OODAとPDCA【第86回】

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ooda経営戦略

OODAループって知っていますか?恥ずかしながら私は結構最近、この言葉と出会いました。実は第75回目ぐらいの時に一度ブログの原稿を書き始めたのですが、どうにも腑に落ちず、下書きのまましばらく放置していました。OODAループは何かを実行するときの意思決定方法であり、いろいろな資料にPDCAと比較されていることがどうにも理解できなかったのです。とはいえ、OODAループフレキシブルな意思決定は、今の変化の激しい市場においては重要な理論であり、今回はOODAループとはどういった意思決定方法なのかということに絞って、解説をしていきたいと思います。

OODAループって何?

OODAループ

冒頭にも少し触れましたが、恥ずかしい話、私は、このOODAループという言葉を全く聞いたことがありませんでした。念のため10年前に受講したビジネススクールのノートも見返してみましたが、やっぱりありません。
また、初めて出会った資料に『PDCAサイクルは古い、これからはOODAループ』との見出しだったため、なんとなく新しい管理手法なのか?という感じで受け取ってしまいました。

OODAループ

OODA(ウーダ)Observe【観察】Orient【方向付け】Decided【意思決定】Act【行動】の4つの頭文字をとっています。基本的に非常に当たり前のことを定義しており、これがなぜ今注目されているのかが正直良くわかりませんでした。
いろいろな本やサイトで調べていくと、どうもCovid-19が関係している感じですね。Covid-19は今までの社会通念を完全に崩壊させました。
どの企業も、まさに先が見えない状況に陥ったわけです。そんなマーケットの中で戦っていくときに先を明確に見通した目的やそれに向かう計画が非常に立てづらいわけです。
そこでより機動的なOODAループが注目されたというのが実際のところではないでしょうか?OODAループはもともと航空機の対戦戦略として生まれたものですから、非常に不確かな中で、最大限の情報を収集し、即座に判断する必要があります。でないと撃ち落されてしまいますからね。
私はこのOODAループの説明を見たときに、課題解決の手法を思い出しました。われわれは何か問題が起きたときに、迅速に対策を考えなければいけません。例えば、お客様とのトラブルを抱えた時や、製品の販売量が極度の不振に陥った時など、いろいろと対策を立てて目標(GAPの解消)に向かいます
このように、すでに起こってしまっている課題に対してはスピードが何より優先されます。

目標設定

課題解決の手法とOODAループ

上記は、問題解決の手法です。何か問題があった場合、いきなり対策から考えると対処療法になりがちで、真の原因にたどり着けず、何度も再発する可能性があります。
問題解決の手法は、まず主観を入れず、事実だけを洗い出し現状を認識します。この段階では一切主観を入れず、起きている問題を列挙していきます。OODAループでいうところのObserveですね。
次は、その起きている事実(現状)に対して原因を推測します。このパートでは思いっきり主観を入れていくところです。『なぜ、その事実が起きているのか?』原因を徹底的に推測します。
良く原因分析に『なぜなぜ分析』などという言葉が使われますが、まさにこれですね。トヨタではこの『なぜ』を5回繰り返すと本当の原因が見つけられるとしています。これはOODAループでいうOrientですね。
さて原因が特定できたら、それぞれの原因に対して対策を立案していきます。このように問題が発生した時に対策から入らず、事実の確認、その原因推測対策のステップを踏むと、正しい対処ができ、再発も防止できる対策が立案できるようになります。この対策の立案がOODAループでいうDesideになります。最後は説明不要です。対策が決まったら即実行です。OODAループでいうActです。
OODAループはあくまでも意思決定の方法の1つであり、これを生産管理手法を元とするPDCAサイクルと比較するのはやや暴力的なような気がしますが、今説明してきたように、ビジネスへの応用、特にスピードを必要とするような問題の解決には大いに活用できる考えだと思います。
最後にOODAループには、これ以外に重要なことがあります。それは途中で問題があれば、都度スタートに戻るということです。状況判断をしているときに客観的な事実情報が不足していればObserveに戻ります。これは意思決定の場面まで進んでいても同様です。PDCAサイクルと違い、ループの途中でも戻って常にその場の状況に合わせた最良の対処を考え進めていきます。まさにCovid-19の社会の中で必要な考え方ですね。
また、OODAループと合わせて説明しましたが、問題解決の手法にはOODAループの考え方は最適です。
例えば、肩こりがひどかったとしましょう。問題(課題)は『肩こり』になります。
これを対策から入ってしまうと『マッサージをする』とか『鍼灸院に行く』などといったことになりますが、これが本当の対策でしょうか?
OODAループを活用して『肩こり』という問題(課題)の対策を考えると、まずは現状(事実)の洗い出しです。肩こりの発生部位、ひどくなる時間、その他の体調異常など事実だけを列挙していきます。そして次はその事実に対していろいろな角度から原因を分析していきます。
その結果、常時、肩こりが発生しない、仕事に集中したあとに良く発生する、などの主観的な分析を加え、PCの長時間作業が原因と紐づけたとします。すると対策『PC仕事で休憩を入れる』、または『目元を温める』などが立案されるわけです。
いきなり対策から入った場合と結構違う対策が立案されましたよね。この辺は戦略の立案などにも大いに活用できるので過去投稿の『戦略と戦術【第84回】』も是非、読んでみて下さい。

強い組織をつくるために~戦略と戦術【第84回】
『強い組織の作り方』をテーマに、最近何回か連載しています。現在のように景気が停滞しているときに企業間の差をつけるのは個々の人間力とそれがまとまった時の組織力です。個々の人間の強さが組織の強さを生み出し、強い組織は確実に成果を出します。昨今...

PDCAサイクル

せっかくなので、最近OODAループとセットで語られるPDCAサイクルについても説明しておきます。PDCAサイクルは、私が勤務している会社のような機械製造メーカーでは最初の研修で習うような項目です。私も新入社員の時にすぐに習いました。
もともとはエドワード・デミング博士が考えた品質管理手法で、日本の製造現場で大きく拡大・発展したフレームワークです。最近は無くなりましたが、私が入社した1990年代は、QCサークルを作り、このPDCAを活用して品質改善のコンクールなどを定期的に行っていました。
それが、前述のOODAループ同様、生産現場以外のシーンでもPDCAサイクルが活用されるようになり、とりわけ目標管理の進捗に使われることが多いです。
期の初めに立てた目標をPDCAを活用して進捗を確認し、進んだり遅れていれば、その都度計画を見直し、次のplanへ繋げていくということをPDCAを回していくと言います。
PDCAを回していくときに、それぞれのサイクルで重要なことは以下の通りです。

1)Plan(計画)

計画(Plan)のフェイズを設定するときの重要要素は納期数値目標担当(責任)者をセットにして明確にすることです。この3つを具体的にしていない目標は目標ではありません。また資料などには3項目ではなく『5W1Hを明確にする』というものもありますが、あまり計画時の数値目標が多いと、目標がぼやける可能性もあり、計画の内容によって、うまく使い分けられると良いと思います。

2)Do(実行)

実行(Do)Planで立てた計画に合わせて具体的に実行していくフェイズです。このフェイズが他のフェイズと違うのは主体的なことです。実行(Do)フェイズ以外はより、客観的に考える必要がありますが、このフェイズは主体的に活動を進めることが重要になります。

3)Check(検証)

検証(Check)は実行した結果、それがどのくらい計画通りに進んでいるのかを確認するフェイズです。良くKPI(キーパフォーマンスインジケータ)を設定し、最終の目的(ゴール)に向かってどのような進捗になっているのかを検証します。PDCAサイクルを回しているときに最も抜け落ちるのが、この検証のフェイズです。サイクルを回し続けるときにこの検証のフェイズが正確に行われないと、計画そのものが違う方向や全く成果のあがらないものになってしまいます。

4)Action(改善行動)

改善行動(Action)最も重要なフェイズです。検証のフェイズでこれまでの進捗状況を確認したら、再び計画のフェイズに向けて軌道修正をします。この時の軌道修正は3つです。検証結果で予定通り進んでいるときには継続です。予定とズレが出ているときは変更です。また大きく逸脱しているときは中止・延期です。

KPIとは、Key Performance Indicator のことで重要業績評価指標ともいいます。文字通り、目標を達成する途中で、マイルストーンを設け、その時点での達成度合いを計測・監視するための定量的な指標のことになります。
ちなみにKGI(重要目標達成指標)とは最終のゴールの数値のことであり、KPIは地点地点での中間指標として、重要な役割を果たします。

最後に、私はPDCAサイクルの考え方が古臭いとか、時代遅れだとは思っていません。このようなビジネスのフレームワークは、1つのことだけに使われるということではなく、何か課題に接したときに、意思決定だったり、計画立案の一助として利用できれば良いのだと思います。
そういう意味ではPDCAサイクルの考え方も、前述のOODAループの意思決定方法も非常に参考になるフレームワークです。

さて、今回はいかがでしたでしょうか?OODAループという最近いろいろな場面で聞くようになった意思決定のフレームワークについて説明させて頂きました。本文中にも書きましたが、OODAループの意思決定は、まさに問題解決の手法と同じです。
発生している問題は迅速にかつフレキシブルに解決に繋げる必要があります。これは飛行戦と同じで、機動性がなにより重要となります。このような場合は是非、OODAループの思考を活用し、解決に導いて欲しいと思います。
では、今回はこれまでです。また次回、ごきげんよう!

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