印刷工場の標準化(PART3)
Last update/Apr.30,2004(Ver.3.0)

意外と長いシリーズになってしまった「印刷現場の標準化」も今回が最終回です。行うべき5項目の後半4・5をご説明しましょう。

4.工場環境の安定化

工場環境の安定化とは機械の原点出しと並んで、印刷現場の大いなる課題でしょう。例えば特色の全面ベタの印刷物を印刷しているとした時、オペレーターさんは当然、オペレーションスタンドの上で印刷物を評価し、承認をもらいに課長の所へ行きますよね。ところが課長が事務所で承認印を押すといのはちょっと心配物です。なぜなら、事務所の蛍光灯の下で見る色とオペレーションスタンドの蛍光灯の下で見る色が違うからです。大きな工場だと水銀灯などを使っていることもありますが、これと蛍光灯下では恐ろしい程、色味が変わってしまいます。そういう場所ごとで光源が違うという評価は、標準化という観点からは好ましくありません。実際の仕事は校正紙と付き合わせて確認するので光源の色温度が違う状態でも絶対評価ができるのでしょうが、客先立合の仕事などが多い会社では立合室(で色評価をする刷見台)とオペスタの蛍光灯ぐらいは同じ物を使って欲しいものです。
また、もう少し大きな視野で考えると工場の湿度・温度管理も非常に大きな問題です。低湿度は特に印刷現場に影響を与え、給紙部で静電気が発生してしまい当て飛びやフィーダートリップの原因になったり、また極度の乾燥状態で用紙を管理していると、印刷時に用紙が急激に水分を含むため、クワえていない側の見当が広がってしまう現象(通称ファンナウト)が発生したりしてしまいます。同様に温度も印刷に密接な関係があり、印刷時の水の上がり方やインキのタック(簡単にいうと粘度)に影響を与え、印刷を不安定な状態にすします。例えば、冬場の朝一番の仕事で機械が冷えすぎているためインキが硬くなり、着肉が悪くなる、とか最悪の場合、機械の油が硬く機械がオーバーロードを起こす可能性もあります。また夏場の午後、インキが緩くなり印刷に汚れがでてきてしまう、などが具体的症状です。では目安となる工場環境について簡単に説明しておきましよう。

◎光源
印刷学会が定める標準光源色は5,000K(ケルビン)です。これは可視波長域での直射太陽光を表現した光源色でJISで規定されています。(JIS Z 8720・補助標準イルミナントD5O)蛍光灯の選択では「昼白色蛍光灯」というものを選べば良いでしょう。この他にもJISが標準イルミナントとして規定ている6,500K(標準イルミナントD65)で一般的には北窓昼光と呼ばれ蛍光灯選択では「昼光色蛍光灯」というものがあります。これらが工場現場の照明の色温度としては適正です。尚、明るさは工場全体では200ルクス〜300ルクス、局部照明(刷見台)で1,200〜1,500ルクスが一般的です。

◎工場湿度・温度
次に温度と湿度ですが、これについては下記表を参考にしてみて下さい。空調機(エアコン)や加湿器の位置や性能(工場の広さに合った空調管理)を建築会社や各々のメーカー、機械メーカー等と相談しながら決めると良いでしょう。特に、加湿器の種類にはいろいろなタイプがあるので、できればコンプレッサータイプ(微噴霧式)でなく、蒸気式で検討したいものです。また大きな熱源である給水タンク、インキ振りローラーの冷却水循環タンクなどを別室に設置し、配管だけ各機械に接続(集中給水循環)するなど新工場においては良く採用される内容ですし、用紙の搬入されるスペースは2重シャッター等で室温の維持とホコリや虫などの排除に効果があります。更に用紙倉庫の空調などは忘れがちですが、印刷現場としては用紙の調湿は非常に大切であり、できれば半日前には印刷する状態と同条件に用紙を保管待機させておきたいものです。

<標準的な印刷工場の湿度・温度>
夏場 冬場
湿度 60%±5 55%±5
温度 26℃±3 22℃±3

◎騒音・振動
これに関しては工場環境もさることながら、周辺環境に影響を与えるので都市部で印刷している会社さんは重要なところです。通常、印刷機械は機械中心部でステップから1m離れ、高さ1mの部分で90db(デシベル)と言われています。但し、最近の機械は機械そのものよりも周辺機器、特にブロアポンプやサッカー部に使われているドライポンプ、圧力空気を送るコンプレッサーからの騒音が大きく、これらの隔離が重要です。例えば大型のコンプレッサーを別室に設置して配管だけを工場内に引き回したり(集中コンプレッサー)、ブロア類を防音のBOXにまとめて設置する(エア防音キャビネット/ハイデルベルグさんや小森さんの機械が最近この形になっていますね)などは音の遮断の他に熱の遮断・機械回りの美観の3点を兼ね備える仕様と言えるでしょう。当然、工場全体の防音には壁・天井に防音パットが効果的です。
また振動も同様の地点で平均92dbA(デシベルエー)と言われており、これにはメーカーの保証する耐荷重の床面を用意することはもちろん、機械のライナー(レベリングボルトの乗る台座)の下に耐震パットを設置するなどで対処、改善が可能です。機械の振動を小さくすることは機械の耐久性にも大きく関係があり、今後重要な対応だと考えます。

◎空気清浄・床面のカラーリング
工場環境で(特に新工場でということになるかもしれませんが)気にして欲しいのが空気清浄(または集塵機)です。工場内に飛散しているほこり(特にスプレー・紙粉にたぐい)が機械の上や机、棚などにかぶっているようなことを極力防ぐ(これは機械だけではどうにもならないが)ために必要な装置と考えます。また、印刷に使われる水の浄化装置、廃液の回収タンク等、環境関係の設備も設置して欲しい所です。床面のカラーリングに関しましては、なるべく明るい色(明るいグリーンが一般的)でアクリル塗装したものが掃除もしやすくベターと思います。現場を>土足厳禁にすることもお忘れなく。

◎集中管理室・LAN
最後に工場環境とは関係がないのですが、最近CIP-3/4等で定義されている、印刷ジョブのチケット化(製版データ作成時点で印刷の仕事名・用紙サイズ・絵柄面積率・折り指定・断裁寸法等の情報がデジタルで付加されるもの、詳細は別項「今、流行りのCIP-3/4って何?」をご参照下さい)に対応するため、各機械へのインターフェース(橋渡し)作りとしてLANのケーブルを各機械の所に設置することや、それらをコントロールする集中管理室(工務室)を設けることを参考のために付け加えておきます。

5.校正刷りに基準を持つ

さて、いよいよ最後の校正の問題ですね。1〜4まで読んできて「そんなきれい事はわかっているんだ!」と思われている現場の方も多いと思いますが、日本の(世界でもそうだが)印刷の仕事は校正紙の通りに印刷するというのがやっかいな部分です。特に出版関係の印刷だと再版も多く、何年前に印刷したか解らないような校正紙を引っぱり出し、なおかつ、その中には赤字やら張り込んで指示がしてあるなど、おおよそ校正紙とは呼べないもので印刷を余儀なくされているケースがが多いですよね。これでは印刷のオペレーターも基準濃度で印刷どころではないのです。折角、標準濃度で印刷できるよう、作業者も印刷機械も刷版も環境も整えてきても見本になるものがバラついていたり、いい加減なものだったら対処のしようがないのです。また、これが日本の印刷現場の標準化が遅れている最大の要因でもあるのでしょう。(一部、インターネット受注をしているような会社さんは安さを売りに校正レス(基準濃度印刷)を実行していますが...。)では安定した校正を出すためにはどうすれば良いのか(ちょっと自信がないなあ)考えて見ましょう。

1〜4までで印刷現場での標準化を説明してきました。つまり「だれがいつどのように印刷しても同じ印刷物が印刷される」ための手法を述べてきた訳です。ところが前述したように校正がいい加減だったら、折角の印刷現場の努力が全然役に立たなくなってしまいます。また基準濃度への取り組みをしている会社で最初に突き当たってしまう問題がこの問題なのです。「濃度計で基準濃度で平らに刷れたらOKで良いの?校正より全然うすくなっちゃてるけど...」なんて印刷オペレーターにバカにされたりすることがあるんじゃないでしょうか?これはオペレーターの言い分が正しいのです。印刷の標準化とは、印刷サイドは常に同じ濃度で印刷する繰り返し精度を向上することであり、その濃度でマッチングするような校正を作り出すことが重要です。例えば、基準濃度で印刷して薄くなるのであれば、DTPへ返して画像をもっと濃くするなどしなければなりません。(なかなかそんな時間はないのでしょうが)
つまり校正に基準を持つということは「校正の基準濃度もいつでも同じで作りなさい」ということであり、印刷の基準と校正の基準が同じと考えれば校正=印刷となりオペレーターがあの手この手を使って印刷をすることは無くなる、ということになります。うーん言葉で書くと難しくて伝わるかな。
つまり「校正に印刷が合わせる」のではなく「印刷に合った校正を出すようにする」ことが最も大事です。もちろんここで言う印刷とは基準濃度で刷られた印刷のことです。
CTP時代の今は本機校正とインキジェットが主流になりつつあります。
本機校正は名前の通り、本刷りを刷る印刷機を使って校正を取る、ということで最も校正と印刷の基準を合わせ易い方式です。
もう一方のインキジェットはとにかく安い設備で始められることが流行っている要因でしょう。最近、製版メーカー各社が出しているICCプロファイル作成ソフトや作成サービス、各種カラーマッチングのソフトウエアなどで色の変換を加えられたインキジェットの校正は驚くほど色味が合っているのでびっくりさせられます。(文字や単色の平網部に若干難はあるが)

以上の通り、最終のターゲット(基準濃度で刷られた印刷物) を創造するために校正・環境・刷版・印刷手順・機械保守を管理し、最終的には印刷現場だけでなく製版部門のモニター色やクライアントへ基準濃度の理解をお願いしていくなど、標準化の輪を徐々に大きくし、全社的に取り組んでいくことが重要でしょう。(ちょっと突き放した感じに聞こえます?また時間をみて改訂版を作成します。校正については別項「CTP時代の校正とは?」も合わせてご参照下さい。

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