印刷工場の標準化(PART2)
Last update/Apr.30,2004(Ver.3.0)

さて本項では、「印刷工場の標準化1」で説明した基準濃度(カラー)を念頭において、行うべき5項目についてご説明します。1つの手順として参考にして頂けたら幸いです。
1.印刷機械の原点出し

基準濃度(カラー)を設定し管理することによって、だれが印刷しても同じ色が再現できるようになった、「よかった、よかった、これでクライアントから怒られなくも良くなるぞ!」と喜んでばかりもいられないのです。今度は装置(印刷機)のキャリブレーション(原点補正)をしていかなければなりません。例えば、Aという印刷機で印刷したら50枚で基準濃度(カラー)の印刷物が出てきた。ところがBという印刷機で同じデータをいれて印刷しても200枚刷っても基準濃度(カラー)にならない、こんなことも考えられます。いわゆる印刷機の標準化ができていない(印刷機械の精度にバラツキがある)、ということです。

原点出しのためのやるべき項目は本当にたくさんあり、現場責任者だけでなく機長さんも含めた形で話し合いをした上で決定するのが最も良い方法です。とかく一方的な方法だと理想と現実の間で言い訳ばかりになり、点検シートは作ったが実行してもらえない、などストレスだけが溜まってしまうことが多いのです。とりあえず、最低、実施して欲しい項目を6項目挙げましたので、適宜、追加・削除して、会社にあった「原点出し」のための点検シートを作成してみて下さい。

<印刷機原点出しチェック項目/簡易版>
項目 間隔 手法
インキツボキーの0セット 週次 元ローラーを見ながらツボキーの0セット調整。元ローラーの膜圧は確認しづらいので用紙に転写させて確認するのが良い。全体が均一で若干、かすれて転写するぐらいが適当(ハイデルベルグ機はフィルムの交換)
インキローラーのニップ圧調整 週次 各メーカーが定めているニップ圧が保たれているか調整する。特に版面方向だけでなく振りローラー側にも適正のニップになっているか、確認する。
給水ローラーのニップ圧調整 日次 給水ローラー、それぞれのニップ圧を調整。印刷は給水が命になるので、これは毎日、確認して欲しい。場所的にもやりやすい場所なので励行する。
版ーブラン胴間の仕立て確認 週次 ブラン交換した時はもちろん、ブランケットの経たり具合は、10/100mmぐらいある。週次単位でシリンダーゲージを使って仕立てを確認して欲しい。またブランケットを頻繁に交換する時も、せめてトルクレンチを使用するようにする。
給水装置の水管理 週次 水タンクの中は簡単なフィルターが付いてはいるが、結構不純物が混ざっている。これを取り除くには強力な濾過装置か水を交換するしか無い。給水タンク内の水交換も週単位で行って欲しい。きっと交換の手間以上に印刷が楽になる。またH液の管理は印刷適正を狂わせない定量管理方式が良い。
機械の清掃とグリスアップ 週・月次 これは、範囲が広い。とにかく印刷機は汚れやすい環境で使われる物、最低印刷品質に影響の与えそうな部分は清掃のクセをつける。サッカー部・検知器部の汚れ、スイング・胴爪の清掃(月次)、ベアラの汚れ、スプレー装置や吸引車の目詰まり清掃(月次)、エア駆動部の動作チェック、ポンプ・ブロア類のフィルターチェックなど。またカバーやステップなど外観も清潔に保つことが現場のモラールを高めるのに大切。工場床のカラーリング塗装や土足厳禁の工場環境も非常に良い意識付けになる。

これらの項目で点検表(チェックシート)を作成し、管理と改善をしていくことが大事です。この管理を継続していくことにより、オペレーター側は清掃やメンテンナンスが、いかに印刷を楽にするのかが解ってもらえると思うし、管理側も、ローラーやブランケットの寿命を知ることもでき、給水タンクの水の交換しなければいけないタイミングもわかります。こういった傾向をデータとして、つかめれば今度は不安定になる前に調整・改善をすることができるようになるのです。まさに1石2鳥から3鳥なのです。一般の仕事の中で、生産と全く関係のない、メンテナンスや清掃を義務つけていくことは、オペレーターにとっても印刷の進行管理の方にとっても、大変ご苦労なことだと思いますが、機械が安定すれば、高いサービス代金を払って機械を修理・調整する必要もないし、その穴埋めで人件費の高い土・日に休日出勤させるなければならないことも無くなります。オペレーター自身もだましだまし機械を使うようなストレスから解放され、休みの日に臨時出勤させられるようなことも無くなってくるのです。頻繁にちょっとずつが長続きの基本です。

最後に原点出しの確認として社内のテストチャートを作りましょう。このチャートを定期的(できれば週の頭に必ず)印刷し、基準通り印刷物が出来上がるかどうかをチェックして下さい。テストチャートは市販の物もありますし、自社で作った物でも構いません。毎回、同じ物を印刷して比較することが大切です。

2.やり方(手順)の統一

さて印刷機のバラツキを取ることに成功したら、今度は印刷作業(手順)統一を図ることです。Aさんというベテラン機長は朝一番の仕事の時、その仕事のデータ(ツボの絵柄プリセットデータ)を入れる前に全てのキーを50%に開いたデータカードを自作して印刷機に入れ、ある程度インキをローラー上に巻いてから、印刷を行っていました。またBさんという機長は重い絵柄から軽い絵柄になる時に白紙をインキローラーに巻き付けて余ったインキを取ってから(メーカーの立場からは大変危険なため止めて欲しいと告知している)印刷に入っていました。この2つの事例は印刷物の色を早く立ち上げるために、最も有効な手段、いわゆる職人の技なのですが、こういった手順を会社として統一して、実施していくことが大切です。(先ほども述べましたが白紙でインキローラーのインキを取りなさい、といっているのではありません。会社内で印刷の手順(やり方)を統一しなさい、ということなのです。この行為は危険作業です!あしからず。)こういった行為もオペレーターが最も苦手な部分でしょう。いわゆる職人気質は「見て盗め」という世界であるし標準化が最も嫌いな人種(ちょっと言い過ぎ?)なのであるから、勉強会などを設定して、先生役になってもらうなどしていくのが良いのではないでしょうか?また最近はこうした職人作業をソフトウェア化して印刷機に組み込んだ装置が各メーカーから販売しているので、メーカーに説明を聞いてみるのも良いのではないでしょうか?

<各メーカーの印刷手順標準化装置>
メーカー 装置名称
ハイデルベルグ
マンローランド
小森コーポレーション コモリハイパーシステム
三菱重工業 エキスパートソフトウェア
リョービ リョービプログラムインキング

3.刷版工程の安定化

これは読んで字のごとく、刷版を安定的に製造する、ということです。印刷機も良いコンディションにしました、手順も統一しました、としても刷版がゴミだらけだったり、焼きムラやボケ、焼き付け位置の違い等があったならば印刷の標準化は難しい。印刷課と刷版課は、仲が悪い(偏見?)というのが通例ですが、ここは刷版も頑張ってもらわないといけません。

◎焼き度の管理
もうこれは当たり前のことですが、昔、あるお客さんで、「前回印刷した時と今回では全然色再現が違う」とのクレームを頂き調査した所、どうみても網点の大きさが違う?!これは印刷のドットゲインのレベルでは無い!とのことで刷版を調べると、半調で10%近く大きさ違う、なんてことがありました。露光時間とは別に焼き度パッチ(ステップタブレット)を入れて確認するようにしましょう。

◎現像液・定着液の管理
1同様、定期的に管理して下さい。

◎焼き付け指示の徹底
焼きの開始位置、精度(特に曲がり方向)、面付け(特に反転機は注意)などを徹底することにより、スムーズに印刷に入ることができます。上がり面を刷って、はじめて面付けの間違いに気づいたなどという、恐ろしい事にならないように、充分な確認が必要です。

◎フィルムのクリーニング徹底及び管理
印刷の刷り出し時間の阻害要因の中で大きなウエイトを占めるのがゴミ・キズの消去です。印刷してみなければ、解らない物も多く、その都度、機械を停止しなければいけない作業としてオペレーターの大きな負荷となっています。フィルム・ガラス版の清掃、また管理もキズやへこみを起こさない、丁寧な管理が必要です。

◎各機器のメンテナンス・作業手順の標準化
刷版の方でも各機器の原点出し・手順の統一を図っていくことが必要です。
以上の点に留意して、安定した刷版を供給することを実行してみて下さい。しかし、こう書き出してみると、CTPというものが、非常に良い物だということが改めて実感できますね。さて、この続きは「印刷現場の標準化PART3」でということにしましょう。
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