水無し印刷の近況と今後
Last update/Apr.30,2004(Ver.4.0)

オフセット印刷の技術を語る上で避けて通れないのが、この水無し印刷でしょう。オフセット印刷の最も不安定要素である水を使わない印刷はまさに印刷の理想型といえるでしょう。しかし普及率をみると、5〜7%といった所が現状じゃないでしょうか?まずは版の構造と露光・現像工程を説明しましょう。

<水無し版の構造>

水無し印刷はシリコン層がインキをはじいて非画線部を構成し、水がなくてもオフセット印刷ができる仕組みのものです。版の構造は下からアルミの支持体・プライマ層(感光剤とアルミの接着剤みたいな役割)・感光層・シリコン層・カバーフィルム(露光後、剥離)の5層からできています。

<水無し版の露光と現像工程>
露光はPS版と一緒です。シリコン層の保護用のカバーフィルムは、付けたまま露光します。 露光後、カバーフィルムを剥離します。露光された感光層はシリコン層と強力に接着します。
現像時にブラシで表面を擦ります。非露光部分は、感光層との接着が弱いのでシリコン層が剥がされてしまいます。 これで画線部と非画線部が形成されます。従って水無版は平版印刷ですが、凹版に近い版断面図となります。

さて、版の構造を理解した上で水無し印刷のメリットを品質面と環境面(最近は断然こちらでしょう)に分けて列挙していきましょう。ここだけ読むと、「うちでも...」と採用したくなるかもしれませんよ。

<水無し印刷のメリット>
◎品質的なメリット

見当精度が高い
水を使用しないため、用紙に水分が含まれることがなく見当精度が向上します。特に最近、流行りの8色機等では、八回プレスされることから見当精度(ファンナウト)が課題になりますが、こういった問題が、かなり解消されます。

網点がシャープ
上記の図の通り、版面が凹版に近いためドットゲインが少なく、網パーセントの再現性が高いです。またインキが盛れるのも特徴の1つです。FMスクリーンなどにも適しているのでは...(これはfujiwebsの推測です。)

再現色が安定している
水という不安定要素がないため、再版物での繰り返し精度や、帯・見出し、またページ違いの見開きのような台違い物での色の再現が非常に安定しています。

◎環境的なメリット

印刷における揮発性溶剤の排除
水を使用しないので、通常の印刷で使用されるH液やIPA等の揮発性溶剤の使用が無くなります。

刷版工程における回収廃液の不要
現像液の使用量が非常に少なく、また、継ぎ足し方式で廃液を出さないため、現像液の回収といった手間とコストがかからず、環境にも適してます。

単純に技術的な話だと理想的な印刷ということがお解り頂けると思いますが、現状それほど普及していません。印刷会社の古い体質もありますが、それ以外にも様々な問題も抱えています。今度はデメリットについて数点挙げてみましょう。

<水無し印刷のデメリット>

資材(特に版・インキ)コストが高い
だいぶ安くはなってきていますが、まだまだ通常のPS版と較べると3割高といった感じです。東レさんの話では現像液のコスト、廃液処理コストを考えたら、同等以下になると言っていますが...。

刷版のハンドリング
非画線部がシリコンのため、通常は保護用のカバーフィルムが付いていますが、これを剥がす手間が1工程増えます。また、刷版室から印刷工場へのハンドリングもキズが付きやすいので注意が必要です。

ゴミが付きやすい(取れにくい)
印刷時に版面に付着したゴミ(紙粉・パウダー・インキかす)が給水ローラーが無い分付きやすく、取れにくいといった傾向があります。これが結構大きなポイントです。

刷面の温度コントロールが必要
現在はほとんどの印刷機械メーカーが標準対応しているので解消している問題ですが、水無し印刷の場合、版面温度を30°C±2°C以内で保たないと汚れや着肉不良等の原因になってしまいます。

ゴースト絵柄が不得意
ゴーストの出やすい絵柄の場合、水を使用していない分、ごまかしがききません。従って、版面の着けローラーを横振りする等で対策しますが、デザインや面付けの段階でも気を付けることが必要です。

静電気の問題
これも水を使用しないことによる問題ですが、発生する静電気で、特にデリバリーでの紙の揃えを悪くします。また盛り量が大きい分、紙揃えの悪さが裏付き(ブロッキング)の原因になったりします。

以前はコストが一番大きな問題でしたが、最近は品質絡み、特にゴミ・着肉不良・ゴーストの順で問題になっている感じです。
さて水無し印刷の今後としては上記の品質的課題をどこまで機械メーカーとタイアップして解消(安定領域まで)していくかがポイントになるでしょう。私的には特許で長期間、1社独占にしたのが普及しなかった最大の原因のような気がするのですが、現状、また追い風が吹いているような感じです。大きな点は環境適合商品ということ。今では当たり前のようにいろいろな商業印刷物にマークされている再生紙のマーク、また最近良く見られるようになった大豆油インキ(SOY INK)マークなどのように、水無し印刷のバタフライマークがちょっとずつ浸透してきています。(三菱自動車のカタログやリコーのプリンターのカタログについてきてます)21世紀は環境の世紀という観点からいうと、今後これに追随する企業が増える可能性は大です。

<各種・環境関連商品標準マーク>
再生紙マーク(100%) 水無し印刷マーク
揮発性有機溶剤未使用マーク 大豆油インキマーク

また、コスト面からいうとCTP時代となり、サーマル水有り版と水無し版とのコスト差は縮まりますし、またCTPの網点を忠実に再現できるので、印刷物の標準化(色の安定)という観点からも利点が大きいと思います。
だいたいこんな所でしょうか?今後はともかく近況は解って頂けたのではないでしょうか?本稿はこの辺でおしまいとさせて頂きます。
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