BtoB製造業の多くは非常に厳しい岐路に立たされています。過去の成功体験を捨てて新しい製品を開発、販売していくにしても、市場が急激に縮小しており、なかなか浮上のきっかけが掴めない状況にあるのです。
そこでもう一度、企業または事業を見直すために大きなビジョンのチェンジをする会社も増えています。新しいビジョンの実現のためには、ミッションを掲げ、目標を設定していくわけですが、その結果なにより新しい成果を上げていかなければなりません。最近、ブログ内で良く取り上げている成果ですが、今回は企業(事業)の成果とは何なのか?また成果を上げるためにすべきことは何なのか?について説明していきたいと思います。
企業の成果
企業(事業)の意義
企業(事業)の意義を部員に尋ねると『給与を得るところ』、『働く場所』、『自己表現の場』などといった意見が出てきます。しかし企業(事業)の意義はただ一つ『コスト以上の成果を上げること』です。
これをドラッカーは『企業の意義は唯一、市場の創造である』と説明していますが、内容としてはほぼ同じことになります。仕事をしていると、いろいろな業務が飛び込み、それをこなしていくことで1日が終わってしまいがちです。営業マンが出張の翌日『半日、清算をしていた』なんて話を聞きますが、これは企業(事業)の意義には全くそぐわない活動になりますね。
営業マンの成果はお客さまに訪問し、製品の販売に繋げることであり、交通費の清算などといった業務は、企業の中では全てコストになります。
『成果はお客様にだけ存在する』といった原理原則を徹底することで、仕事の目的を見失うことなく業務に向かうことができるようになります。
そのことを体系的にまとめたものが下記の図になります。自社と顧客の関係、コストと成果の関係が、わかりやすく説明できますので是非、参考にしてみて下さい。
また、このように顧客に成果を求める業務の推進は経営の二大重要事項であるマーケティングとイノベーションの元となり、企業(事業)の中に顧客志向が醸造されます。
イノベーションについては最近の投稿『イノベーションの7つの機会【第81回】』で詳しく説明しておりますのでこちらも参考にしてみて下さい。
https://fujiwebs.com/2021/10/25/1849/
企業(事業)の成果とは
では実際に企業の成果とは何のことでしょうか?成果と言うと、なんといっても売上だったり収益といった業績に関するものを思い浮かべます。企業の存在意義も『コスト以上の成果を上げること』となるとお金を稼いでくることにように思えますね。
もちろん、これは成果の中で最も重要なものであり、成果の柱です。企業(事業)は収益を上げなければ継続できません。収益があれば、新しい原材料を仕入れることもできれば、従業員を増やすこともできます。また、その収益を信用にして銀行からお金を借り入れることも可能ですし、更にそれを元手にして設備を購入したり、新しい工場や営業所を増やしたりすることもできます。ただもう少し細かく見た場合、収益と利益はどちらが重要でしょう。
もちろん収益がなければ利益もないわけですが、どちらを優先すべきか、どちらが重要かといえば利益です。いくら大きな収益を上げてももうかっていなければ意味がありません。
営業マンなどは売上金額にこだわる人多いですよね。しかし1億円売上をして500万の利益を上げる営業マンと、3000万円の売上だけど半分は利益である営業マンでは、後者の方が会社に貢献しています。
収益と利益はどちらも重要でバランスが必要ですが、今後の企業経営は利益の意識がないと継続的に事業が行えなくなってしまいます。
収益(利益)は成果の柱であり、当然これ抜きはありえません。
しかし、成果は『ただ収益(利益)を上げる』ことだけではありません。むしろ『利益を上げる』ことだけを考えるとお客様を無視したビジネスも肯定してしまいます。
マルチ商法で毛布やツボを高額で販売したり、そこまでいかなくても不良品や効果がないインチキな製品を販売したりすることで、顧客に不満を与えながら収益を上げても、それは成果ではありません。
成果はただお金を稼げばよいのではありません。最近、CSR(企業の社会的責任)やSDG’sが注目され、それを基にした経営も叫ばれています。企業は社会の中でのみ存在できており、社会に貢献しなければ、永続的に企業(事業)を継続していくことは不可能です。でも、社会的責任って考えると『それは具体的に何?』と難しくなりますね。
考え方としては、まず顧客に不満を持たせない、裏切らないことが成果に紐づいていないとダメなのです。言い換えれば『顧客満足度を高める』ことを成果と一緒に考える必要があります。
また、収益を上げたりと顧客満足を高めるための教育も成果です。顧客課題を解決する技術力、顧客に有効な提案をする販促や販売力、納品した製品を満足に使用してもらうためのサポートなど顧客のためのスキルを高める社員教育なども重要な企業(事業)の成果になります。
この項では企業(事業)の成果について説明させて頂きました。この3つはそれぞれ関連性を持っており、『顧客につながる教育をすることで、顧客満足度が上がり、また収益も確保できるようになる。収益があるからまた教育に力を注ぐことができ、顧客満足度がさらに上がって収益が拡大する、などといった感じです。
成果を上げるためには
ここまで企業の成果とは何かといったことについて述べてきましたが、最後の項では実際にこの成果を上げるための活動のポイントをいくつか説明致します。
ミッションをベースにした目標を設定
成果を出すためには、まず目標の設定が正しいことが重要になります。目標がしっかりしていないと成果が出ないだけではなく、間違った方向に組織や業務を向かわせてしまいます。
企業でも事業でも、まずある期間のGOALを定めます。売上50億とか、ROA8%というものですね。その後、GOALに向かって目標を定めていくのですが、その際、この目標の方向性を正し、正しい目標設定させるためには、目標が企業(事業)のミッションを達成するものになっているかどうかです。
企業が社会の中でどのような存在でいるのかを表したものがミッションです。このミッションが下敷きになって目標を設定することで、方針にブレがなくなり、また、なにより組織の人たちの意識をしっかりと同じ方向に合わせることができるため、企業(事業)の成果が出しやすくなると考えます。
この図は、私が研修時に目標管理を説明するときに使用しています。これが模範解答とは思っていませんが、ミッションと目標、成果の関係など、イメージがわかない方には理解しやすいのではないかと思い、掲載してみました。
選択と集中
ミッションに準じた目標設定ができたら、いよいよ具体的な戦略の立案に入っていくわけですが、この戦略の立案と粉かな施策となる戦術については、また別の機会に詳しく説明したいと思っています。
成果を最大化するためには、まずミッションに基づいた目標設定を決めると説明しました。この目標に対して実効性を高めるのは選択と集中の考え方です。
特に現在マーケティングにおいて顧客の課題は細分化しており、より狭く、深く洞察して戦う戦場を決め、その戦場に的確かつ迅速に製品やサービスを投入しなければなりません。
まずは、成果に繋がらないものを一切捨てることです。個人や組織業務の棚卸しをして、できる限り組織内の業務(コスト)を排除します。何をおいても企業や組織の人員は限られていますし、一人に与えられている時間も一律24Hです。(労働時間でいえば8H)この限られた時間を最大限成果に繋がることに使っていくことが選択と集中です。
組織の人員配置も、製品開発、営業やマーケティングといった顧客に繋がっている部門の人員を増やし、業務や管理などの人員はシステムに置き換えておくことで、成果に直接つながる工数が確保できるようになります。
これは製品でも同様です。10のカテゴリーの商品を販売しているとすれば、収益性や将来性などで5つの製品に絞り込むなど、選択と集中の考え方がより必要になってきます。
ここで重要なことは、決して商品数を減らすことが最善ではないということです。例えば、売上はそれほど大きくないのだが、ほとんど人手が掛からず安定して50%の利益を出してくれる事業があれば、それは残すべきですし、非常に大きな売上が上がるが、競合も多く利益もほとんどとれない事業は切り捨ての対象になりうるかもしれません。
それぞれの製品ごとにPL(損益計算書)を作成し、利益の基準に満たないもので、更に将来性もないものから切り捨てていく考え方です。この切り捨てる際は可能な限り数値的な判断で行うことが必要です。特に創業時からの看板製品はなかなか捨てきることもできず、経営者の情緒的な判断から事業を継続するケースも多いのですが、最後まで勝ち抜いて残存者利益が取れる見込みが無いのであれば、切り捨てる判断が求められます。
ちなみに、この選択と集中のKPI(Key performance for Indicator)として最適なものが一人当たりの収益率だったり、一人当たりの利益額、また管理会計などでは時間当たり採算(1時間当たりの利益額)などという指数も良く使われますね。
また販売製品に対しても集中が必要です。現在は製品のライフサイクルが短くなってきています。マーケティング活動で決めたターゲット製品に対して徹底的に、また迅速に販売活動を行い、市場優位を確保していかなければなりません。
それこそ、ライバルが現れた時には次の製品へ転換できる製品開発の速さも実現したいところです。
時間の活かし方について書かれた書籍を紹介しておきます。最近はあまり書店に見かけなくなりましたが一時は山積みだった本ですね。『エッセンシャル思考~最少の時間で成果を最大にする(2014年)【グレッグ マキューン著、高橋璃子訳】』
なかなか仕事や雑務が切り捨てられない人に是非、ご紹介したい書籍です。
さて、今回はいかがでしたか?今回の内容は私が研修、特に中堅社員向けに行う時の資料をメインで、企業の成果という、最もベーシックながら最も重要なことについて説明させて頂きました。
『会社とは何か?』『成果とは何か?』それが社会や市場にあることを理解することで顧客志向が生まれます。顧客が起点で物事を考えることができるようになると、経営の根幹にあるマーケティングやイノベーションの考え方が、理論を学ばなくても自然と自発的に考えられるようになるのです。
この原理原則を早い段階で身につけることで、将来、起業家精神をもったイノベーターが会社の中に育成できるようになります。
今回は、これまでです。また次回、ごきげんよう!
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