です。まず、ポーター氏の競争理論や企業の存在意義などを学ぶには簡潔でわかりやすい本だと思います。
迅速な新商品企画・開発については他にもポイントがありますので、それは次回に続きとさせて頂きます。では、次回までごきげんよう!
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